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ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。

 

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「皆のものよ、新教祖の御神力は満ちみちた、今より月を消し去るご神事を始めるぞ」

 えらいこっちゃ、オジンが長話して間に合わなかったらいけないから、早めに切り上げさせたんだから、微妙に時間があるんだが……。

 仕方がないから、榊と神楽鈴を振り回しながら、出鱈目の祷を唱えた。

 ふと、あ、本当に消え始めた、祷が極まって頂点に達したかのような演技をせねば。

 自信はないが演技はうまくいったと思うころ、二つの小さな月が、中心に吸い込まれていくように消えていった。

 

 

 

 

 

 線香花火のような最後の輝きなどなく、あっさりと、本当に無に帰るようにすーーっと消え失せていくのだ。

 よく考えてみたら、あんな小さな小惑星だが、何億年、何十億年前から存在し、この先も何十億年以上存在し続けていたものかもしれないのだ。

 それが、人工的に中心部に人工ブラックホールを発生させられて、どこかわからない所に吸い込まれ、存在を失われてしまうのだ。

 小惑星が二つ同時に消え失せた事実については、教団の謎の上部組織と、帝国情報部の二つの組織によってしっかりと、科学的に調べられているはずだ。

 月を消す神事の大袈裟な身振りを終えて、悠然としているように見えるであろう素振りで信者どもを見渡した。

 反応は大きく分かれていた。

 所々に並べられて松明の明かりでしか見えないが、それでも信者たちの表情を読み取ることはできる。

 柵の内側の二千人の、古くからの選ばれた信者は平伏し、感涙にむせび、自らの信仰の正しさを感じていた。

 柵の外の比較的新しい信者や、入信希望者の様子は、非現実的なものを目の当たりにした者のそれそのものだった。

 青ざめて震える者、泣き出す者、感動している者、驚きのあまり声も出ない者、失神してしまっている者。

 あんぐりと口を開けて呆然としている者なんて、本当にいるんだなーーと。

 共通しているのは、インチキだと騒ぐ者や、しょうもないと否定する者は全くいないという事だ。

 と、いう事は新教祖のお披露目は大成功って事でいいんだな。

 前の教祖が能力を使い果たして、魂だけ天に昇って、パッパラパーになるはずの儀式が、新教祖によって執り行われた矛盾に誰も気づいていない。

 あとで誰かが気付いても、また別の誰かが強引に筋が通る解釈をしてくれるだろう。

 新教祖としては、どう振舞うか考えた結果、愛想を振舞たりはせず、悠然としておくことにした。

 その方が教祖っぽく見えるだろうし、少し近寄りがたいくらいの方がいい。

 二つの小惑星が消え去ってどうなっただろうか?

 特異点はまた開いたのか、そしてそれはどこに?

 そういった難しいことを考えていれば自然と教祖らしい表情になって見えるだろう。

 他にはわからないよう、合図を教団幹部のジジイどもに送ると、ようやく教団幹部のジジイどもが、思い出して話始めた。

「見よ、信者檀信徒どもよ、天を仰ぐがいい」

 相変わらず年の割に大きな声が出るのは、もしかしてこいつ元舞台かなんかの役者修行でもしたことあるのか?

「月が、月が消えたぞ……。それも二つ同時にだ!」

 ジジイは舞台劇のように大袈裟に聴衆たる信者に話しかける。

「予言の通り、そう、予言そのものではないか。誰がこの事態を想定し、信じたか考えて見よ」

 そしてジジイはしばし沈黙し、信者に考える時間を与えた。

「それを信じることが出来たのは、ここにいる信者だけだ!予言を信じた者だけがここに集い、この奇跡の瞬間に立ち会うことが出来たのだ」

 このジジイ、偽教団幹部になる前は間違いなく役者やってたな。

「世俗の、まだ教団を信仰することが出来ていない不幸な者たちの頭上でも、まごうことなくこの奇跡は起きている。だが、だが、哀れにもその者たちは、二つの月が消える際に起こる奇跡、つまり、過去の業、罪穢れ、未来の業、罪穢れを全て消し去ってくれるという御神徳に預かることが出来なかったのだ」

 もう完全に、二つの小惑星がブラックホールに飲み込まれて消えたら、ここにいる信者の過去未来全ての業が晴れたってことになっていて、それは否定しようのない決定事項であり真実とみなされている。

「皆のものよ、その方たちの業、罪穢れは取り去られた。早いものは今すぐ、遅いものでも数日以内に、ご神徳を感じることが出来ようぞ」

 あまり言いすぎて、未来永劫の業や罪穢れを消したことにすると、次の有難い神事を行い、浄財を集めることが出来ないので、そのへん上手く加味してしゃべっているのはうまいとしか言いようがない。

 それを聞いた信者がどう考えているか予想するのはたやすすぎた。

「古くからの信者たちよ、新しい信者たちよ、これから入信しようとする者たちよ、其方らは等しくここで奇跡に預かったのだ。そう、新しい教祖様はこうおっしゃられた!」

 うーーん、何も言っていないけど、このジジイは何を言ったことにしてくれるのだろうか、結構楽しみだ。

「本来ならば入信している者のみが受け取ることが出来る功徳である。しかし、教祖様の御心は広い」

 柵の外の連中のうち、今反応しているのはまだ入信していない、どうしようかと迷っていた者たちなんだろう。

「神と教祖様より特別の許しが出た!この場にいた者とその家族に限り、入信したならば、過去と未来の業と罪穢れを消し去ってい頂けるとのことだ、これは特別の奇跡、今しかありえないご神徳だ!」

 とんでもない事考え付くもんだな……。

 しかしそれでも、会場の雰囲気の中、完全に信じ込み、今を逃しては功徳に預かれないと思い込んだ、入信希望者は、その機会を逃すまいと教団幹部のジジイの声に全てを集中させた。

「今から新入信を受け付けるが、希望者が多く、殺到して怪我人が出ては、神の道に背くので、整理券を配布する。それと浄財を持って、後日入信すればよい」

 整理券用意してたのか?

 


 


 

 

 


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