山崎豊子さんの作品で

「花のれん」がある。

 

吉本せいを主人公にしたとされる。

河島多加が主人公である。

 

穎右さんをモデルにしたと思われる

久男も出てくる。

が、出征する場面がある。

 

久男が、多加の見知らぬ女とホームの柱の蔭で体をすり寄せるようにして話し合っている。女は久男より二つ三つ齢上らしく、いたわるような眼で久男を見ていたが、洗いざらしの銘仙の着物と羽織に、筋切れした人絹の帯をしている。肩に巻いているショールも、ケバの出た何年も前の品物だった。(山崎豊子「花のれん」)

と久男と恋人の様子が描かれている。

作品では、久男は戦地に行ったままで、

死んではいない。

 

一方、

笠置シヅ子さんの

「歌う自画像」には、

穎右さんとの別れについて、

琵琶湖の宿で穎右は

「湖畔の宿」をつぶやくように歌ったという

 

ここで泣いては余計この場の始末がつかなくなると思って、私はじっとこらえながらエイスケさんの肌着類を手入れしていました。だけど食いしばった歯の根から、耐え難ない嗚咽が込み挙げてくるのです。

「笠置さん、お風呂へ入ってきなはれ」

と、山内さんが見かねて助け船を出してくれました。

とある。

穎右さんの死を知ったときも、

シヅ子さんは

「いちばん可哀そうなのは御寮さんでッしゃろう。いろいろの夢をつないでいた一人息子に先立たれはって・・・」と言ったっという

 

日記には、

かねて予期したことであるが、いざとなればやはり呆然としていまった。山内さんは「強き母となり、エイスケさんの意志を継げ」という。意志とは何であろうか?

(5月20日)

と記している。

 

いろいろ悩んだりもしたのが窺われる。