ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。
こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。
但し、まだ制作中の部分も多々あります。
こちらは ↓ Wikiへのリンクです。
このQRコード ↓ によりWiki版に移動できます。
「幕閣は隠したがってる。利益なんか二の次なんだ、情報自体を隠したがってる。それなのに上層部の役人はその利益欲しさに、横領を人のせいにするために、取引自体を表に出そうとしているんだ」
「なにそれ、ややこしすぎるわよ……」
「そうだ、横領した連中は幕閣を陰で操ってる組織に消されるだろう。しかし、俺たちが知りたがってる重要な情報について、ある程度その幕閣中央の低俗な連中が知ってるはずなんだ」
「え、なんてことなの?幕閣だか、それを操ってる組織だかが、その役人どもに刺客を差し向けるけど、私たちが情報を掴むまで、その連中を助けなきゃいけないってことになっちゃうんじゃないの?」
「そうなってしまう可能性大だ」
「あのーー、今のところ幕閣がどういう動きをしているかなんか、全然わかってないわよね」
「今のところはな。とりあえず今のところ頼みたいことは、その幕閣上層部の役人、勘定奉行とかがぐるになって、その罪を押し付けるために作った罪状の書類だ」
「わかったわ。あいつらのせいでまだだけど、おおよそどこにあるか見当ついてるから」
あいつらというのはハインツルドルフとグスタフイワノフだろう。
「さすがだ。見付けたらプローブドローンに読み込ませて、帝国情報部に送ってくれ」
「ええ。これだけでも相当の情報のはずよ……ちょ、ちょっと待って……」
エスメラルダは、突然慌て声を上げた。
「どうした?」
「煙の臭いに音、か、火事よ」
「奉行所がか?やられたな、それより早く逃げるんだ」
「大丈夫よ、ここから少し離れた蔵っていうか、書庫みたいな所が火の元だけど……」
「なんでもいい、火の周りは早いぞ」
「ちがうの、私が、その罪状とかの書類があるって目をつけてたところなの」
「しまった、やられたか」
「ええ、離れになってて、他の建物の方に火の手が及ぶことはないと思うけど」
「しかし、なんで今なんだ?さっきの火災の時のごたごたにまみれた方が……いや、奉行所は火の手から離れてるか」
「なんにせよ、書類は燃えちゃってるわね」
「幕閣からの調べが入るこって、そういった情報を何らかの形で掴んで、急いで燃やしたって考えるしかできないな」
かなり無理があるが、どうせ燃やすなら近所で火災があった同じ夜にしようってところか?
「あ、奉行所の隣の、書庫のある当たりの道を超えたところが燃えてる……」
「奉行所が火をつけたな。見てくれ、偶然にも大名火消が破壊消火をしてるはずだ」
「解ったわ……あ、その通りよ」
「やっぱりか。しかしどうしようもない治安だな。もういい、こうなったら、人がいない時を見計らって、燃えた蔵だか書庫だかの近くに、【罪状を示したる書面頂戴仕った。女鼠小僧】とでも書いて残しておいてやれ」
そういうとエスメラルダが少し笑う声が聞こえた。
「わかったわ。でもその時の顔がみものね」
「ああ。それより、さっき言ってたあいつらだが」
「あ、わすれてたわ。グスタフイワノフ達の事ね」
「そうだ。俺の知らないところで、美人のおねえさん。ってのが登場してるんだろ、どうせ」
「情けないけどその通りよ。でも、それに至るまでの経緯は、まあ、一応評価してやってもいいわ」
「もしかして、不細工な悪代官がうら若き女性をかどわかすってやつか?」
この場合の悪代官は悪くて地位のある役人の総称だ。
「そうよ、解るわよね、あの連中のすることくらい」
「しかし、今解ってる限りでは、蟄居閉門を言い渡されてるのは橘右門丞って人で、その子息と会ったんだが、女性の話は出ていなかったぞ」
「あ、やっぱりね、そうよ、その橘家というのが罪を押し付けられた家よ」
「その辺は間違いないか。ってことは、再息話した時に、その話題が出る前に分かれてしまったのかな?」
「その橘家に、幾つなのかわからないけど、今良家に行儀見習いに出ている娘さんがいて、その娘を……」
「わーー、えらいこっちゃ、悪代官がなにぞ便宜を取り計らう事と引き換えにその娘をって算段じゃなかったか?」
「そんな感じだったわ」
「なんて、なんて悪代官してるんだ!じゃない、おそらくは行儀見習い先から戻らされて悪代官に差し出されるんだろう」
「その通りよ、それ聞いてあの二人が」
「俺はハインツルドルフ達と急いで合流することにする。おそらくだが、その娘は悪代官と刺し違える気だ……」
「そ、そうなの?何か確証があるのね」
「橘家の若頭首と手練れの共侍が、勘定奉行外堀檄畿(そとほりげき)に切り込んで討ち死に覚悟で一太刀浴びせる算段だったんだが、寸でで止めたんだ」
「なんなの、そのもろ悪代官な名前、勘定奉行外堀檄畿だったっけ」
「ああ、俺も同じこと言った。いやそれはいい、それにしてもだ、橘家の者が無謀な事をすると思ってたが、そういう事だったんだ」
「おそらくは、その時は警戒が緩むと思って、討ち入ろうとしてたのね」
「ああ、しかし討ち入りは俺が止めたんだ。だがこのままじゃ、その娘が悪代官を刺してしまうぞ」