ブログ連載一周年を記念し、ストーリーのまとめの為Wikiを制作しました。
こちらをご覧になれば、あらすじ等の理解に役立ちます。
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第383話
「まあ、気楽にしなよ。さっきも言ったように、先に大人数で仕掛けてきたお前らを縛り上げるでもない、痛めつけるでもない、紳士的に話してやってんのは、これからの大事な引相手として見てやってるつもりだからなんだ」
どう聞けばいいんだろう、単純な頭の奴になればなるほど、誘導とかは効かなくなる。正攻法で聞くにはこちらの持ってる情報は少なすぎる。
「ところで、一回目の花の刈り入れは無事ひと段落ついたようだな」
芥子の実のことだ。この話題は微妙かもしれないが、腫物みたいに扱い続けるわけにもいかない。
「へぇ、早咲きの畑何枚か、無事咲き終えやして、身から出る汁をた~~んと集めて、今女どもが町までうりに持ってってやすぁ」
なんだ、意外に普通に答えたぞ。
こりゃ、本当にあの芥子の花の後にできる芥子坊主から採った汁が、生アヘンになってとかいうからくり、全然しらないのか。
「おっと、俺たちはあの花の汁を買いに来たんじゃねえからな。あいつは先に買う人が決まってるってしろもんだ、商売仁義に反することはしねえ」
筋を通すが裏に一物隠していそうな裏世界の商売人をうまく演じられているだろうか。
「へえ。あっしらもあれは毎年良い値で買ってもらってる手前……」
「さっき言ったように、あれとは違うもんを買い付けてえってわけよ」
「てぇいいやすと?うちにほかに扱えるものってぇと、せいぜいキノコか毛皮くらいになりやすが?」
おい、キノコってなんだよ?
松茸や木耳じゃないような気がするが、あえて無視することにしよう。
「キノコや毛皮なら、ほかでいくらでも手に入る。ここまで来たには、わかるだろ?」
ほかでいくらでも手に入るかどうかなんかしらん。
「さぁ、なんでしょうね。草とか葉っぱとか言われてるもんを、時々行商人が買いに来るんで、山で採ってきてやって、売ることはありやすが」
おい、そんなもんまで自生してんのか……いや、知らぬとはいえ堂々と芥子を栽培してる連中の住んでるところだ、それくらいは……。
「それでもないな」
「山三つ超えたところ……あ、そこもうちの村のもんなんすが、そこにある山に昔々、調べもんする人が来たって、ひい爺さんが言ってやしたんですが、あそこは、人が長いこといたら、それだけで鼻血がでやすぜ」
どんなとこなんだ~~ウランか?核融合以前の時代に、核廃棄物埋めたか?
「あっしらが言うのもなんなんですが、あの辺は近寄らん方がいいと思いやすよ」
別の、土間に座った男がいった。当たり前だ、防護服なしで近寄れるか!
「あの辺のキノコは獣も喰わんのですが、喰った人間は、バケモンになるとか、生まれてきた子供が怪物だとか」
獣は喰わんが人間は喰うんか!
「そうそう、夜になると出くわすんっすよ」
「熊をバリバリ喰っちまうとか」
お前らも似たようなもんだろう!
とか考えたが、こいつらの言っていることを、まじめに聞いて、ちょっと深く考えると……あれだよ、つまり……。
「5メートル以上あるとか、体が光ってるとか、目が三つも四つもあるとか」
「頭が二つとも聞いたことあるんっすが」
「いんや、手が八本あるって」
勝手に裏付けのない噂話を各々勝手にしゃべりだしたが、こいつらの言うことをまあ、話半分以下で聞くとしても、それって、人間を改造しているか、人口生命体を作ってるのかって風に聞けなくないんだが。
そういえばデーターアンドロイドが、同型のアンドロイドの腕をボディーに装着すれば、四本腕になるとか、冗談なのか本気なのか解らないことを言ってたことがあったが、絶対にそれとは違うものだろうな。
「で、その5メートル以上あって手が八本、頭が二つで目が三つも四つもあるバケモンを見たことのあるやつは誰だ?」
前にいる十六人は、互いに顔を見合って、答えあぐねているようだった。
「隣村の甚六の爺さんが山で出会ったって」
「うちのひいばあさんが山菜取りに行ったとき見たとかいっとりやした」
その後も何件か目撃談が続くのだが、どれもこれも似通った感じの、本気にできるような話とは程遠いものだった。
「では、もう一度確認させてもらうが、山三つ超えた向こう側にいくと、何もしてないのに鼻血が出たり、体調が悪くなったりすることがあるってことだな」
「へい、山三つ程超えた向こうでガス」
山三つが山三つ程になった……これはえらいことかもしれない……こいつらの頭だと、三以上の数はあやふやで、ただ単に多くを現す概念となってるのかもしれないからだ。
判断が難しくなってきた。聞き逃してはいけないような気もしなくはない話だが、急いで調べるべきなのか、それともホムンクルス製造原料の流れを追うのが先決で、後回しにしても仕方ない話なのか。
後者だな……人口生命体の何かしらの実験が行われている可能性もある。
情報部が惑星白金潜入の最初の地としてここを選んだのも、明記こそされてはいなかったが、この話に関連していそうな感じだ。
しかし、追うべきはそればかりではない、最初からの目的通りホムンクルス製造原料を追うのが先決だろう。今のところただ、真の目的を秘匿する材料の一つくらいにはさせてもらうことにするか。
「まあ、そのさっきいった山の向こうには、近寄らない方がよさそうだな。バケモンはともかくとして、いきなり鼻血が出始めて、体調が崩れるなんてとこにゃ、近寄らねえほうが無難だ」
さっきから連中の話を聞いているが、人がいなくなった、つまりさらわれて実験台にされたとかいったものでもなさそうだ。あれば神隠しがどうのこうのとか、もう少しばかり具体的に言ってるだろう。
「へえ、あっしらもあの辺には近寄らないようにしてるんでさぁ」
伍平が、小屋の外を少し気にしているのがわかった。
来たようだな、集落の男は16人だけではない、もう何人かいた。そして俺たちと仲間が交戦するのを陰で見張っていて、敗色濃厚となった時、走って誰かのところに行ってたのだ。
こういう時のための人物がいて、応援を呼びに行ってたってことだ。