横溝正史原作のドラマや映画について、毎週金曜日にお届けする
「週刊金田一」
今日は、楽しい仕事でして
時間が経つのを忘れてしまった・・・
(金曜日ということも忘れてた)
今日は、すっごく楽しみにしてた女優さんなんで、
早速書こうと思います
第29回は、白石加代子さんです
白石さん・・・もう化けもんみたいな女優さんです
役も化けもんみたいなのが多いけど
若い頃から、ちょっと不気味な老け役が多かったですよね!
だから舞台「身毒丸」で15歳の藤原竜也さんの相手役に選ばれた時は
驚きやんした・・・(あもう白石さんの影響が)
白石さんは「悪魔の手毬唄」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」の3作品に出演されてますが、
だんだん不気味に、迫力を増していく・・・・
「悪魔の手毬唄」では、仁礼嘉平の妹で文子の産みの母親の咲枝を演じています。
すでに登場が幽霊のよう・・・
音も立てずに障子を開けて入ってきます
「初めてお目にかかります・・・
私が仏の・・・・・・母親の・・・・咲枝でございます・・・」
「大変失礼いたしました。
お目にかかる早々、見苦しいところをお目にかけて・・・
恥ずかしゅうございます。
もう泣きませんき、不憫な娘の仇をうってやってつかあさい」
我が子が亡くなったんだから、おいおい泣いてもらってもいいのに、
人前で泣いてはいけないと思ってるところが
咲枝さんの古風で控えめな性格が表れてます
古風を過ぎて、不気味なんだけど
「泰子さんは敦子さんと恩田との間にできたお子です」
「恩田から・・・別れる時に・・・私が、聞きました・・・」
「ゴホッ・・・・・なんや知らん風邪気味で疲れとりますけん、
早よ、帰してもらえませんかなぁ・・・」
3人並ぶとやっぱり一番若いよね・・・肌が
声は・・・・
「確かに・・・今、敦子さんがお言いんさった人じゃと」
由良の敦子(草笛光子)は「恩田の写真」と言ったのに、
咲枝は「恩田」という名前を出さない・・・よほどびっくりしたのか、名前を出すのもはばかられたのか
続いて、「女王蜂」の速水るい
(ちなみに「速水るい」ってネットで検索したら同じ名前の風俗嬢ばかりが出てきてびっくりした)
るいさんは、大道寺銀造の母親の妹です。
能登の海のそばのボッロボロの家に住んでるらしく、
家も身なりも恐ろしく汚い
「わしゃぁ、姉から何度も聞かされた。
姉の連れ合いのいちぞうさん、つまりあたしの兄さんじゃぁなあ。
その兄さんが止めるのも聞かんで
馬を走らせた東小路の殿様が女の子をはね殺しなすった。
兄さんはその罪をなすりつけられて監獄行きじゃ。
お屋敷ではわずかな涙金をくれたきりで知らんふりだと言うことじゃった。
姉はいつも言うとりましたなぁ」
「いくら身分が違うかしれんが、あんまり阿漕じゃ、非道じゃと。
それがあんた、獄中で兄さんは死ぬ、
それからまもなく、姉もぽっくりこの世を去った。
あの死にざまじゃあ、
姉はいまだに成仏しきれんじゃろとわしゃ思うとります」
どアップから始まり、どんどんズームバックしていくのが、
想像力をかきたてます
長ゼリフを1カットで(カメラは据え置きで)決める白石さん、
カッコいいです
そして、最後に「病院坂の首縊りの家」の大大大好きな宮坂すみ
法眼琢也の母親です
速水るいに引き続き、ボロ屋におるよーーーーー
て、ことで「すべて見せます宮坂すみさん」
すみさんを金田一が訪ねた・・・という、金田一がインタビュアーらしき場面。
だけど金田一は出てこず、画面はほぼ同じサイズで
宮坂すみさんがゆっくりとふとんをたたみながら昔話をする・・・
という衝撃の斬新な場面
「あんた・・・随分探しなすったろ。わしゃ何度も出所を取り変えとるからな。
「五十嵐猛蔵という男のことだったな。
あの男も南部の出でな」
「琢也のことも法眼に恩を売るためにやったことだと
あんた・・・千鶴さん知っとるんか」
「この人は鉄馬旦那さまの腹違いの妹で
道ならん恋をして父なし子を産んでしまったけど、
その子が弥生さんだでな」
「その千鶴さんを猛蔵が嫁に欲しいと鉄馬旦那さまに泣きついて頼んだそうな」
ここまでで5カット。
普通、編集では御法度とされる「ジャンプカット」ですが、
この時代に意図的に取り入れているとは・・・・
最近の映画では、よく使われる手法なのですが、やっぱり市川監督は偉大ですね
ここで弥生(佐久間良子)と金田一のシーンに一度戻って、
また宮坂すみ
ここからは1カットで、どんどんすみさんにズームインしていきます
「あんの弥生さんが琢也の嫁になってくれたと聞いたときにゃ
驚きやんしたなぁ。
血は薄いとゆうても二人はいとこ同士。
でもな、この祝言も猛蔵が法眼との縁を濃くして、
法眼病院を思うままにすんべとした策略に違いない。
猛蔵という男には己の欲望をとことん遂げる恐ろしい所がありやんしたな。
琢也と弥生さんがどんな夫婦だったか、
ま、わしとは縁の切れた息子のことだからどうでもええけんど。
え?何、この本にわしのことが書いてあるんか・・・
せっかくだけど・・・目を患うて、わしは開きめくらだ。
読めん・・・」
宮坂すみさんは目が不自由だったんですね。
こんなボロボロの家をお客さんが訪ねてきたのがうれしかったのか、
寝ていては失礼だと思ったのか、
触ると粉々になりそうなふとんを片付けるのがかわいいですね
宮坂すみ最高
しっかし・・・この3作品を演じた当時、
白石さんはまだ36、7歳だったんでしょ
老婆を演じても全く違和感ない
と言うか、この迫力ある声・・・
低く響きわたる声がすごいし、
セリフの間というかテンポがすごい
年寄りっぽい間があったり、憎しみがこもると早口になったり・・・
白石さんのシーンは見れば見るほど味が出るので、
みなさんも今一度、ご堪能いただければと思います
なんとか書き終わったわ
次回からは、ついに「た行」ですよ
お楽しみに
また来週っっっっ