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ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。

 

こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。

 

但し、まだ制作中の部分も多々あります。

 

こちらは ↓ Wikiへのリンクです。

 

 

 

 

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 その暗い中、木々や枝葉を揺する音とは明らかに違う規則正しい、反復音がかすかに周囲の藪のなか、響いてきた。

 さっさっさ、という軽いが規則正しいゆえに気味悪い音……。

「え、馬鹿野郎、小豆洗いじゃないか、紛らわしい!真昼間から出てくるな!」

「ひえーー、すみませーーん」

 俺の持ってる護符のご神気を恐れて、気付くと一目散に逃げて行った

 

 

 

 薄汚れた羽織を纏った小柄な初老の男性型妖怪が、ざるに入った小豆を抱えながら去っていくのを目で追う。

 しかし、小豆洗いがいるって事は、水源があるってことだ。

 見た限り周囲は昼なお暗い木立に囲まれた藪の中。

 確かに陽の届かない大地は湿っており、ぬかるんではいるが、それは以前降った雨が乾いていないからだ。

 小豆洗いは主に人の気になる規則的な音を立てて呼び込み、川に落としてしまうという悪事を働くのが主だ。

 だが、どう見てもこのあたりに川は見当たらない、という事は地下水脈か何かがあるという事になる。

 鍾乳洞があるのだ、地下水脈があるのはもちろんのことかもしれないが、それを認識していると、潜入や脱出の際に何かの役に立つかもしれない。

 あった、小豆洗いがいたあたりを少し見回しただけで、湧き水が噴き出してきている細い水の流れを見つけることができた。

 さて、小豆洗いは人を呼び込んで川等に落とすということなので、つまるところ、このあたりに人の往来があるという事だ。

 主な出入り口ではなさそうな雰囲気だから、隠れた、もしくは通用口のようなものがあるとみていいか。

 モバイルデバイスを見てみるが、怖れていた事が起きている。

 電磁波障害か何かで満足に起動しないのだ。

 こうなることは予想していて、方角の目星となるものはしっかりと見つけているし、どれくらいの速度でどれくらい歩けばどれくらいの距離を移動したか、という事を把握する訓練も積んである。

 その感覚から行けば、鍾乳洞への入り口にはまだ少しだけ距離があるが、地下ではこのあたりとつながった部分もあるという事なんだろう。

 残念ながらこの場付近で入り口は見つからなかったのであきらめて、エスメラルダが多分ここだろうと見つけてくれた入り口と思われるところを探してみる。

 鬼の腕の移動痕跡を追跡し、突然感覚がぐっと鈍ったあたりらしいから、そこから鍾乳洞に入ったという可能性は非常に高い。

 何らかの結界が張ってあり、その中に入ったという可能性もあるが、付近は鍾乳洞窟なので、前者の可能性の方が高い。

 潜入の際に大事なことは、脱出経路の確保だ。

 ハンビーで迎えに来てもらうには、少なくとも車幅を確保できる道を、ある程度見つけておかないといけない。

 細い木の多少の藪や雑草くらいは、平気で切り開いて進んでくれるが、大きな木が生え茂っていたら通れない。鍾乳洞までの道で、可能な限り近くまで来てもらえるよう、なんとかそれらしい経路も見つけておく。

 まてよ、モバイルデバイスが使えない、という事は、ハンビーの自動操縦システムが無事に機能してくれるのか、わかったものじゃないじゃないか?

 そうなったとき、セミオートでどれだけのことができるのかは、全く分からない。

 ハインツルドルフとグスタフイワノフの二人に、どれだけの操縦技術があるのかも、全く把握していないのだ。VRシステムとかがあるって聞いていたが、操縦訓練をしていてくれているとも聞いた事があるので、其れに賭けるしかない。

 もういい、今は車で来ることができる、道なき道を進み、たとえ藪をへし折ってでも、最大限鍾乳洞への入り口近くに来ることができる経路を、可能な限り正確に見つけておくことに専念する。

 ただ、気を付けなくてはいけないのは、地下水脈がある事等も考えて、重量のある車が通った途端に道が陥没したりしないかという事だ。

 それについてはどうやって調べればいいのか、今のところはわからない。歩いててその雰囲気で大丈夫だと考える以外に無いかもしれない。

 鍾乳洞はたいがい、石灰岩が雨水や地下水に長い年月さらされることによって、出来上がる。主にアルカリ性の水で、石灰岩が少しづつ溶けていくのだが、それこそ気の遠くなるような長い時間をかけて生成されている。

 その出来上がりは様々だが、不規則、規則的を問わず、自然のなしたる妙に魅了されて、時には信仰の対象になったりする場合もあるほどなのだそうだ。

 それよりも、入り口を見ただけではほぼ何もわからず、入って見ないと中がどうなっているのかすら分からないところが怖い。

 なにせ、敵の本拠地もしくは最重要拠点と思われるところだ、数も武装も整ってると考えて間違いないだろう。

 大量のアヘンの動き、ホムンクルスの製造に不可欠な成長促進剤の原料、動き出した河童の干した体、それに今回持ち込まれている鬼の腕。

 全く分からないのだ。

 ホムンクルス製造の成長促進剤を作る『ほおの木』なるものの新芽、これから大量生産する為なら幾らでも必要になりそうなのに、何故か自分たちで産地でもめ事を起こし、採取を難しくさせたりしている。

 だからといって、要らないのかといえば、こちらが値上げを迫った時、それでもほしいといった対応をした。

 いるのか要らないのかどっちなんだといえば、欲しがっているようで、あえて考えるなら、敵は一枚岩ではなく、ホムンクルスを大量生産したがっている派閥と、そうでない派閥が対立しているように見える。

 帝国の軍事力は絶大で、もし本気でもめ事を起こそうと考えていたりするならば、戦力であるホムンクルスを作るのを邪魔する理由などあるわけがないのだ。

 無理に考えれば、『ほおの木』を使った成長促進剤で作ったホムンクルスに異常が起き、『鬼の腕』から新たに何かを見つけ出して、それを使って行くために生産ラインを切り替えようとしているのではないか?って事だが、それも勝手な仮説でしかない。

 それに、『鬼の腕』は、今回初めて手に入れることができたはずだ。

 それを手に入れることが出来る以前に、代替品があるのかどうかは判らないが、あれだけほしがってる『ほおの木』の供給源を自ら断とうとしたのは、全くと言っていい程、腑に落ちない。

 

 

 

 

 


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