氷帝の帝王・跡部景吾中学二年から付き合っている大切な大切な彼女がいる。

二人の出会いは入学式。

リムジンから颯爽と現れた跡部に彼女はぶつかった。

普通なら跡部が彼女を支え、「俺様にぶつかるとはいい度胸じゃねーか、あーん?」くらいの憎まれ口を叩くところだったが、

彼女はあろう事か跡部を吹っ飛ばし、「ごめんなさいっ!」と走り際に告げたのだった。


女に突き飛ばされた→俺様のがひ弱



跡部景吾、人生初めての屈辱だった。



それから跡部は彼女を見るたびに腹立たしさを覚え、目が合う度に威嚇の睨みをきかせていたが、目の悪い彼女にそれが通用する筈もなかった。

そうとも知らない跡部は、なかなか骨のある女じゃねーかと勘違いを起こす。

同じクラスの宍戸亮に彼女の話を聞いても

「たまに学校休むけど大人しいやつだよ」

と、適当な答えが返ってくるだけ。

それはますます跡部の興味をかきたてた。

それから、彼女の事を気にかけつつもテニスと程度の良い女遊びをそこそこに中学二年の秋、彼はテニス部部長の命を受ける。

それを気に、跡部は本命の彼女を作るべく、放課後、一人教室で日誌を書く彼女に声を掛けた。



「俺様の女になれ」



隠れバンギャとも知らず、跡部は自信満々に彼女に言った。

彼女は日誌から目を離し、顔を上に上げる。そして、きっぱりと言い放った。

「(京さんじゃないので)お断りします」

跡部、人生初めての失恋であった。

再び彼女は日誌に目を落とし、書き始める。

跡部は何も言わず教室を去っていった。



何がいけないんだ?

この俺様の誘いを断る女なんている訳ねぇ。

イライラしながら、階段を降りていると向かい側から忍足が歩いてくるのが見えた。

「よ、跡部やん。お疲れ」

「…ああ」

「なんや、機嫌悪いですぅ。みたいな顔して」

「うるせぇ」

跡部は忍足を睨みつけると、早足で階段を降りていった。

それからというもの、跡部の頭から彼女のあの冷めた表情がこびりつて離れない。

そういえば自分は彼女の事を何も知らない。話したこともない。

ふと、教室の隅で忍足と談笑する彼女の顔が視界に飛び込んだ。

忍足に向かって笑う彼女に、跡部は苛立ちを覚えた。

そういえば、自分は彼女の笑った顔なんて一度だって見た事がない。

宍戸にも同じ様に笑うのだろうか?

言いようもない嫉妬心と独占欲が跡部を支配した。

気が付けば、跡部は二人の前に立って、彼女の手を掴んでいた。

「ちょ、なんですか?!」

困惑する彼女の手をグイグイと引っ張って教室をでる。周りのざわつきなど気にしていられなかった。

屋上のドアを開けて壁に彼女を押し付ける。

「跡部君、意味わかんないんだけど」

「…るせぇ」

「は?」

「お前は俺だけに笑ってりゃいいんだよ!」

彼女は状況が飲み込めず目をパチクリさせた。

跡部は舌打ちをすると、彼女から手を離す。

「最初は軽い気持ちだった。それは謝る。だけど、今は本気だ」

「え?」

「俺の女になれ」

跡部の目は真剣だった。

彼女はこれ以上断るとやっかいだし、どうせOKすればすぐに飽きるだろうと思い、その告白を受け入れた。

「・・・いいよ」

それが全てのはじまりだった。