平成25年初春公演 第2部
一つ目の演目は【団子売】でした。

これは景事と言われる、とにかくおめでたい舞だそうです。
勘九郎さんの襲名披露でも演じられていましたよね。
あちらも観に行ければ、もっと愉しめたのかもしれませんが
残念ながら今回が初見です。

 
団子売りのご夫婦が、明るく軽妙に唄い舞う
見ているだけで楽しくなれる素敵な演目でした。



このご夫婦
妻はお臼で夫は杵造という名前です・・
そして団子が出来上がる と。 

夫婦円満、子宝に恵まれそうなおめでたい舞です。

杵造さんの舞は、ちょっと動きが滑稽というか
決めポーズが可笑しくて、思わずクスッと笑ってしまいました。



浄瑠璃は先日の都々逸を思い出すような
ちょっぴり大人な比喩にあふれています。


尾上高砂、箒、熊手、松、鶴、亀 と
おめでたい言葉も随所にちりばめられていて

初春に観て聴くに相応しい
明るい気持ちを頂きました☆


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つづいて、
第2部 二つ目の演目は
ひらかな盛衰記より【松右衛門内の段】と【逆櫓の段】です。


とにもかくにも、
権四郎さんが凄い!

人格者とはこういう人の事を言うのだろうかと思いました。

愛情深く
情け深く
思慮深く

怒りの中でも、きちんと人の話を受け止める事ができて
自分の命を賭けて、大切な物を守るために行動する事ができて
冷酷なまでの哀しい選択を、自分自身で実行する事ができる

格好良かったです。
私の中で、主役は権四郎さんだなぁ。


あぁ、でもお筆さんも素敵でした。

大切な事を言わなきゃいけない
でも・・・言えない

って雰囲気が伝わってきて
こちらもちょっと胸が苦しくなるような
そんな気持ちになりました。

歓んで挨拶されるたびに
いや、あの…あ、いや、こちらこそ
って感じで頭を下げるお筆さんに萌えました。



そういえば、
最後に松右衛門が、櫓代わりに松に登ろうとするところで
伊達娘恋緋鹿子のお七ちゃんと同じような演出のところがありました。


こぅ、なんていうか、
手と足を大きく前に繰り出しながら
頭をぶんって前に振る
そんな感じの動きをするシーン

手と足を大きく前に出している割には、全然進んでなくて
しかも何故か頭をぶんぶん振る・・


初めてお七ちゃんを見た時には
このシーンの意味が全く解らなくて
何をしてはるんやろうって思ってたんです。

で、先日改めてお七ちゃんに会って
そこで、あぁ、もしかして走ってるのかな?
って思って

で、この松右衛門さんを観た時に
ピン!と来ました。

もしかして、めっっちゃ一生懸命走ってる?!


今で言うところの、スローモーションみたいな演出なんでしょうか。
汗が飛び散る様子や、歯を食いしばって走る様子を
スローモーションで観客にしっかりと見せているような感じ?

顔を前にぶん!って振るのは必死の形相ってこと?


そう感じられたら、納得がいきました。



文楽を、こうやって少しずつ感じ取れる事が嬉しいです。

正しい答えを最初に全て知った上で物事に取り組む事も
時には大切だと思うけれど

こんな風に、徐々に理解して
自分なりの答えをゆっくりと探し出していくって
とっても贅沢で素晴らしい事だし
経験するってことの醍醐味の一つだと思います。


次からは、お七ちゃんもより一層愉しめそうです☆



つづく