『古事記』中巻その34~朝鮮半島との関わり~ | 雲をつかんだ日

『古事記』中巻その34~朝鮮半島との関わり~

神功皇后の遠征以来、朝鮮半島との交流は盛んになり、日本を訪れる使者たちは約束通りたくさんの朝貢を持ってきてくれました。
なかでも百済との付き合いは密で、馬をオス、メス一頭ずつと、太刀や大鏡など、いろいろなものが応神天皇に献上されました。
すると、同席していたオオサザキが、百済国王・近肖古王(きんしょうこおう)から天皇へと贈られた太刀に目をつけました。

「父上!こちらの太刀を私にお譲り下さいませ」。

「兄上、使者の方が居られる前で、お止め下さい」と、ウジノワキがたしなめます。

しかし、オオサザキは「父上!父上!なにとぞ!なにとぞ、お願い申し上げます!!」と、猛アピールします。

「わかった、わかった。あとでお前にやるから、そう興奮するでない」。

「やったぁーっ!!」。

兄のはしゃぎ振りに、照れくさそうに使者に向かってお辞儀をするウジノワキ。
オオサザキの尋常ではない喜びように、使者も満足げな表情を浮かべます。
ちなみにこの時の太刀が、石上神宮(いそのかみじんぐう)に奉納されている七支刀(しちしとう)です。

「お恥ずかしいところをお見せいたしました」。
そう言って、応神天皇は続けます。
「お恥ずかしいついでに、もう一つ、お願いがあるのですが…」。

「何でございましょう?」

「実は…私たちの国には文字というものがありません。それゆえ、漢字を理解できる者がほとんどおりません。しかし、今後、他国と貿易を行っていく上で、それでは都合が悪い。そこで、どなたか日本に来て漢字を教えてくれる人はおりませんでしょうか」。

「なるほど。それなら、我が国の文官ワニキシが適任でしょう。彼は漢字も日本語も堪能ですから。国に戻ったら聞いてみましょう」。

「よろしくお願い申し上げます」。

後日、近肖古王の命により、ワニキシが中国の思想家・孔子の言葉を記した『論語』10巻と、漢字の練習テキスト『千字文(せんじもん)』1冊を持って来日しました。
そして、朝廷内で漢字の教育を施してくれました。
これが、日本人の高い識字率の高さにつながっていくわけです。

また、鍛冶師や、織物師、酒の醸造家など、様々な技術者たちが大陸からやってくるようになります。
なかでも、中国の呉(ご)からやって来た織物師の技術は素晴らしく、彼らの織った服は呉服と呼ばれるようになり、今日に伝わります。



『石上神宮』奈良県天理市布留町384


『七支刀(レプリカ)』