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ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。

 

こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。

 

但し、まだ制作中の部分も多々あります。

 

こちらは ↓ Wikiへのリンクです。

 

 

 

 

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「あ、セイジー様だね」

 変ってるやつってのを極めて、自らをアンデッド化し、古代文献の研究に普通の人間の何倍、いや何十倍の期間取り組んでたほどの奴だ。その生涯で得た知識を立派に役立ててくれれば良いんだがな……。

「何はともあれ、重大な謎は今刻々と解明されてるって事だ」

 そういったとき、エスメラルダから緊急メッセージが入ってきた。

『ねえ、休む間もなく申し訳ないけど、大変なことが起こっちゃったの……』

 

 

 

 

『どうしたんだ?』と連絡してやる。

「おい、エスメラルダから何か緊急メッセージが入ってるぞ」

 後部座席のハインツルドルフとグスタフイワノフの二人にも、一応そのことを教えてやった。

「なんかあったのかな?」

「さあな。しかしあれだけの事があったって連絡してから、それでも向こうから。大変なことが起こっちゃったの、と書いてるんだから、余程の事なんだろうな」

「大変なのかなーー?」

 自動操縦中の、のどかな山道だ、モバイルデバイスをもう一度眺めてみる。

 すぐにメッセージは届いてくる。

 後部席の前に設置されているモニターにも、メッセージが映るように設定し、後ろの二人にも読めるようにしてやる。

『安芸山小兵衛さんが斬られて死んじゃってるんだけど』

『なんだって?あいつは、素行は別として、強さだけは生半可なもんじゃないやつなんだぞ。だれが?』

『それが、斬ったのも安芸山小兵衛さんなの……?』

『はーー?』

 最初何を言ってるのか解らなかったがまあ冷静に考えてみればすぐわかる事だった。

「どうやら、クローンかなんか、そんなもんだろうな」

 説明してやると後部席の二人もああ、そうか、といった感じで納得した。

『解ると思うけど、敵はかなり精巧なクローンを作る技術も持ってるみたいなのよ』

『かなり精巧って、どれくらいだ、見ても見分けがつかないって事か?」

『一見しただけではね』

『それなら素行が悪くって狂暴な方が本物だな』

『それもあるわ。でも、多分だけど、クローンの方は成長促進剤か何かで急速に造られていると思うの、同じ素養を持つ体のはずなんだけど、剣術では本物には、全然かなわなかったわ』

『ほんとに勝った方が本物か?クローンの方が若くて強いって可能性もあるぞ』

『それは私も思ったけど、橘さんや東垣弥五郎さんが、斬られた方が偽物だって言ってるわ。だから間違いないわ』

『あ、そうだな、あの人たちが言うならまあ、間違いないだろうな』

 逆に言えば、それほどよく似てて、付き合いの短いエスメラルダだと、本物と偽物の判別できなかったって事になる。

『他にも大破傘踏襲さんや、金太郎侍さんや、速乙女門戸介さんや、銭亀幣次さんや、近山菌脂漏さんや、いろいろ出てきて今戦闘中なの』

 なんなんだそれ、聞いたことない名前だ、なんか仲間増えてるが……。

『すまないが、それ、前にちょろっと言ってた、安芸山小兵衛のあちこち旅して出会ったって奴らの事なのか?』

『あ、ごめんなさい、あの後そんな感じの一行が到着して、なぜか突然宴会を始めたかと思うと、そこに安芸山小兵衛さんの偽物が来て。それを本物が斬って、それがついさっきで、そのあとつい今しがた、仲間の偽物が来て』

 偽物を作るにしても、本物の行動データーとか、それにホムンクルスは知らないけど、クローンだと遺伝子情報とかが必要なはずだ、その連中その情報をどっかで抜き取られてるんだぞ、いったいどんな不用心な生活したらそうなるんだ?

『なるほどな、つまりエスメラルダも何が何だかわかんない中、緊急で連絡してきてくれたってわけか』

『そうなのよ』

 巻き込まれていないだろうなって少し心配になってきた。

 安芸山小兵衛を始めとして、相当の手練れぞろいだ、クローンといえどもそれに肉薄するものと思っていいだろう。

 勿論、エスメラルダは敏捷で勘もよく、年齢の割には強いほうの部類に入っている。

 しかし、あの、鬼より怖いを地で行くというか、本当に鬼を見かけたら切りかかっていって、圧倒するような連中と比べると……。

『で、斬り合いのさなか、大丈夫なのか?』

『橘さん達が守ってくれて……あ』

『どうしたんだ?』

『橘さんが怪我したわ、ごめん、一旦ここまでで』

 文面からして現場は相当混乱してるって事がわかるな……。

「読んだな、お前ら。こりゃ、急いで帰らないといけないぞ。シートベルトはしっかり締めてるな」

「だ、大丈夫、締めてる」

 後部席を振り返ってる間はないが、ハインツルドルフもこんな場面で嘘は言わないだろうということで、ハンビーの操縦を自動から主導に切り替えた。

 ハンドルを握り、アクセルを強く踏む。

 非舗装の土の道だったので、リミテッド・デフにもかかわらず、四輪全てがホイールスピンを起こし、激しく土煙を巻き上げる。

 アクセルペダルを少しだけ緩めると、地面をしっかりととらえたのか、逆にスピードが乗り始める。

 ガッと、まるで後ろから押されるような加速でハンビーは進んだが、不整路をとらえきれず車輪は不規則に跳ねる。

 ハンドルを切って曲がるときには後輪は激しく横滑りし、土砂を跳ね上げた。

「ちょ、ちょっと、揺れすぎるよーー」

 グスタフイワノフが愚痴か文句を言ったが、それどころじゃない。

「安芸山小兵衛とその仲間は知らんが、橘右近とエスメラルダが心配だ、急ぐぞ」

「ね、ね、ねえ、プローブドローンの画像、一回確かめてみようよ」

 

 

 

 

 


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