ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。
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但し、まだ制作中の部分も多々あります。
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落ち着いた、静かだが深い感謝を表す言葉だった。
心も静かに、おそらくはまだ立ち上がれるほど回復していないだろう体力を、感謝の意を現わすために無理をしながら使い、しっかりと座り続けている。
「それよりも、まだ十分に体力が回復していないのでは?横になっていてくれて構わないのだよ」
無理に言っても、信仰に対しかたくなそうだから、立ち去るまで横のなることはなさそうな雰囲気だった。
しかし、少し見た限りでは、他の信者どもが、目がイってしまってるのに対し、こいつは少し違ってて、もう少しだけだが常識的に話とかも出来そうな感じだ。
「まあいい、他の者たちにも会いに行かないといけないので、これからゆっくりと休んで、傷を癒し、体力を回復させておいてくれないか」
「こ、これは、私としました事が、喜びと感謝のあまり、教祖様のお忙しい時間を無下に過ごさせてしまいました」
「そうではない、私は傷を治すために休んでほしいのだ」
「あ、ありがとうございます、そのお心遣い感謝いたします。おかげさまで私の心は清らかに澄み、しずかながら信仰への情熱が湧き上がってくるのを、心の底より感じております」
言ってることはなんか不可思議な言い回しだが、とりあえずは傷を回復させるために休むことに同意しているかのようだ。
この言い回しが自称解脱者の話し方と思っておいて間違いないだろう。
そして、空を仰ぐように天井を見上げ、感激に浸っているのだが、果たして見えているのは天井なのか、架空の空なのか?
「それでは、身体を大事にするのだぞ。ところで、他の三人の者とは会ったのか?」
「はい。私としたことが、何より事を急ぐあまり、何人かの信者に手伝っていただき、戸板に乗せていただき無理に移動したのですが、あの者共に迷惑をかけてしまったのではないかと」
「その者どもも奉仕と思っていてくれればいいが」
「しかし、私の不徳。ただ、一時も早く他の者に解脱の為の福音を与えたくて、その一心で」
「その方は自らを悔いておる。その心は神に届く。また、その方にも良き戒めとなるであろう。それでは、時間もない事だ、私は行かせてもらうよ」
教祖って次から次へと仕事とか用事が沸いてくるもんなんだなーとか思いながら、その部屋を後にすることとした。
「感謝に耐えません教祖様。私には今、心に登る太陽と月とともに春風のような爽やかな風が吹き荒れて、清流のような気持ちで、生まれてきた喜びをかみしめております、この命は全て教団と教祖様に……」
出ていこうとしている背中に、感謝の意なのか詩人になったのかよくわからない事をだらだらといわれているが、聞こえないふりしておいた。
「それでは、次の部屋に連れて行ってください」
案内役の巫女に伝えると、楚々と案内し始めた。
廊下も見覚えのあるもので、さっきの子ども化現象が起ったオッサンが、おもちゃであやされてたところに向かっていってるものだ。
着いたのは、さっきのおもちゃがあった部屋のすぐ隣だ。
多分もうおもちゃがいらなくなって、さっきの部屋は片付け中なんだろう。
巫女が扉を軽くノックした。
「はい」
「失礼いたします、教祖様がおこしになられました」
その声を聴いて、かなり慌てたらしいあわただしい感じで、中から扉が開けられた。
「こ、これは、これは、教祖様……。突然のおこしに一同驚いております。何の準備も出来ておりませんが、お入りください」
「うぬ」
あ、そうか、教祖来るよって前もって言っとかないと、突然来られたらびっくりするんだな。
「さささ、どうぞ」
中堅幹部が部屋の奥に案内しようとする。
部屋の中にいるのは、見た目確かに、先程ばぶーー、とかいって、子ども化現象の真っ最中だったオッサンたちだ。
ただ、大きく違うのはその顔つきだ。
目元は自信に満ち、口元は笑みを浮かべながらも引き締まり、強い信念をしっかりと抱いた、強く利発そうな表情へと変貌しているのだ。
部屋には中堅幹部のおっさんのほか、さっきまで世話役だったと思われる女性信者のほかに、手伝いに来ていると思われる男性信者もいたが、三人の解脱したと言われている男たちの佇まいは別格で、一目見てそれとわかる。
三人は立ち上がると、それぞれの立ち位置から一斉にこちらを向き、手を体の前で組み、伸ばしていた腰を深々とかがめ挨拶した。
「教祖様」
あら、どうすりゃいいんだろう?
「挨拶はよろしい。今は正規の訪問ではなく、様子を見に来ただかだからな」
よし、様子見という事にしてやったぞ、教祖がそういうんだから間違いない。
「そうなのでございますね。しかし、私どもの心は教祖様の気高きお姿を拝見し、清々しい風に洗われているかのようでございます」
どんな気分なのかわからんが、本人が清々しいんだったらいいんじゃないか?
「神に感謝するのだぞ」
よくわからんから、万能の解釈が可能な答弁をしておいた。
「おお、教祖様、余りの清々しさに一番重要な事をついないがしろにしてしまっていたことを思い出しました。そうです、私どもは神の愛に満たされているからこそ清々しいのですね」
「自らが高みに上がるたびに、ついつい忘れがちになるものだ。しかしその方らは、これからは、絶体にその気持ちを忘れぬであろう」
よく考えたらこの教団の教義、ほとんど知らないが、色々任務こなして苦労しているうちに、こういう駆け引きだけは得意になっているようだ。
我ながらよくやるもんだなと思う。