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聞きたいことは事前にメモしておこう [10/05/05]

聞きたいことは事前にメモしておこう

鈴木信行

「あ! そういえば、薬を変えてほしいって言うのを忘れた」
病院の診察室を出た瞬間に、医師に聞きそびれたことを思い出した経験はありませんか?
いまさら診察室に戻るわけにも行かないし、薬局で言っても、処方箋を書き直してもらうのは手間だし・・・。次回言えばいいや、となってしまいます。
そこで、今日のテーマは、「聞きたいことは事前にメモしておこう」です。

前回 、自分の健康手帳を作り、違うからだの感覚を感じたら、メモを取ろうという話をしました。

まずは、その健康手帳を持って病院へ行きましょう。
そして、受け付けから診察までの待たされている時間に、
「聞きたいことは事前にメモ」しておけばいいのです。
その際に、健康手帳を見ると、聞きたいことも思い出したりします。

例えば、私は、胃にポリープがありますので、時々胃カメラによる検診を行ないます。
その結果を聞くときに、次のようなメモを見ながら医師と会話します。

・前回の検診時と比べてポリープの差はあるか?
・今後、がんになる可能性はあるのか?
・前々回と前回で、色が変わったポリープがあるが、そういうことはあるのか?

このメモをしておくことで、聞きそびれがなくなるばかりではなく、自分がいまの病気に対して、どれぐらいの知識があり、そしてそれがどれぐらい頭で整理されているのかが、はっきりします。
場合によっては、そのメモを医師に見せてしまえばよいのです。
私の主治医はいつも一つひとつの項目に丁寧に答えてくれます。

診察室で対面する医師にとっても、患者の医療的知識のレベルがわかりますので、説明もレベルを合わせてくれる可能性が高く、あなたにとってわかりやすい説明をもらえることになるでしょう。

もちろん、あなたは医療者ではありませんから、なにも医療的にレベルが高い必要はありません。
率直に聞きたいことをメモします。
上記の私の例で言えば、色の話は実際には違うポリープを見比べて、私が誤解していたことだったので、医師からすれば笑ってしまうような内容でした。
でも、それでいいんです。
だって、実際にそう思ったのですから。

私は、このメモはその場限りのメモ用紙に書いているだけで、診察が終わると捨ててしまいますが、健康手帳に書き込んでいったら、ずっと記録が残るので、よいかもしれませんね。

さて、メモを持って診察室に入るのですから、さらにペンも持っていきましょう。
第2回 で、「初めて聞く病名を告げられたらとにかく病名などをメモしましょう」と言いました。
初めての病名だけではなく、やはりいつの場合でもメモとペンを持ち、普段と違うことを言われたらメモするようにするとよいでしょう。
慢性疾患などの場合は、メモするような内容はないかもしれませんが、いつ何を言われるかわかりませんから、やはりペンを手にしておくのがいいでしょう。

さらに、メモとペンを持って診察室に入るのは、他の意味も持っています。
私は、大学や企業で講演活動をしています。
演台に立ち、聴講してくれる方々を見たときに、メモとペンを持っていると、しっかり、きちんと、わかりやすく話をしなくては! と思うのです。
ペンが動いているときは話をゆっくりにしますし、この部分の話がみなさんに意味が大きかったのだなと、自分にとっても勉強になります。
逆を言えば、聴講する方がペンすら持っていない講演では、聴講者から意欲が感じられず、こちらも120%の力を出す気力がなくなり、100%で終えてしまいます。

これは、医師と患者という関係でも同じだと思います。
患者のペンが動いていればその間はよりわかりやすい説明にしてくれるでしょうし、書こうとしているペンが突然止まり、わからないなぁという顔をすれば、もう少し細かく解説してくれるかもしれません。
そしてなによりもメモされるからには、しっかり、きちんと、わかりやすく・・・という気持ちが医師の側にも感じることでしょう。
医師は人間です。
感情という部分に働きかけるための道具として、メモとペンは価値が大きいと考えています。

そして、医師にとって、患者がどういう気持ちで診察を受けているのか、またどの程度の医療的な知識を持っているのかは掴みきれていない場合が少なくないでしょう。
つまり、メモを通して、医師にとっても勉強になるのではないでしょうか。

次回は、前回紹介した健康手帳の具体的な使い方を、さらにお伝えしたいと思います。

情報の入手方法を使い分ける [10/05/12]

情報の入手方法を使い分ける

鈴木信行

「新聞見たよ!」

この数日、カフェに来店した常連のお客さんに言われます。
アピタルで連載ブログを担当している内藤佐和子さんと私が、朝日新聞の紙面で紹介されました(2010年5月7日東京本社朝刊26面)。
カフェでは、コーヒーマイスターとしての顔しか出さないようにしているので、意外な感じを受けているようです。
(PDFで紙面をご覧ください)

そこで、今回のテーマは「情報入手方法は使い分ける」です。
特に、新聞紙面とアピタルのようなインターネットでの情報入手について、日ごろ考えていることを書きたいと思います。

新聞に掲載されてから、私の経営するカフェに、昔の知り合いが何人か尋ねてきてくれました。
異口同音に「新聞を見てカフェを経営していることを知った」とのこと。

インターネットで情報は得られるので、新聞紙面は不要との意見があるようですが、それぞれの役割と特徴が違うと私は考えています。
インターネットは、自分の知りたい情報だけを探して、その結果が得られれば終わります。
自分が知りたいことだけを知れればそれで満足ですし、それ以外の情報を調べようとはしません。
つまり自分の意思が入手する情報の内容を大きく左右します。

一方で、新聞紙面は、1面からパラパラとめくって社会面まで、一通りの幅広い情報が得られます。
さらに、紙面を大きく広げると見出しや写真がなんとなく目に入ってきて、自分の気にしていなかった情報を得られるときがあります。
まさに、私の知り合いの方々は、新聞紙面から私の写真がなんとなく目に入ってきたといえるでしょう。

医療情報に限って考えてみても、やはり両方が必要だと思うのです。

この患者道場をお読みいただいているみなさんは、どうしていまこのページをご覧いただいているのでしょう?
自分の健康に不安がある、持病がある、医療関係の仕事をしているなど、健康や医療に興味がある方ではないでしょうか? 
なんとなくネットサーフィンしていてここまで読んでいただいている方は少ないと思います。

日ごろの健康なときは、紙面パラパラ・・・。
なんとなく健康や医療に関して、意識するけど、細かな情報はいりません。
たまに気になる記事があったら読んで、知識を深めておくけど、それが今すぐに活かされるということも多いわけではない、という感じです。
実際、朝日新聞の紙面を日々読んでも、生活習慣病やがんなど大衆的な疾患については情報が発信されていますが、二分脊椎などという珍しい疾患についての記事はまず目にしません。
でも、いざ病気になり深い情報が必要になったら、新聞紙面ではなかなかほしい情報が簡単には得られません。スピードも必要です。そうなればインターネットの情報網が役立つのです。二分脊椎で検索すれば、様々な情報が入手できます。実際、アスパラクラブのページで二分脊椎を検索してみたら、胎児治療といった最先端の情報まで触れることができます。
つまり、朝日新聞社も、きちんと使い分けを考えて、それぞれに役割分担をさせているということだと思います。

逆を言えば、賢い患者を目指す私たちも、情報入手方法を使い分けるということが大切です。
第2回で「初めて聞く病名を告げられたらインターネットで検索」し、「取捨選択は、最初は難しい」と私は書きました。
インターネットでどのような情報でも得られるというわけではなく、毎朝、新聞を読む習慣があった上での、インターネットの情報だと私は考えています。
その流れがあることで、より視野を広く、多角的に物事を捉える能力が養われ、多くの情報をきちんと選択できるようになるのです。

私が書いている「患者道場」も、いますぐに役立つという方は多くないかもしれません。
しかし、このアピタルに積み重ねて保存されていることで、いざ患者になったという方が患者になったらどうすればいいのかという情報をスピーディーに入手する必要があったら、そのときに読めるようになっていればいいと私は考えています。

みなさんは、新聞紙面とインターネットの情報発信と役割の違いについて、どうお考えになりますか?
そして、情報入手方法はどう使い分けていますか?

さて、今回は新聞紙面で紹介されたこともあり、前回お約束した「健康手帳の具体的な使い方」をお伝えできなかったので、それは次回に。

健康手帳の使い方 [10/05/19]

健康手帳の使い方

鈴木信行

「いつ、行ったっけなぁ?」
前回の歯科検診はいつでしたか?
という質問に、答えられない方は少なくないと思います。

さて、第3回で健康手帳の提案をしました。
そこで、健康手帳とするべくノートを一冊用意したものの、
それをどう使いましょうか?

今日のテーマは、「健康手帳の使い方」です。
せっかく用意した健康手帳、できるだけ手軽に、でも意義あるものにしたいですね。
健康手帳の目的は「自分の身体の履歴をわかるようにする」ことです。
前回の歯科検診がいつだったか覚えていない方が多いように、
人間の記憶力なんてたかがしれていますから、
忘れないように記録を積み重ねていくのです。

実際に健康手帳を使うにあたり、
私がみなさんにお勧めするのは「がんばり過ぎない」ということです。
最初にがんばってしまうとだんだんと面倒になってしまいます。
特に、健康手帳は体調が優れないときに使う場合が多いのですから、
がんばり過ぎないがモットーでいいと考えています。

私が健康手帳に書くタイミングを挙げてみます。

・病気かなと思ったとき
・病院へ行ったとき
・福祉制度を使ったとき

これぐらいです。

このそれぞれのタイミングで、実際にどのようなことを書くのか、
例を挙げてみましょう。

・病気かなと思ったとき
日付 内容
2010.5.19 10:00 寒気 検温 37.8度
12:30 関節痛 市販薬○○○を飲む
14:00 くしゃみ 鼻水 頭痛 検温 38.5度

このぐらいの内容でいいと思います。
感想や自分なりの見込みなどを書いてもいいのですが、
健康手帳は履歴をわかるようにするのが目的なのですから、
事実だけを書けばいいのです。

・病院へ行ったとき
日付 内容
2010.5.20 ○○病院 ○○医師
インフルエンザの検査は陰性
風邪との診断 薬は○○と○○ 5日分を処方

こちらも、このぐらいの内容で十分と思います。
先の”病気かなと思ったとき”の続きで書けばいいでしょう。
前述した歯科検診なども、このような感じで書いておきます。

・福祉制度
日付 内容
2010.5.20 補装具支給

私は、二分脊椎という疾患のため補装具という特殊な靴を使って歩いています。
生活するには不可欠なものです。
この補装具は、特注品であり、私の足の形に合わせて義肢装具士が製作します。
製作に当たっては福祉の支給制度を使わせていただくのですが、3年に一度しか申請できません。
しかし、日々の生活のなかで、前回申請した時期は忘れてしまうものです。
単に、申請した時期だけがはっきりとしていればいいのですから、その日付を書いているだけです。

気軽な感じでいいのです。ルールはありません。

第4回で医師に聞きたいことはメモして診察室へ入るよう提案しました。
私はやっていませんが、そのメモも、健康手帳に書いてしまうのもいいと思います。
イメージ的には次のような感じでしょうか?

日付 内容
2010.5.20 ○○病院
・風邪か インフルエンザか
・次回、来院する必要があるのか
・風呂に入っても大丈夫か
・薬の副作用はあるのか

このページは、診察室で医師に見せてしまうのがいいでしょうね。
その場で、医師からの回答をメモしてもいいと思います。

その他にも、いくつかのアイデアを紹介します。

・薬局などで渡される”お薬手帳”を兼ねる
・薬局やコンビニエンスストアで買った薬(OTC薬といいます)も記載する
・毎日書いている日記の中に健康手帳を合わせる
・確定申告で必要となる病院のレシートを保管できるようにする
・保険証や病院の診察券を保管できるポケットをつける
・健康診断の結果をファイルできるようにする
・健康手帳にはペンを挿せるようにする

何をどこまで記載していくか、あるいはどういう手帳にしていくかは自由です。
「自分が努力できる範囲」と「記載するパワー」と「得られる情報量」のバランスで、自分が一番適しているという内容を書けばいいのです。
このように、好きなようにアレンジをしていくことで、
楽しい自分だけの健康手帳をつくってみてください。
逆に、もしアイデアがあれば、コメントをくださいませ。

次回は、いざ病院へ! というお話をしたいと思います。