「キョヒョナ!俺にこんなことして一体何
考えてんだよ!!俺、男だぞ!!」


鳴りやまない心臓を必死に抑えながら
なんとか言葉を発する。


「男でもヒョンが可愛かったからつい。そん
なにキスくらいで動揺しないでくださいよ。
あっ、もしかしてキスするの初めてでしたか?」


キュヒョンが笑いながらあまりにも上から
目線で言ってるような気がしたから思わず、



「キ…キスくらいしたことあるし!!」


ついこの間お前とな!!(泣)


1度ならず2度もキスされるなんて
何たる屈辱……
俺の人生にどんだけ汚点を付ける気だよ…

はっ…コイツまさか!!


「キョヒョナ、お前この間の夜もまさか
気付いてて俺にわざと…!?」



「この間の夜って何ですか?」



この間のは本当に寝ぼけてたんだな…って!
安心してる場合じゃないし!!俺は今、意識
のはっきりしてるキュヒョンにキスされたん
だぞ!!


「……お前…もしかして……ホ…ホモ…??」


俺は、恐る恐るキュヒョンに尋ねる。


「さあ。そんなことは考えたことなかった
ですけど。男の人をかわいい、好きだなって
思ったのは初めてです。」


キュヒョンは相変わらず顔色を変えずに
サラッととんでもないことを口にする。



「…す…好きって何が……?」




「だから、俺はヒョンのことが好きです。
恋愛対象として。」





……はぁ……??




キュヒョンの衝撃発言を受けて、俺の
精神状態はこの時普通ではなかったと
思う。


「何で俺のことを好きになるんだよ!!?
おかしいだろそれ!!散々お前のことを嫌い
だって言ってきた俺のことを何で!!??」


俺は、息を切らしながら声を張り上げる。





「ヒョンのどうしようもない所をいつの間に
か好きになってしまったんだからしょうがな
いじゃないですか。」



…ヤバイ…目眩がする……



好きになったからしょうがないって…
しかも、俺がどうしようもないって何だよ
それ!?


ちょっとは気にしろよ!!!
俺、男なんだから!!!!



キュヒョンからのいきなりの告白に、
俺は正気を保つのに必死だった。













   「で、何でミニヒョンが俺の部屋にまた
居座ってるわけ?」




ヒョクが呆れた顔で俺の顔を見る。
半ば強引に転がり込んだヒョクの部屋。
キュヒョンにあんなこと言われて同じ部屋
でどんな顔をして居ればいいのか分からな
かった。

だから、あの部屋から思わず逃げて来て
しまった。


「最近ヒョンとキュヒョンは仲良くして
るように見えたけど。何かあったの?」



絶対に言えない…
キュヒョンにキスされて告白された
なんて絶対に言えない…
こんなことがメンバーの間に知れ渡ったら、
もう、SJの中にいられる勇気がない!(泣)


「ヒョク、アイツはとんでもない本性を
持ってたんだ!!」

ホモという…

「だから、俺はもうあの部屋に戻るつもり
はないから!ヒョクが嫌って言っても絶対に
戻らないからな!俺とヒョクは今日から
ルームメートだ!」


「何だよそれ~!!ヒョンはいつも勝手なん
だから~!!俺のせっかくの1人部屋が~~!!」

ヒョクは今にも泣き出しそうな顔をして
いたけどそんなの関係ない。
あの部屋に2度と戻るもんか!


「トゥギヒョンに言いつけてやる!!」


ヒョクがベソを掻きそうな顔をしながら
声を荒らげる。


「はいはい。どうぞご自由に」


そう言いながら中途半端に終わっていた
自分の部屋から持って来た荷物の整理を
始める。

トゥギヒョンに言いつけたところで
キュヒョンがいる部屋に戻るもんか!
また、いつ犬に噛まれる様なことが起きるか
分からない。

俺は、キスをされてまだ感触の残る唇に
そっと触れる。
キュヒョンとのキスを思い出すだけで、
体が熱くなる…

何でこんな気分になるんだよ…?


それに、ほんとにキュヒョンは俺のことが
好きなのか…?




あ―――――!!!何で思い出すんだよ!!
なんか、あいつに純潔な自分の体を汚され
たみたいでムカつく…


とにかく!誰が何と言おうとあの部屋に
は戻るつもりはない!


俺の決心は固かった。



固かったはずなんだ…この時は…










 キュヒョンから逃げたくて、ヒョクの部屋
に強引に転がり込んだのはいいけど結局は食
事の時間に顔を合わせなければならなかった。

とりあえず、キュヒョンの顔はあまり
見ないようにする俺。



 「…なんか、久々にミニヒョンとキュヒョンの間に重い空気が流れてるね…」


そう言ってドンヘが俺とキュヒョンの顔を
交互に見る。


「2人とも、喧嘩でもしたの?」


どうしても俺とキュヒョンの空気が
気になるのか、ドンヘが尋ねてくる。


「別に…」


俺は素っ気なく答える。
キュヒョンは黙々と何も言わずにご飯を
食べている。


「ミニヒョンとキュヒョンは最近はキュミン
で人気も飛ぶ鳥を落とす勢いだったのに
不仲はまずいと思うけど?」


ドンヘの言葉に俺の箸が止まる。


「キュミンて何だよ…?」


「あれ?ミニヒョン知らないの?ネット上で
あれだけキュミンがELF達の間で盛り上がって
るのに。なぁ、ヒョガ~」


「そうだよ。キュミンが不仲なんて聞いたら
ELF達ががっかりだよ!だから、早く仲直りし
てミニヒョンは俺の部屋から出て行ってくれ
よ!」


俺は、ドンヘとヒョクの言葉を受けて慌てて
携帯で『キュミン』と検索する。
ネット上には、俺とキュヒョンとの
ツーショット画像が出回っていた。




「何だよこれ…何で俺とキュヒョンが
カップリングされてるんだよ!!」


キュヒョンがそんな俺の様子を見て隣で必死
に笑いを堪えている。


「ミニヒョンは何も知らないんだね。いわゆる
『商業ホモ』ってやつだよ!俺とヒョクで
『ウネ』、ジョンウニヒョンとリョウガで
『イェウク』みたいにカップリングされれ
ば個人の人気にも繋がるんだよ!」


自慢気にドンヘが説明する。


「だからって何で俺とキュヒョナなんだよ!」


「俺はヒョンとカップリングされるの
嫌じゃないですけど?」


いきり立っている俺に、キュヒョンが
また胸をざわつかせるような言葉を投げ
かけてくる。


お願いだから、これが悪夢であってほしい…
夢から早く覚めたい…





「キョヒョナ~、お前に荷物が届いて
るぞ!」


ジョンウニヒョンが小包を持ってくる。


「もしかして、ペンからのプレゼントかな?」


「何をプレゼントされたの??」


ドンヘとヒョクがキュヒョンの小包を
開封する手元を除き込む。
そこには、いかにも高級そうなワインが
入っていた。


「わ~!!絶対このワイン高いよね!
キョヒョナ、かなりペンに愛されてるね!」


キュヒョンの高級ワインを見てみんな
すっかり興奮気味だ。
俺も横目でチラッと見る。



あ~…美味しそうなワイン…


ヒョクの部屋に移ってからはスパショも
近いしまた潔くなんとか我慢していたワイン。
やっぱり俺の慾望がニョキニョキと
芽を出し始める。



そんな俺の様子にキュヒョンが気づいたのか、


「今夜はこのワインを飲むの楽しみだな~」



と横目で俺の顔を見ながら挑発してくる。



やっぱりこいつ…ムカつく!!










 結局、ワインがどうしても飲みたくなって
自分で買ってきてしまった…
どうしても我慢が効かない俺…


ちょうどそこに風呂上がりのヒョクが部屋に
戻って来た。


「ヒョガ~、一緒にワイン飲まないか?♪」


「何言ってんだよヒョンは!スパショも
近いのに!それに、俺が酒もタバコも一切
しないの分かってるでしょ?もう寝るから
静かに飲んでよね!」


そう言ってヒョクはそそくさとベッドに
潜り込んだ。


全く面白くないヤツ…


仕方なく静かに1人で飲むことにした。
1人でワインを飲むなんていつぶりだろうか?


それに…


なんか1人で飲むワインは美味しく感じ
ないし面白くもない。
以前、1人で飲んでた時はこんなこと
感じなかったのに…


キュヒョンと飲むのがそんなに楽しかった
のか…?
いや、違うし!絶対に違うし!
このワインがまずいだけに違いない!


それにしても、あいつが余計なことしたり
言わなければ俺だって今頃あの高級ワインを
飲むことができてたはずだ…!(泣)

キュヒョンのヤツ、今頃1人であのワインを
楽しんでるのだろうか…?


くやし―――――!!!!









 そして、俺はキュヒョンの部屋のドアにへばりついてそっと耳をあてる。キュヒョンがあのワインを1人で楽しんでいるのかこっそり確かめに来た。


何してるんだろう…俺…


バレないように静かにそっとドアを少し開け
て部屋の中を除き込む。


あれ…?キュヒョンのヤツいない…
そういえば、俺がいきなり部屋を出て行って
も何も言って来ないし、俺あいつにからかわ
れてたのか…?もしかして、俺を部屋から追い出すためにあんなことを…!?



「何泥棒みたいにコソコソしてるんですか」


「うわっ!!ごめんなさい!!!」


いきなり後ろから話しかけられて、何も
悪いことをしてないのに謝ってしまう
バカな自分。でも、後ろにいたのは風呂上が
りのキュヒョンだった。


げっ…最悪…!


「出て行ったはずのヒョンが俺の部屋を
覗いて何してるんですか?あ~、あのワイン
を今頃俺が1人で楽しんでるのか様子を見に
来たんですね?」


ギクリ…


「…ち…違うし!俺の荷物が残ってたから
取りに来ただけだし…」


「ヒョンの荷物なら見た限りもう残って
なさそうでしたけど。」


「あっ…そう…?」


ヤバい…嘘が苦しくなってきた…


「ははっ!相変わらず素直じゃないです
ね。いつも言ってますけど飲みたいなら
飲みたいって素直に言えばいいじゃないで
すか。」


「だから違うって!!」


そもそも部屋を出ていくはめになったのは
誰のせいだと思ってんだよ!ったく!



「ヒョン、良かったらまた一緒に飲みませ
んか?俺、ヒョンと一緒に飲みたいです。」


キュヒョンの言葉に思わずドキッとして
しまう。

そんな風に言われたらなんか調子が狂って
しまう…


「……そうか?キョヒョナがそう言うなら一緒
に飲んでやってもいいけど?」


やっぱり素直になれない自分。


「相変わらずですね。ヒョンは。どうぞ
入ってください。」


そう言って部屋のドアを開けるキュヒョン。
俺の居なくなった部屋は随分と広く感じた。








 結局、キュヒョンは俺にキスをしたことや
告白してきたことには触れてくることは無かった。

やっぱりからかわれてただけなのか?

だからと言って、自分からこの前のことを
追及することは無かった。
だって、追及したところで俺にはどうする
こともできないし早く忘れ去りたかった。
キュヒョンのせいで今すぐにでも忘れ去りた
い記憶がどんどんできていく。
バカキュヒョンめ!

キュヒョンに怒りを覚えながらもキュヒョン
と飲み交わすワインは最高に美味しかったし
楽しかった。

いや、キュヒョンと飲むから美味しいし
楽しいんじゃなくて、ワインの味が格別だから
いい気分でいられるんだ!

自分にそう言い聞かせる。



「あ~、このワインの味最高ですね。それに、
1人で飲むよりヒョンと飲んだ方がやっぱり
美味しいですね。」


嬉しそうな表情でワイングラスを揺らす
キュヒョン。



「…へ?あ…そう…?」



キュヒョンの言葉にいちいち動揺して
しまう。

お前はいつからそんなに素直になったん
だよ…

生意気マンネじゃなかったのかよ…?

そんなこと言われたら調子が狂ってしま
うだろ…


「そう言えば、もうすぐでスパショで
忙しい日々になりそうですね。ヒョンがギター
を弾くって聞いたんですけど?」


「あっ、うん。ソロでギターを弾くことに
なったんだ。まだ弾き語りできるかははっき
り分からないけど。」


「弾き語りできるんですか?凄いですね!
ちょっと今聞きたいです。」


「えっ!?今!?」


「お願いします。ちょっとだけ。」


そんなに懇願されたら嫌とは言えない。
それに、ちょっと得意気な気持ちになって
いた。

俺は、ギターを持ってきて『marry you』
を歌った。



弾き語りをする俺を見つめるキュヒョン。
俺を見つめるキュヒョンの眼差しが熱す
ぎて、キュヒョンの視線から今すぐにでも
逃げ出したい気持ちだった。





そんな熱い眼差しで俺のことを見るな…


「ヒョンの手って凄く綺麗ですね。」


ギターを弾く俺の手に、キュヒョンの
手がそっと触れる。


俺は思わずビクッとなって、
キュヒョンの手を思いっきり払いのける。



「なんだよ!いきなり触るなよっ!!」



「すいません…いきなり触れて…」



「あっ…ごめん…びっくりしてつい…
手ならお前の方がずっと綺麗だろ!俺、風呂
に入ってくる…」


そう言って俺は逃げるようにそそくさと
部屋を出ていった。





俺…あいつにちょっと触れられただけで
何こんなに動揺してんだよ…
しかも、キュヒョンのことを全否定する
かのように手を払い退けて、俺って嫌な
ヤツ…


それに、俺に拒否られたからって
あんなに悲しそうな表情しなくてもいい
だろ…?



キュヒョンが触れた手を見つめる。

キュヒョンの手の感触を思い出すと、
一気に体が熱を帯びてくるような感覚に
襲われた。

この前、キスされた時だって体の熱さが
一時収まらなくて、鼓動が止まらなかった…


男にあんなことされて気持ちが悪い
はずなのに、



何でこんなに胸の鼓動が止まらないんだよ…




~奇跡のような愛⑧に続く~