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第321話

 

 

 俺の事を高く評価してくれるのはありがたいんだが……それと、宇宙船の修理にアセチレンバーナー使うんだったのか。確かにレーザー溶接とかあるがあれは工業ロボットの専門っぽいしな。

「もういいから、時間は貴重だ、そいつら手伝わせて、V5と一緒にシャトルの修理を頼むぞ」

 終始付かん。なんて言えばいいんだ?

 

 

「だめよ、あまやかしちゃ。覚えてるでしょ、アンデッドって、ろくな奴じゃないのよ、未成熟な女の子が大好きなのよ、社会の敵、害悪なのよ」

「そ、そうだった~~、前の任務の時、雑魚は知らないが幹部クラスの骸骨男や狼男を始めとして、特にそれに輪をかけて、首領の吸血鬼は!」

 と、その時ミイラ男とはまた別の、もしかしたらとんでもない事になるかもしれない事態がある事を、思い出してしまった。

 言葉に出さず白兎にそっと目配せをした。

 白兎の方も何が言いたいのか解ってくれたらしい。

「いいかエスメラルダ、今この人手が足りない中、力のありそうな男4人をそろえてきたんだ、後はそいつらをうまく使って、シャトル修理の任務をV5とやり遂げるんだ。これが君の成長と進歩に繋がるんだ、頑張っててくれ、俺達は別の事をしないといけない」

 なんか汎用性の利くリーダーらしい事を言って納得させて、急いでることがばれないように、しかし可能な限り手早く、その場を離れた。

 残る二人のアンデッドだ。

 レインコート露出親父、こんなのをエスメラルダに見せたら、燃料投入になりかねん。いや、燃料どころかナパームオイル投入だ。

「エスメラルダがナパームのごとく怒り出す前に、こいつを別のとこに連れて行って何とかしないといけない。しかし、この俺はあと50分ほどで例のポール・マッキー7という未承認の危険な薬の効果が体に現れ、本日何度目かの極めつけの不調状態に陥ることが確定しているのだ。一度目の不調、そして次に予定されている不調も、あまりに情けないので口に出したくもない。

「ねえ、メディカルテントに案内したらいいんだよね」

 解り切ったことを白々しく無いトーンで切り出しながら、白兎が先導してアンデッド二人、口裂け女とトレンチコート露出親父をシャトルから少しだけ離れた、シールド内に設置されたメディカルテントの中に案内した。

 俺が帰ってきて、ヒーリングを受けても、傷こそ治れど精神的ショック等で体調が戻らなかったりしたときの為に、一応用意されていた高さ3メートル程の白いドーム型テントだ。直径は6メートルってとこか。

 ふう、やっとアンデッド二人をドームテントの中に案内できた。ドーム天井部備え付けのライトでなかは十分に明るい。最低限で簡易版ながら高性能の戦場用メディカルキットがきれいに並べられている。多分俺の為にエスメラルダ達が用意してくれてたんだろう。

「白兎、まず女の人の治療から先にしよう」

「うん。え~~っと、ここに帝国の最新鋭メディカルマシーンが有って、それを使っての治療なんだけど、貴女の唇の左右、昔鎌で切り裂かれた部分を、外科的手術でつなぎ合わせて、それに合わせて、僕のヒーリングで、完全につなぎ合わせよっかなって思てるんだ。もちろん麻酔もするから痛くないし、傷とかも残らないから安心してね」

「え……?」

 連れてこられて何をされるのかと、少々怯えていた口裂け女は、少々戸惑ってたが、すぐに自分に良い話だと理解してくれたようだ。

 簡易ベッドはビニールで包まれている。この中に空気を送り込むと、ベッドを包む小さな風船ドームになって、中で簡易手術を行えるのだ。ベッドの脇には救急箱大で、二本のメカアームが付いた、メディカルマシーンが置いてる。

「解りやすく言えば、頬の部分を傷も何もなく張り合わすって事だ」

 俺が言ったのは、口裂け女が、口裂けでなくなるという事なんだが、たぶん女性としてはその方がいいかなと思ったのだ。

「そんなこと……していただけるのでしたら……お願いします」

「心配ないよ、それほど難しい手術じゃないし、ヒーリングも併用するから。充分に考える時間とか与えないで悪いと思ってるけど」

 充分に考える時間を与えないのは、ポール・マッキー7の効果があと45分少々で現れるからだ。それまでに手術を終えて一つしかないベッドを替わってもらいたいというのがほんとの所だ。

 説明責任?戦場の最前線という事で……。

「いえ、私に依存は有りません」

 それはよかった。手術は精々20分かそこらで済むはずだ。ポール・マッキー7の効果が表れ始めたら俺がベッドで寝ていたい。というか寝てるというよりもがき苦しんで、特大の突出した直腸が爆裂を起こしたら、緊急ヒーリングを受けたい。

「じゃ、メディカルマシーンが手術してくれて、それが終わったらヒーリングするからね。痛くも苦しくも無いから、そのベッドに横になって」

 白兎はベッドを包むビニールについているファスナーを開け、中に案内した。

 本当は局所麻酔で充分なんだが、これからトレンチコート露出親父との、おそらくはアホな会話になる者を聞かせるのも何なので、全身麻酔で眠ってもらう事にする。

 ベッド周囲のビニールに送風がなされ、手術用の風船ドームが出来上がった。

「わかりました。なぜか……あなた方が信用できる方だというのが、解るんです」

 それから白兎は、メディカルマシーンに命じて、麻酔から手術に至る過程をボイスコマンドでプログラムした。

「じゃ、ベッドに横になってね。あ、すぐに麻酔がきくけど、目覚めたら終わってるからね」

 白兎がそういい終わる前に、彼女はベッドで麻酔の眠りに入っていた。

「手術終了まで15分です」

 メディカルマシーンが、頼りになりそうな安心感を与える声でそう告げた。

「た、頼むぞ、終わったら俺がそのベッドに厄介にならなきゃなんないから。さて、白兎、そのオッサンの方だな」

 白兎はドームテントの端寄りに簡易椅子を3つ並べていた。一つはドームの壁を背にトレンチコート露出親父用、もう二つはその正面に並べて俺達用だ。

 ゼスチャーで壁よりの席にオッサンを座らせて、その前に俺と白兎が座った。

「な、何なんでしょう?私はただのアンデッドで」

 トレンチコート姿、特徴なんかどこにもないようなオッサン。コートの下がどうなってるのか知らないが、膝より下が目視でき、薄いすね毛の生えた足が見えてる。

「まず、最初に聴こう。お前はアンデッドか?」

 

 

 

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