「震災離婚」という言葉があったけれど、「がん離婚」というのもきっとあるだろう。

私は、二世帯住居という強みをいかして「がん家庭内別居」だ。

退院してから、一週間もしないでそうなったと思う。

 

 

夫は、良くも悪くも通常運転だった。

そして、退院後は私にとって、夫は「悪い方の通常運転」だった。入院から退院するまで、実家から泊まりに来てくれていた両親もいたその時期に。

二人だけの時だったらこうなっていたか分からないけれど、両親のいる時の態度としてはあり得ないなぁと感じていた。いい意味で、もっと「外面」でいなさいよ…と思ったのだ。

 

まぁまぁ。

とは言っても、夫だって疲れているのだろうし…と、そこは流して私はフツウにしていた。


でも、突然、それはプツリと切れた。

今となっては、何がきっかけだったかさえ思い出せないのだけれど、思い出さないということは、今までもずっとアタリマエに我慢し続けてきたことに違いない。

私が二回目のがん、肺がんにさえなっていなければ、今も30年続いてきたように暮らしていたと思う。

 


 

最初の子宮体がんの時は、夫がいてくれて良かった、色々あったけれど離婚しないで良かった、これはご褒美だと思っていたのに。

肺がんは、私自身の心をやさぐれさせたし、きっと夫も両親の心もやさぐれさせていたのではないだろうか。そこは理解しているのだけれど、もう、我慢できなかった。

 



またか。

また、がんなのか。

なぜ?

どうして?

何かが、そんなに悪かったの?

一度のがんでは、どうしてダメだったのか?

 


そのような考えてもしかたのないことが、止めようとしても勝手に沸き上がり、ぐるぐるとまわるだけだった。

眠れない夜は、お酒で紛らわしていた。酔っぱらうほどではないけれど、少し頭がぼーっと鈍くなるくらいに飲んだ。

拷問のような検査、子宮体がんの時は楽勝だったが、今回の手術後の高度治療室で過ごした一晩の、息もしにくい痛みとなかなか過ぎ去らない時間は、私の何かを大きく変えたのだろうか。

 

 

 

 

とにかく、私は夫にブチ切れた。

 

「頼むから離婚してくれ!もう嫌だ!出ていけ!今すぐここら出ていけ!顔を見せるな!」

 

と怒鳴り散らし、スリッパを投げつけた。出ていけ!と言える幸せよ。名義変更してもらっておいて良かった(笑)

猫はあまりの私の剣幕に、逃げまくって机の下に隠れてしまった。これは、本当に心が痛かったし、申し訳なかったが、その時の私に理性など顔を出す隙間などなかった。

 

ああ、何かが終わった。

そのことだけは、私の中で確信した。

 

 

 

夫は土下座して何度もあやまってきたけれど、私の気持ちは何も揺らがなかった。

現在、夫はどうかといえば、謝罪の気持ちは薄れて、きっと「ここまでされることを、俺がしたか?」と思っている態度に見える。

夫には分かるはずもない。そもそも、いつも自覚などないのだから。



でも、私の30年の結婚生活の中で心に打たれた杭は、決して取り除くことも、忘れることもできないものになっている。

そういう自分を責めていたし、いつか変れる自分になれることも諦めてはいなかったけれど、ブツッと誰かに幕を下ろされたような感覚だ。

決めたのではない、決まってしまったのだ。

 



一般的な家庭内別居の定義など分からないが、離婚して経済的自立する自信はないから、食事の支度、洗濯、気が向けば二階の掃除をするというのはこれまで通り変化なし。

夫が病気や介護が必要になれば、妻としての役割は果たす。それが死ぬほど嫌なら、離婚するしかないと思うが。

私がまた病気になるかもしれないし、そうなった時には私の代わりに、猫様のしもべになってもらわなくてはいけないしね。

 

 

 

 

家庭内別居をしてから、早四か月。

寂しくなったり迷ったりするのではと思ったが、全くぶれてない(笑)

先日は、とうとう母には状況をカミングアウトをした。

毎年、年末年始には実家へ電話をして、夫も挨拶をしていたのだが、今年は私だけ。

 

「挨拶したいんだけど…」

 

と夫が言ってきたけれど、断った。

おそらく、母は何かしら勘づいただろうなと思っていたけれど、ビンゴだった(笑)

 

 

「いいじゃない。そんな夫婦なんていっぱいいるんじゃない?自分を守るのは自分しかいないし、自分を守ることは周りを守ることになるんだから」

 

 

えーっ、母よ!!

母の発言とは思えない(笑)

娘の二度のがんで、悟ることもあったのだろう。ごめんよ、母。そんな思いをさせてまで、悟らせるなんて。胸がイタイです、娘としては。

 

 


ネットで、妻ががんになったら夫から離婚をつけつけられたという、信じ難い記事を読んだことがある。

けれど、それに近い話を私は直接聞いていた。数年前にがんで奥様を亡くされた75歳くらいの男性が、



「話を聞いたら、妻の家族は皆がんで亡くなっていたんだ。それが分かってたら、俺は結婚しなかった。」



え?

どういうこと?

私は意味を飲み込みまで、しばし時間を要した。

おそらく50年近く結婚生活をされてきたと思われるが、根底からひっくり返す発言だ。

いやだ。

全く面識はなかったけれど、天国にいらっしゃる奥様に聞かれたくない!と憤った。

ネットの記事を読んで、この人が稀なケースではないと知った時、かなり衝撃を受けた。




私の狭〜い人間関係でも、がんや病気がきっかけで夫婦間に溝が出来たり、元々あった溝が決定的になったりするケースは少なくない。

その溝は、夫婦共通であるとは限らない。妻だけが感じていて、夫はのほほんとしていることもあるだろう。




いつまで、この状態が続くかは分からない。どう変化していくかは、神のみぞ知る。

かなり歳上の夫より、私の方が命が短いかもしれないと思った今、1秒たりとも夫に心乱されるのは御免なのだ。





夫と別居して、外食することが減った。久しぶりに友人とのランチに、胸踊る😸