ハマユウの花  | Issay's Essay

ハマユウの花 

ハマユウ

 下関市は、昭和48年に「ハマユウ」を、下関の花に選定しています。ちなみに横須賀市、三浦市、沼津市、室戸市なども市の花としています。
 その「ハマユウ」は「浜木綿」と書き、「ハマオモト」とも呼ばれます。黒潮の影響する温暖な地域に自生する植物で、7月から8月にかけて開花しますが、天然記念物になっていて、長門市の「仁位の浜」は日本海側自生北限地となっています。
 私達は子供のころから彦島の西山海岸に咲く「ハマユウ」に親しんでいましたが、安岡の砂浜にも沢山あったので「関工」の文芸誌や同窓会誌のタイトルにも使用されていました。
 角島大橋が開通したことから、観光客が増加し「美しい自然が変ってしまう」と危惧されている角島でも、尾山の灯台周辺は、以前からハマユウの群生地で、ジリジリと照りつける夏の陽射しの海浜に、緑濃い分厚い葉をいっぱいに広げ、可憐で細く白い花を、いかにも涼しげに咲かせている「ハマユウ」と、海の青さ、白い灯台、この見事なコントラストが、美しい自然を演出しています。現在は、周辺を公園化しハマユウなどの植栽で雰囲気や環境を守ろうと懸命のようです。
 下関ではほかの海岸線にも多く見られ、とくに吉母の海岸は、ハマユウをふくむ暖地性植物が豊富に群落をなしていて、それらが原始に近い植生を保っていることから昭和44年に下関の文化財に指定されています。
 近来、ここも波消しブロック投入、海浜の埋立てなどの漁港整備、海浜レジャーが進んで、環境は著しく変化しています。地元の人は「空カンやゴミを残し、ハマユウを踏んだり、中には持って行く人もいましてねえ」と悩みは大きいようです。こんな状況を見かねて、地元の人は「このままではハマユウが絶滅する」といって、吉母小学校の校庭に育苗園を造り、児童たちと一緒になって、地道な保護活動を30年余り続けておられます。毎年、幼い手で、黒島の北側に移植し続けられ可憐な花を咲かせているのです。
 地元にいれば、何処にもあるようなハマユウですが、山口県では絶滅危惧Ⅱ類仁指定して環境保護を訴えています。
 柿本人麻呂の「み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも」が、万葉集4500首のなかにただ1首、浜木綿を詠んだ歌があるといいます。 
 吉母の浜、角島灯台のふもと・・・白波を重ね寄せ来る響灘の浜辺、たくましい葉の百重なす浜木綿、潮の香と甘いハマユウの香、人麻呂は「熊野」で恋心をハマユウに託して詠んだのでしょうが、「下関」のハマユウが咲く海岸に、こんなロマンチックな万葉歌碑の一つでもほしいものです。