郷台地じゅうりん事件
JR山陰本線に梶栗郷台地(かじくり ごうだいち 平成20年3月15日開業)という駅が出来つつあります。
郷台地というのは、近くにある史跡・綾羅木郷遺跡に因んだものですが、昭和44年(1969)3月8日、土曜日の夜の出来事は、下関市民、あるいは全国の埋蔵文化財保存に関る人たちにとって絶対に忘れられない事件でした。
春宵の闇を揺るがす11台のブルドーザーが、発掘調査中の遺跡の地表を無惨に削りながら走り回ったのです。これに気付いた関係者は、ブルの前に立ちふさがったものの、その蛮行は唸りをあげるばかりで未調査地区におよび、若宮古墳周辺近くまで剥ぎ取るように蹂躙(じゅうりん)したものでした。
悪夢の数時間でした。
当時、西日本最大の弥生時代遺跡として知られていた郷台地は、早速、文化庁異例の持ち回り審議で3月11日には「史跡・綾羅木郷遺跡」として指定されたのです。道路、宅地、産業開発などの高度経済成長期にあって、遺跡保護が論議の的になった郷遺跡は「文化財保護法」誕生の原点となりました。
それ以降、運動公園建設で見つかった青森の三内丸山遺跡、工業団地建設で発見された佐賀の吉野ヶ里遺跡、鹿児島の上野原遺跡などの貴重な遺跡保存が出来たのは、遺跡保護のためにブルドーザーに立ち向かった勇気ある有志たちがきっかけだったかも知れません。
3月が巡り来る度にこんなことを思い、考古博物館に出かけるのです。