ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。
こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。
但し、まだ制作中の部分も多々あります。
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第438話
「立体フォログラムですが私の方は使用しておりませんし用意も出来ておりません仮にあったといたしましても白昼堂々とあのようなリアルな映像を投影することなど不可能であったと思われます」
「へ、何だって……?」
素っ頓狂な声を上げてしまった。
「話をまとめさせていただきますと私は実際に立体映像を投影しておらず貴方様は幻術を使っていらっしゃらないと言われております私どもアンドロイドに嘘を言う能力が著しくかけているというのはご存じのとおりです」
なにをいってんだ……こいつ……。
「だからさっきまでお前の投影した立体フォログラムと、色々やり取りしてだな」
「ですのでシャトルのフォログラム投影システムの完成は早くても夕方前になりますので今現在使用はおろか準備も出来ておりませんので貴方様の幻術かと思ってておりました次第でございます」
「それならさっきまで俺が話してたのは何なんだ?」
「解らないので先程話をまとめて申しあげたのです」
「では、ハインツルドルフ達か?」
違うのは解っているが、そういわないと、確かめてみないと……。
しばらくすると、別回線から返事があった。
「僕ら、そんなことしてないし、それに、出来ないよ。プロジェクターとかもないし」
「そこまでの経緯から推測いたしますと答えは一つとなりますが……」
「わ~~わ~~わ~~、言うな、言うな、言うな!」
V5の言わんとしていることを遮った。
そうだよ、答えは一つとなりますよ……。
V5やハインツルドルフ達との回線を切ることもすっかり忘れて、気が付けばとぼとぼと、後ろに固まって控えてる伍平達の方に、歩いて戻っていた。
ある者は上を向き、ある者は下を向き、またある者はあらぬ方向を見て……共通しているのは皆が皆、地面にすっかり座り込み、呆けてしまっているということだ。
実は俺の方もかなり呆けてしまってるんだが、足取りもおぼつかないままにも、歩けているだけこいつらよりましか。
そこに座り込んでる連中が、気付いたのか、続々と俺の顔を見つめ始める。
「あ……あ……あ……大酋長~~ぉ~~」
伍平の、俺の方に向かいたいのだが、完全に腰が抜けて動くことも出来ない、情けない体から、息を必死に絞るような、細く弱弱しい声が聞こえた。
俺も近づいていく。余裕しゃくしゃくに見えるが、断じて違う。何をして何を言っていいかわからないだけだ。
「おまえら、聞いたな」
耳から聞こえていたのか、意識に直接語り掛けていたのか、今となっては解らない。
多分後者だろうと思うが……。
「へ、へぇ、たしかに、あっしら……聞きやした……なあ、てめぇらも、しっかりきいたんだよな」
座り込んでる連中共が、がくがくと首を振って頷いた。
「お前らだけでなく、あの向こうの方にいる奴ら全員にも、聞こえていただろうな」
よく考えたら伍平達が暴れだしたから、こうなっちまったのだが、結果的に良かったのか悪かったのか……。
「へ、へぇ、あれだけ大きなこえですんで、皆に聞こえたと思いやす」
「だろうな。いいか、俺は大酋長として、お前らを代表して約束をしたんだ。それを破るとどうなるか、わかるな」
「へ、へぇ」
そこに座って見えている限りの連中は、皆して怖れをなしている。
集落の連中、シロガネーゼ、ネアンデルタール人、全部だ。
「ってわけだ。争ってる場合なんかじゃあないぞ。ところで、だれでもいい、特に白人(ネアンデルタール人)と戦ったりして、接触が多かった奴とかに、片言でもいいから、あいつらの言葉がわかるやつはいるか?」
それを聞いた伍平が、左右を見渡した。
「これだけいるんでぇ、あちら側の皆に聞きゃ、もしかしたら、解るもんもおりやすかもしれやせんが、あんまりあてにしないでくだせぇ」
「本当に少しでもいいんだが、難しそうか」
「昔、聞いた話になりやすが、神父様が布教に行きなさりやしたそうなんっすが、だいぶ長く一緒にいたんっすが、全然ってぇほど、言葉が通じず、困ってやしたんでさぁ。解ったことは、右、とか、左、とか、喰う、とか、行く、とか、木、とか、空、とか、そういったものくらいだったそうで」
だろうな……。
「しかし、あいつらの中にも、指導者みたいなのがいて、全員を率いて、遠路はるばる移動して来てるんだぞ、言葉なしでそれが出来るわけはない」
おそらくは全身整形で、ネアンデルタール人に化けたホムンクルスだろうが、どうやってこいつらを率いてきたんだ?
「へぇ、帰ってもらわねぇと、神の御使いのだいだらぼっち様との約束が果たせねぇで、ここの皆、殺されちまいやすんですぜ」
そ……そういえば、俺が交渉の為前にいた時……顔の横すれすれに、なんかビームみたいなもんが来たが……V5の作った映像だと思い込んでたから、避けも恐れもしなかったけど、あれって、当たってたら死んでたんじゃないのか?
とんでもないじゃないか……今頃震えが来た!
「だからこそ、話して帰ってもらわないといけないんだ……」
どうすればいいんだと、途方に暮れかけてたが、そこにいる十数名の代表として来ていたネアンデルタール人を見てると、もしかして期待が持てそうだった。
自然とともに暮らし、その脅威を間近に感じているゆえに、神の御使いであるだいだらぼっちのその姿を目の当たりにして、逆らおうはずはなかったのだ。
ゼスチャーというほど大げさなものではないが、簡単な身振り手振りで、帰りたいといった感じの意思を示している。
「帰りたい、のか?」
俺は、限りなく遠く、おそらくはネアンデルタール人たちが、はるばる旅してきたであろう方角を指さし、ゆっくりといった。
もしかしたらだいだらぼっちは、ネアンデルタール人の意識にも直接語り掛けていたのかもしれない。