熊本城の復元
本丸御殿が完成し評判がいいという話を聞いて、先日、熊本城を訪ねました。
最近、各所で文化遺産の復元、修復などがなされ、これが観光的にも利用されていますが、私は、熊本に行く直前に長野県の松本城を見たことも有って、正直なところ熊本城本丸御殿は、失望の度合いが大きいものでした。
言い換えれば「熊本城復元整備事業」という大義名分を振りかざしての無駄遣いだと思ったのです。本物を見極める施設にしては規模が大きすぎます。偽装、偽造の横行する社会、こんな「まがい物の捏造」は許されるのでしょうか。
平成14年に訪ねたとき城内全体が遺跡の発掘調査と復元作業があって、まるで工事現場のようでした。そのときは土塀の復元中で、漠然とこれほどの経費を掛ける必要があるのかなあ?と思っていましたが、それから5年、確かに工事現場のイメージは払拭されていました。
頬当御門の料金所を入り、かい曲がりの石垣を抜け首掛石のある広場に出ると様子が一変。本丸への鉄筋むき出しのスロープが架かっていました。天守閣と本丸御殿入口への通路です。そこは熊本城ビューポイントの一つでした。
当時、盛んに発掘調査をされていたあたりで、本丸御殿大広間というのが復元されている場所です。スロープを登らずに右側の石垣の間を進むと、御殿下は闇(くらがり)通路となりここを抜けてから、本丸を正面に見る広場に出る従来の通路です。
西南戦争で焼失した本丸御殿は、平成15年に復元工事にかかり、平成20年春に完成公開されました。玄関口近くに、先ず大台所「ここは吹き抜け天井となっていて赤松の巨大な梁があります。ここは写真を撮られてもいいですよ」説明担当の女性が各所に居て、エンドレステープのように声をかけていました。
(あれほど宣伝用のパンフレットには使用しながら、復元した御殿が部分的にでも撮影禁止とは思いませんでした)次に、大広間の玄関口・鶴の間へ。そこから畳敷きの4つの間を通して、絢爛たる「若松」の間がはるかに見えます。
(写真)「ご対面はこの距離からです」などともっともらしく説明されていました。一般見学者は、この部屋の左側の回廊を奥に進むようになりますが、「若松」の部屋は、やはり撮影禁止。しかも、天井も床も、じっくり見学することも出来ませんでした。近くに数寄屋造りの茶室がありますが、ここも小さな窓から覗き見る程度。
杉戸絵の複製を見せている部屋では、品物に触れないように見張っているのでしょう、ガードマンが仁王立ちでの監視です。
確かに発掘調査と文献からの凄い考証による、復元技術には感嘆させれました。しかし、今さら大名文化をかざしての一見豪華な世界を見せられて、特別な感動が沸かないのは私一人だったでしょうか。
この本丸一帯の復元工事に54億円。熊本城復元整備の総事業費は89億円と公表されていました。文化庁だけでなく国土交通省からも国家予算が支出されていました。
熊本城には、西南戦争で焼け残った宇土櫓をはじめ、重要文化財が数多くあるというのに、莫大な経費を使って、ドでかい「まやかし」「レプリカ」の制作は如何なものだろう。「本物ではない」後ろめたさを垣間見たような気がしてなりませんでした。
発掘調査による成果、遺跡の断片を展示し想像を拡大することこそ重要だと改めて思いました