コートールド展・愛知県美術館、「人種差別から読み解く大東亜戦争」 | タビノス

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一生は案外短いのかも。できるだけ多くの場所を見たい。

名古屋栄の愛知県美術館へ。最近少し気が抜けていたので気分転換に。

2008年のロンドン旅行の際に、人に聞いて訪れたものの勉強不足で漠然とした印象しかなかった。

紡績(レーヨン)で財を成した実業家とのこと。今回印象に残った作品を3つ。

 

①ルノアール「桟敷席(さじきせき)」
当時最先端のパリの劇場。華やかな舞台と同時に、「美女を連れていくことがステータスだ」という見栄が表現された作品。と、勝手に思っているがどうなのか。


②マネ「ベルジェールのバー」
これも劇場。 バーの若い女性店員を背後の鏡を含めて描いている。絵の右上に描かれている、注文している「自分」を軽くアピールしているように見えるのは①と同じか。男の虚栄心にも感じるがどうか。単純に華やかなのもよい。

 

「ベルジェールのバー」 パンフレットから。

 

③ゴーギャン「ネヴァーモア」
これがよい。やる気のない寝姿の南国の女性。 悪魔(外来者)への反応がどういう気持ちか。反逆なのか。無関心なのか。

 

絵画はいろんな見方があってよいと思う。

音声ガイドを使ったので効率よく鑑賞することができた。

 

【読書記録】

「人種差別から読み解く大東亜戦争」 (岩田温・彩図社)

またまた固いタイトルだ(笑)。図書館で借りた。人種差別がよくないことは分かっていても厳然としてあるもの。戦争を切り口に述べてある。印象に残ったことを数点。

 

①「民族自決」はあくまでキリスト教の白人に限定。

国際連盟は1920年にアメリカ大統領ウィルソンの提唱によって始まったが、同じタイミングで日本が呼びかけた「人種差別撤廃条項」はウィルソンをはじめとする英米に強硬に反対された事実がある。同じ時代にカリフォルニアでの日本人排斥問題もあった。また、時代は違うが、「法の精神」で三権分立を唱えたモンテスキューも同著のなかでかなり極端な黒人(有色人種)差別をしている。「奴隷解放宣言」のリンカーンも同じで、人種差別的な発言は多く残されている。教科書・人物は多面的に見たほうがよい。

 

②植民地化を逃れた日本

中南米に対するスペインの収奪もひどい。武力の差でたたきつぶす様子がこれでもかと表現されている。オランダのインドネシアに対するものも同じ。「アンクルトムの小屋」はアメリカでの黒人差別の話だが、インドネシアの「マックス・ハーフェラール」の話が述べられている。初めて聞いた話だが(なかなかこれもひどい)、文学が歴史を表現する例として挙げられている。

日本でも安土桃山時代にポルトガルが日本人奴隷を連れていった事実がある。豊臣秀吉が調査し、抗議対応をとった例が書かれている。遠い島国という地の利もあるが、秀吉がそれなりに対応した点は評価できると筆者は言う。また、日本は当時戦国時代で、かなり勇敢であり一定の防御力があるとポルトガル人の記録に述べられている。そりゃそうだ。無垢なインディオは滅ぶわな。

 

③大東亜戦争と太平洋戦争

ここが本書のキモである。大東亜戦争は「アジアを欧米の植民地から解放する戦いだ!」、太平洋戦争は「日本の真珠湾攻撃にアメリカが反撃した戦いだ!」。筆者は前者(大東亜戦争という用語)について、戦後アメリカの方針で使われなくなったが、人種差別の点から見ると少しは理に適う部分もあるのではとの意見だ。なるほど。

 

こういった読書のアウトプットはよいかも。理解が整理される。読んだだけだとすぐ忘れてしまう。

学べることに感謝。