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ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。

 

こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。

 

但し、まだ制作中の部分も多々あります。

 

こちらは ↓ Wikiへのリンクです。

 

 

 

 

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「ハインツルドルフ・グスタフイワノフというのですが、長くてややこしいので省略しております」

「そのホーリーネームはどなたがお付けになられたのですか?」

「はい、私の教祖様と預言者様への、強き信仰をご覧になられた司祭につけていただきました」

 実は自分でつけたんだが……。

 もっと簡単なのにしとけばよかったが、急にというと思いつかないもんだ。

 

 

 

 

「そうだったのですね、素晴らしいですわ。私の母も有難いことに司祭様につけていただき、感謝の意の為、今お礼の逆さづり水攻め拷問の修行中ですわ」

 そんなことまでするのか、それに今拷問っていったぞ。

「母君とご一緒に入信ですか、素晴らしいことですね」

 さっと見回したが、他の何人かの女性信者たちは、顔も似ていないし身内同士とかいうわけではなさそうな感じだった。

「はい。父も祖父も祖母も弟もあらん事か入信を拒み、その上私たちを口ぎたなく罵ったのです」

「では他のご家族はお入りになられなかったのですね、それは残念な」

「それだけならともかく、教祖様の事をも冒涜したので、聖なる棒と聖なる金槌でどつきまわして半殺しにして、離縁してさしあげましたわ」

「おお、我ら信徒を罵るに飽き足らず、あまつさえ教祖様を冒涜するとは、神をも恐れぬ所業、おそろしや、天罰がくだらねば良いのですが……」

 適当に答えたが、なんなんだよ、聖なる金槌って?

「天の手を汚さぬよう、不信人者どもに、我らで代わって罰を与えるのは、信徒たるものの聖なる務めではございませんか」

 そ、そうそう、こいつらの教義で、神に代わって自ら罰を下すっていう、物凄い条項があるのだ。

 普通だったら国家の治安機関に監視対象にされておかしくない団体なんだが、ここの奉行所のあのざまだと、絶対にそんなことしない。

 それどころか宗教団体は寺社教会奉行所の管轄で、そこに裏金さえ渡しておけば、町奉行所の手は及ばない。

「貴方は良き行いをしましたね。これからも聖なる金槌にかけて、信徒の自由と正義、そして世界の幸福を祈って行きましょう」

 こいつらの喜びそうな答えを言っといたが、それにしても、いきなり主婦と娘が得体がしれず、理解不能の教義を持つ新興主教の虜になってしまって、それを諫めたら目のイってしまってる二人に、聖なる金槌でどつきまわされてしまう家族の気持ちって、どんなものなんだろう?

「私は聖なる荒縄で反対する不心得な家族を縛り上げ、聖なる鞭で拷問して印鑑と権利書を取り上げ、土地家屋全部を売り払い、入信に当たり浄財と致しましたわ」

 別の女性が当然のように笑顔でいった。

「私も今は悔やんでいます。聖なる棒と聖なる金槌でうち倒した後、何故あの不信人者の元家族の家財産をうっぱらって、教団に浄財として差し入れるという事を思いつかなかったのでしょうか……」

 うーーん、それはこの人の潜在意識かなんかに、ほんの少しだけ良心が残ってたってことなのか?

「ですので、ここにおられるホーリーネーム、ロドリゲスさんは、それを悔いて、以後、聖なる金槌を振るう時は冷静かつ客観的に、教団の利益になることがあるのならば優先してというご決断をなされたのよ」

「あ、こちらの方ロドリゲスさんといわれるのですね」

「そうです、他の者たちですが、私がホセで、この右から順に、サンチョとパンセ、アレハンドロです」

「あ、サンチョにパンセにロドリゲスさんとアレハンドロさんですね。私はハインツルドルフ・グスタフイワノフと申します。ハインツイワノフとおよびください」

 すまん、赦せ、ハインツルドルフにグスタフイワノフ……。

 こんなイってしまってる連中の同列にお前らを並べてしまった。

 ここまでひどいなんて、さすがに思ってもみなかったんだ。

「わかりましたわ、ハインツさん。貴方は浄財はどれくらい?」

 ハインツさんて?覚えられないのか?確かにややこしい名前だが。

 それより、いきなり浄財の多寡かよ?

「それが……。信仰心の高さは持っているのですが、まだ浄財は……」

 金は惑星買えるくらい持ってるが、こんなとこに寄付する気はさらさらない。

「まあ、それはそれは、教団に申し訳ない気持ちで一杯でしょうね、解りますわ。それでは、原価率の低いケシの実から生アヘンを作って、ヘロインに加工して販売するという労働奉仕がありますから、それをご紹介してくれるよう司祭様にお願いして差し上げましょうね」

 おい、お前ら……。

 なんかこんなところで、川上から送ってきているケシの実の流れが、あっさり解明されようとしているぞ。

「おお、私のような金のない物でも、ご奉仕が出来るのですね、有難い、感謝します」

 しかし、下手に労働奉仕なんか志願したら、聖なる手錠と聖なる鎖なんてもので繋がれて、寝る間も与えられず働かされたりしないだろうな?

 因みに、こいつら全員目がイってしまってはいるが、悪徳宗教の思想に感化されてそうなっているのであって、違法薬物で目が散っているのとは違っている。

「浄財はお金だけではありませんよ。身体を使って教団の為に働くのも、また浄財なのです」

「はい、私は教団の為に一生懸命原価の安いヘロインを高く売って参ります」

「そうです、貴方も多額の浄財を納めて、神に喜んでもらいましょう」

 なんで神様がお金を欲しがるのかはわからないが、家財産全部うっぱらってまで、教団に寄進しようと思う事の出来る心の状態って、どんなもんなんだろう?

「私は家も家族もなく、また貧しく、浄財をお納めすることはできませんでした。けれども神はそれに代わって、ヘロイン精製所で働き、売りさばき、神の敵を片付けるなどというお手伝いを、一日平均16時間もさせていただくことが出来るという、大変な名誉と喜びをお与えになってくださいました」

 

 

 

 

 


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