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第323話

 

 

「そう……私たちは虐げられて世の片隅で細々と生きていくんです。でも、こんな私ですが、いないと貴方方の求めている秘宝の秘密は解りませんよ。確かなのは私の協力無くしては、秘宝を持ってたところで、それこそまさしく宝の持ち腐れになるという事ですね。何せ私は秘宝に招かれしものですので」

「さっき趣味の覗きで女の人の声がするから、魔法陣を覗いたと言っただろうが」

「しまった、大人の女の声などに反応した、恥ずべき過去が」

「そっちかい!」

 

 

 

 またもや息が荒くなってる俺に、白兎が耳打ちするかのように話しかけてきた。

「ねえ、あんまり興奮すると、痔に悪いよ。それに、紙一重だけど、古文書を解析して自分をアンデッド化したり、結構こいつやりてかもしれないんだよ。もしかしたら、本当に協力なくしては秘宝も……」

「そうだった、時限式爆裂デンジャラス無花果をなだめなだめやり過ごさないといけないんだ」

「爆裂起こしたら、また最初っからやり直しなんだよ」

「いや、そ、それよりも、早くも興奮したからか、薬の効果が早く出始めたのかもしれん、予定よりずっと早く痛みが」

「な、なんて言っていいか、わかんないよ~~」

「なんで俺、痔のコントロールをしながら、こんな紙一重あっち系のオヤジと、こんな重要そうな交渉事しないとならないんだ?」

「僕にもなんでこうなったのか?ただ、助ける力が有るのに、あと6時間か7時間は助けられないもどかしさも、あるって事はわかってよ」

「『艱難汝を玉にす』ってやつか?」

「玉のように飛び出した爆裂無花果をなだめコントロールするのが艱難なの?」

「もう、いい……痛みが少しずつ……もちろん6時間待つという手もある。しかし……その間俺はまともに動けない。このオッサンがその間にエスメラルダにちょっかい出しに行けば、何回か殺された後、元素分解されてしまうぞ。ハインツルドルフやV5ではエスメラルダを止められないだろうからな」

「あらら……その件、僕も自信ないから。急いで、なんとかしないと。がんばってね」

 結局トレンチコート露出親父、基、考古学者成れの果てアンデッドとうまく交渉して、秘宝の使い方を聞き出す役目迄、いつの間にやら負ってしまったのだった。

「で、どうやったらその、秘宝の使い方とかそういったことを教えてもらえるんだ?」

 トレンチコート露出親父……いや、露出男か……に聞いてみた。

「そりゃ、わたしの望みと言ったら、エスメラルダちゃんに情け容赦なく責められ殴られる事に決まってるじゃないですか」

 ぐおぉ~~痛みが発生し始めて!おちつくんだ。

「そんな事頼んだりしてみろ、お前は元素分解されちゃうんだぞ、こっちは秘宝の使い方を聞き損ねてな」

「私はあの子に殴られたい、貴方方は秘宝の使い方を知りたい、そういうことでしょう?」

 簡単そうに言うなよ……。

「なあ、キャディーさん、フェアウエイで凄く強いつむじ風がビュンビュン吹き回ってるのに、ホールインワンさせなきゃいけないんだが、どのクラブつかって、どう打てばいいんだ?」

「えぇ、僕?わかんないよ~~難し過ぎるも~~ん」

 白兎に振ったが聞くの可哀そうすぎる気もした。こっちはもっと大変なんだが。

「さあ、どうするんです?本当に秘宝の使い方を聞き出したいんですか?」

 なんか、オッサンの態度が微妙にデカくなりつつある気がするが?

「あのな、俺ならエスメラルダを宥められるかもしれない。しかし、諸般の事情でしばらく動きが取れなくなる。となると、ここにいる白兎をはじめとしてV5にいたるまで総がかりでも宥められないだろう。お前が元素分解されようと知ったこっちゃないが、秘宝の使い方が」

「それなら大丈夫、専門の研究者だった私が自信もって言います。あの秘宝の使い方の解析が出来るのようになるには、専門の知識を持った学者が長い時間かけてやらないと無理。わたしこれでもアンデッドになってからあの場にいて、他にする事も無かったので、起きてる時は秘宝を結構長い事研究しまして、それで使い方解ったんですよ」

「う……これでこのオッサンがこんな性格じゃなかったら……」

「だから、オッサンじゃなく29ですって」

「29プラスアンデッドになってからの年月だろうに。で、そんなトレンチコート一枚で考古学とか秘宝の研究って」

「アンデッドになるより、遥かに昔っからの癖で、こういういつでも丸出しに出来る格好をしていないと、全然頭が働かなかったんですよ」

「な、なんという筋金入り。どうしろってんだ、ぐおぉ~~、予定より早く痛みが……」

 椅子に座ってるんだが、簡易椅子の硬さすらも辛くなってきた。だめだ、隣の白兎にもたれよう。

「だ、大丈夫?苦しみに耐えながらアイデアを捻り出さないといけない締め切り前の漫画家みたいに悲惨だけど」

 倒れそうな俺の体を支えて心配そうに言ってくれた。すまん白兎。

「プラス、漫画家がこんな症状で苦しんでたら、間違いなく、先生急病のため休載いたします、だな」

「え~~ん、なんのかんので手術終わったみたいだから、ヒーリングに行ってくるね。そしたらベッド開くから、そこで寝ててよ~~」

 白兎はなんのかんので予定より早く終わった、口裂け女さんの手術の仕上げのヒーリングに行った。鎌で切り裂かれた唇の両端、頬を手術でつないで、ヒーリングで傷迄消したら、その後どう呼ぶのかなんか、今は考えてる余裕ない。

「わかった、ベッドが空くんだな」

 う……うつ伏せに寝たい……ぐおぉ~~。

「あ、麻酔が効いててまだしばらく目覚めないみたい。下にマット敷いて、そこに動かして寝ててもらおうって……麻酔効いて眠ってる人の体って重いよ~~」

 どうも白兎はベッドを開ける為に、マットを敷いてそちらに移そうとしているようだが、俺がマットで寝ても構わないんだぞ。

「私は手伝いませんよ。成人した女に興味なんかないから」

 このオッサン、元素分解した方が絶対世の為人の為になるんだが……。

「なんとか、ベッド開けたよ~~今そっち行くから」

 相当苦労してベッドを開けてくれたらしい白兎は、すぐに俺の方に来て、肩を貸してくれた。細く小さく力も無い白兎に支えてもらって歩くんだが、足を少し動かすたび、激痛が走る。歯を食いしばる。少しの振動でもビンビン響く。青筋が浮いてるかもしれない。脂汗が宇宙服の中いっぱいに流れようとしている。

 時限式爆裂デンジャラス無花果とまで成長していないが、それでこの苦しみだ、後数十分後にはどうなってるんだ?

 

 

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