あらすじ(上記の写真は作者が撮影したものですが、作品とは関係ありません。)

 

 

 

 

数百年に一度訪れる特殊な霊脈に位置し、戦巫女、世界の崩壊を救う事の出来る乙女たちが集うと予言された高校。堕天使の曾孫で曾祖父が失った天界の籍を取り戻すべく、大国様からの任務に励む俺は、因幡の白兎と出雲の鼠たちと共に、日々善行を積み宇宙の秩序を維持するためがんばってる。俺だけの力じゃ追い付かない。戦巫女たちにも力を借りなきゃならない。偶然にも同い年だった俺が戦巫女たちが現れる運命の高校に通いながら彼女たちを育上げ……。宇宙をまたにかけたジュブイナイルが今始まる。

 

 

 

 だって、天使見かけたら、誰でもとりあえずは畏まるんであって、ここぞとばかりに殴りかかって行ったりしないから。

 大天使ガブリエール様とかミカエル様だとか、そういった超ビッグネームは除いた一般天使は、人間と大差ないって思ってくれていいから。

 天使の仕事は、神様の言葉を人間に伝えに行く事。つまりメッセンジャー。

 人間の御霊向上のため、あえて手を貸さない。

 ただ言葉を伝えるだけ。

 ジャンヌダルクの時もそうだっただろ?

 あなたが立ち上がって、戦ってフランスを救いなさい。

 そういっただけ。手伝いというか、指一本貸していない。

 天使の誰が伝えに行ったかの記録も残ってないし。

 おかげでジャンヌは裁判の時困ったとか。どの天使に言われたんだーとか言われて…。

 いいところをいえば、寿命少し長いし、仕事楽だし、性格のいい天使多いんで天界って平和らしいし。おれ、行ったことないけど。

 で、俺の曾祖父の話に行くけど。

 さっき言ったような、(元)大天使ルシファーのように、天使の大軍団を率いて神様に反乱を起こし、大戦争を挑んで、大天使ミカエル様とかの正規軍に敗れて堕天したってわけじゃない。

 そんな大っそれた事の出来る性格じゃない。

 結構その後も堕天する天使が現れて…。

 の側の堕天使だ。

 曾祖父は仕事はまじめだったらしい。でもそれがたたって…。

 メッセンジャーなんだから、神様の言葉をただそのまま伝えに行けばいいだけなのに。

 なんか、聞く限りメッセンジャーの仕事って、天使の顔を立てるために神様がさせてくれてるんじゃないかって、そう思えるふしもあったりなかったりの…楽な仕事。

 なのにいちいち、それはいけませんよとか、これはこれこれこういう理由で駄目じゃないですかと、文句ばかり言ってた上に、頻繁に上司に上申書を提出してたらしい。

 それで、なんというか……。

 ていよくお払い箱に。

 いや、なんというか……。

 俺が言うのもなんだが……。

 会ったことないけど、おれの曾祖父なら絶対にやる…。

 俺がそういう性格だから……。

 

 チャイムが鳴って現実に戻った。キーンコーンカーンコーンのありがちな音色の連続音だ。今の時代の事だ、もっといい音も作れるんだろうけど、教室のスピーカーって、いったいどこのメーカーが作ってるんだって感じの、音楽ではなく音を流すだけの安っぽい奴だしな。これでも昼食時に音楽が鳴ってくれると結構楽しめるからいいけど。

 あ、今日最後の授業であるところの公民が終了した。

「では皆さん、これで終了します。」

 全然化粧っ気のない太った三十代の女性教師だ。二重顎をさらに目立たせるような感じに軽く下を向いて、教壇の資料を眺めた、

「各自、今日のテストの復讐をくれぐれも怠らないようにね。採点ミス等はもうありませんか?いたらこの後すぐに申し出るように。一年生の一回目のテストに限り、翌日まで採点ミスによる修正を受け付けることになっていますが、次回からの事もありますので、出来る限り今日中に持ってきてください。」

 いや、採点ミスするのあんただろ?それに、今日のテストじゃないって、テストが行われたの三日前。

「では、これで終了します」

 その後ほんの短い言葉があったようだが、聞いてなかった。

 まあいいか、それくらい。

 そうだ、あまり細かいことの文句を言っちゃいけないんだった。

 頭の中に完全に入ってる、金言をまとめたセルフチェックノートの文言を思い出した。

 曾祖父の二の舞は御免だ。

「起立、礼、着席」

 椅子を引く音とかが一斉に響き、その後挨拶が行われる。その後の採点ミスも無かったようで、公民教師はのそのそと教室を出て行った。

 誰がしゃべるとではなくガサガサとし始めた後、少しずつ話声は増えていく。

 ただ、終わりのホームルームまで五分しかないので、教室から出る生徒はいない。

 そういえば六時限目には体育実技の授業は行われないのが我が校の慣わしだ。今も校庭には誰もいない。

 着替えに時間を要する体育実技は六時限目には執り行わないようにと、二〇年位前にPTAが厳しく通達したからだそうだ。早く終わらせて自宅での学習時間を増やすためらしい。どうでもいいけど、体育教諭全員が六時限目に授業が無いわけではない。保健体育の授業は行われている。

 公立高校とはいえ、地域の学力トップ校で歴史もあるということは、PTAに有力者が多くいらっしゃるって事に繋がるようで、校長どころか教育委員も全く頭が上がらない実力者がずらりといらしたりする。そういう人だと強く言わなくても忖度で全部伝わって、学校の運営方針変えられるんだって。

 別に悪いって意味時じゃない。教師だの教育委員だのって、あんまり世間知らないくせに人の言う事聞かないから。

 いいことといえば…。

 そうだなー、学校を終えた生徒ができるだけ早く帰宅できるようにと、掃除当番による掃除の徹底した効率化、ひいては時間短縮がPTA主導で行われて、そのおかげで掃除がかなり早く終わるようになったって事かな。

 なんかこれもまた二十年位前に、一流製造企業の役員だか何だかの偉いさんがPTAにいらして、徹底した効率化を行って、簡潔なれども丁寧で美しく掃除をするという、技術と精神構造を叩き込んでいったという事らしい。どうやったら一層美しくきれいに早くできるかを常に考えながら、やり方に一切の無駄を無くしていく。カイゼニングだとかなんとか。

 いや、別に体育も掃除もどいうでもいいんだ…。