ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。
こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。
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ある一部だけを好意的に解釈すれば、必殺剣客商売人だったかのクローンが、敵のラボだか研究施設をものの見事にぶっ壊してくれて、万々歳といえなくはない。
なんでか知らないがそのあとで、クローンが自分の元になった人物を抹殺しようと考えて、ここまでやってきたってことで良いんだよな。
「大雑把に言うと、誰でもいいからあのクローンどもをやっつけてくれって話になってるのか?」
大人どもから遺伝子情報を抜き取るのは、多分前に考えた方法で間違いない。しかし、子供から遺伝子情報を取ったのはどうやってだ?
きっと、大人たちがしかるべき理由で子供を預けている間に、血でも抜いたって事なんだろうな。
「上の方は無理難題を押し付けてきた。生かしておいてクローンの秘密が漏れないように、あいつらを全員抹殺して焼却処理しろとな。あんな強い奴らどうやってやっつければいいというのだ?」
とんだ黒企業ってやつだな。
「それが酷いお話だって事はわかるさ。しかし、作る前から多少なりとも予想はしていなかったのか?」
さっきからこいつが妙に口が軽く、内情を次々と話してくれるなぁ、と思ってたが、上司というか上役に相当恨みを持ってて、実は聞いてほしいんだろうな。
「それは我々実働部隊にはわからない、研究部門に恨みつらみを言いたいのは山々だが、言ったところで聞いちゃくれない」
見た目三歳児くらい、クローンとして作られた際に成長促進剤か何かを使われ、頭だけは大人になっているらしい。
「しかしだが、お前は見た目が三歳くらい、子供にしか見えないんだ、我々からすれば、どうしても助けてやらなければと思えてしまうんだ。まってろ、今薬を……」
虫の息の三歳児の外見だ、助けてやりたいと思うのが人情ってやつだが、それを実際以上に感謝してくれたらしい。
「ふ、仲間にもそんなにされることはなかったし、これからも無いというのに、御親切な事だな」
「いいから治療するぞ」
「いや、無駄だ、今のところクローンは研究途上で、完成できたとしても正常に機能するかどうかは解らないうえに、失敗して以上をきたし、暴れだす可能性も高いことを知って作った身だ」
「聞けば聞く程酷い話なんだが、なんでそんな事までわかっていながら、無理に作ったりするんだ?」
「さあな、失敗を繰り返していけばそのうち成功するとでも思ってんだろうよ」
「ある意味正しいって言えなくもないが、造られたものから知ればたまったもんじゃないだろうな。いつもその調子なのか?」
「ああ。無理に計画を押し通そうとするやつ、無茶だからやめろというやつ、色々は罰とかもあるようだが、わからない。こっちは数十日で無理やり作られてるんだ、脳内にラーニング出来る時間も知れてるってもんだ。そんなもんで全部わかるわけない」
なるほど、今の技術でクローンは数十日で出来るってわけか。数十日とはどれくらいなんだろう?
それが判らなくても、数十日前って言葉から逆算して、安芸山小兵衛ご一行が、全員一気に遺伝子情報を抜き取られる謎の行為をした日を探り当てれば、それより短い期間という事になる。
「もしかしたら、もしかしたらだが、お前ら、知ってて大暴れして、クローン製造施設とかを破壊して、逃げ出したのか?そして、追っ手が来ることも計算の上で、お前らの本体とでもいうのか、あの連中と対峙させれば、そいつらを始末してもらえるって考えてここに来たのか?」
そういうと、見た目三歳くらい、無理やり大人として通用する程度の知識を植え付けられた、安芸山小兵衛の一子大二郎のクローンは不敵に笑った。
「好きに考えるがいいさ。だが、確かなのはどんな組織でも反対する派閥はあるものだが、今あいつらはそれを半ば強引に抑えて、ホムンクルスを作ろうとしているってことをな。それ以上どうなっているかは本当に知らない。邪教団とやらとの関係も本当に何も知らない」
そういうと、見た目三歳ほどのクローンは、突然ガクッと首を折るようにし、全身に痙攣を走らせ始めた。
「しまった、奥歯か何かに毒を仕込んでたか。古典的な手だが、もっと十分に警戒しておくんだった……」
本当にうかつだった。
だが、即効性の毒物を持っていたのだ、その気ならばすぐに自害することもできたはずだ、それをしなかったという事は、伝えたいことがあったという事だ。
全て言い終えたのち、自害したと考えて差し支えないだろう。
「ねえ、これって、どくか何かで自害したんだよね」
グスタフイワノフが少し憐れみながらそう言ってきた。
「ああ。見かけたときはもう虫の息だったが、言いたいこと、知ってることを伝えて、それから自ら命を絶ったようだな」
「うん。でも、見た目みっつくらいの子供だよ。死んじゃったとなると、どうしても、ね……」
「それは当然だな。だが、行くぞ、エスメラルダたちを助けなければな」
「あ、あ、そうだ、うん、悲しいけど、行かなきゃなんないんだよね」
「そうだ、行くぞ。しかし今の話だと、例の邪教団だか何だかの敵だが、自分の作ったクローンに反逆されて施設をかなり怖されたうえに、追っ手として出した戦闘用の実働部隊もかなりやられているはずだから、攻め込むなら今だな」
走って移動しながら、付いてくる二人に言った。
「そ、そうかもしれないけど、確かにチャンスといえばチャンスだけど……」
「さすがに体持たないから、ほんの少しでいいから休んでよ、僕ら心配だよ……」
ハインツルドルフとグスタフイワノフの二人は本気で心配してくれてるみたいだった。
「なに、車の中で少しだけだけど、休んださ。あ、また誰か倒れてるぞ……」
少し走って向かった先に、また誰かが倒れている。
仰向けに倒れた熊と見まごうばかりの巨体、前のはだけた畳みより広い着物風衣装、その中に赤い肌着に丸に金印。
おかっぱ頭だが、金太郎刈りといった方がただしいか。
間違いなく金太郎侍、そのクローンだ。