電車に乗っていると、入口のほうから、少し大きな男性の声が聞こえた。
「もう少し奥に詰めてもらえますか?」
私は座っていたので、入口付近がどれくらい混んでいたのかは分からない。
けれど、私のいたあたりは、立っている人もそれほど多くなかった。
どうやら、入口付近に人が集まっていたらしい。
声が聞こえたあとも、車内が大きく動いた感じはなかった。
ほんの少しずつ奥へ詰めれば、乗ってくる人も、立っている人も、もう少しゆったりできそうなのに。
電車の中には空いている場所がある。
それでも、人は一度立った場所から、なかなか動かないものなのかもしれない。
「もう少し奥へ」
そのひと言が、しばらく耳に残った。
