白兎神社 鳥取県にある因幡の白兎を祭った神社。

 

 

毎回写真を掲載していますが、作品の内容と一致することになったのは初めてかと思います。

 

 



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第110話

 

 

 

「どうしたの~~?」

 すっと振り向いた白兎は、屈託なく答えた。

「先程からの、治癒術といい、今お持ちの神秘的なアイテムといえ、とても私どもには理解しかねる程のお力をお持ちになられていらっしゃると、一同皆、驚くとともに感心致しております。もちろんここにおりまする一同、あなた様方が天使その他それらに準ずる、神の御使いであることは存じておりまするが」

 高位聖職者の一人が真剣な趣で尋ねてきた。

「というか僕、神そのものだよ~~」

 

 

 

 

 白兎……また重要な事をあっさりと……。

「な……なんですと……神様……神様とおっしゃいませんでしたでしょうか?」

「うん」

 うんじゃないだろ……と、白兎に俺は小声で言ってやった。

「あんな、ここ、モウ=マドゥ帝国は一神教なんだ、その辺を踏まえてだな……」

 そういったが、高位聖職者の皆様が感激に震え始めてるぞ、どうするんだ?

「なんと……なんと……神のみ姿を……」

 いえあの皆様、もう少し落ち着いてください……。

「僕いつも言ってるけど、神ってたくさんたくさんいるんだよ。それぞれ微妙に力とか得意分野も違ってね。宇宙と一緒で数は無限だとおもっていいかな。無限は数えられないからΩ=1、だから神は一人なんだよ」

「おー、そうでございましたか」

 さすがは高位聖職者の皆様、すぐにご理解……って、白兎のこの説明で解ったんかい?

「そうなんだよ~~。でもでも、とくに人間の住んでるこの次元にきてると、天の時よりかなり力が落ちちゃうんだ~~」

「左様でございますか……。全能の神は人間どもの自助努力を怠るのを何よりも悲しまれ、そのお力を下界でお使いになられないように、天界と地上界をお分けになられたと我らの聖典にも書き記されてございます。そうして、今回のように本当に我ら人間どもが力と知恵の限りを尽くし、あらゆる手段を講じても解決できぬ、本当の試練に際したときに、神はその手を差し伸べてくださると伺いました。今、その祈りが天に通じ、あなた様方を我らのもとにお遣わしになられたのですね」

 高位聖職者の一人がそう言われた。

「あの申し訳ございません差し出がましいようですがΩは無限でΩ分の一はゼロになるのですが先ほどの話ですとオメガが一と解しますとΩ分の一がゼロではなく一になるという結果になってしまうのですがいかがなものでしょう」

 データーアンドロイドV1がそういって話に入り込もうとしてきたが、完全に無視された。聖職者が神に?あったのだからな。それに、神の言葉に背くようなこと言って相手にされるわけが無いのだが。

「僕ら、そのためにここまで来ました。皆さんのお祈りは天界に届き、審議の末、偉~~い神様で割り振りました結果、僕の上司というか、そんな感じの大国様が、僕らをエージェントとして遣わされたんですよ」

「おお、神よ、有難うございます」

 そして白兎は胸を張って、自信満々に話し始める。

「僕、因幡白兎(いなばはくと)、因幡の白兎、白兎神です」

「おお、白き兎、もしくは月よりの使者、いずれにせよ、何よりも尊き、聖なる神ということなのですね」

 あ、あの~~、聖職者様方、この星にも兎っているんですか?まさかこの星の月に兎の餅をついてる伝説……いや、偶然ですよね。

「母星に帰ったら、地元にちゃ~~んと、白兎神社って、僕の事祀った神社があるんですよ~~」

 わ~~、始まってしまった、こいつにとってはこれが最大の自慢というか、本人的に一番言いたくて言いたくてたまらない、一番言ってうれしい事なんだ……。

「おお、なんと」

「そして、僕の白兎神社の前には、白兎海岸という海岸が広がってて、白兎海水浴場というのまで有って、みんなが海水浴を楽しむんですよ」

「おお、なんと」

「そして、今は民営化されましたが、旧国営鉄道時代から、国内1,2を争う大都市とを繋ぐ、特急電車はくとという列車が走っているんですよ」

「なな、なんと」

「しかも、その名称は一般公募で決められたんだよ~~。そして最近ではその特急、スーパーはくとにバージョンアップされてるんだよ~~」

「な、なんと、一般公募で特急列車の名前が神のお名前にきめられたと……」

「白兎神社の前に道の駅があるんだけど、僕、因幡の白兎にちなんだお土産が、いっぱい売られてるんだよ~~」

 あ……あのな~~。本人こそは言ってないが、微妙に誤解するように誘導してるぞ。特急スーパーはくとは、白兎神社の前に止まらないって事言ってないぞ。それどころか近くに列車すら通ってないぞ。惑星サッマーは鉄道網が発達した星だ、特急が(これはほんと)あるなんて言ったら、どう考えるか、それに、この惑星の方々は道の駅という物をご存知なんだろうか?

「さすがでございます、神は偉大なれ」

 い、一神教の神様の概念から少しでいいから、離れてください……。

「参拝の前の風習で、み~~んな。手を洗って口をゆすいで清めないといけないんだけど、その手水場って所の前に参拝者さんが立つと、人感センサーで自動的に僕のテーマ曲が流れるんだよ。お~~きな袋をか~~たにかけ~~♪大国様が~~来かかれば~~♪か~~わいくかしこい♪し~~ろう~~さぎ~~♪いちばんで~~しに、な~~りました~~♪って」

 いってることはほんとだけど、少し……。まず歌詞が違う。それ以前にその歌のタイトルは『大国様』というんであって、因幡の白兎のテーマ曲じゃない。(註:白兎神社で手水場の前に立つと、人感センサーで自動的に『大国様』がかかるのは本当)

「素晴らしい。讃美歌とともに手と口を洗い清め、禊を致すのですね」

 え?あれ、讃美歌だったのか?それ以前に、この高位聖職者の皆様……この都市国家ハヤートゥみたいなところと勘違いなさっておられなければいいんだが……。

 

 

 



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