私は60歳。

この3月で役職定年だ。

 

とりあえず、あと1年勤めて、

61歳で定年退職し、

その後は再任用を希望する予定だ。

 

役職定年後、給与は7割に、

再任用後は3割程度となる。

 

これまで一生懸命

仕事をしてきたため、

役職定年がなんとなく残念であるものの、

誰もが歩む道だと覚悟を決めている。

 

だから今後は転職も含め

どうするか考えている。

 

何かやりがいのあることができると

思っている。

 

その方が、豊かな人生を送れるはずだ。

 

そしてその過程で死ぬのも悪くない。

 

というわけで、

自分の人生を前に進めるために、

自分がやって楽しいこと、

至福と感じることについて、

一旦整理をすることにした。

 

それを整理することによって、

今後の生き方や、

やるべきことが見つかるのでは、

と考えているからだ。

 

私がやっていて楽しいこと。

 

これまで、

1「新聞」、2「ドラム」、

3「アマゾンプライム」、

4「トレーニング」と考えた。

 

今回は「教養-情報インプット(前編)」だ。

 

ところで、

私は、18歳の頃から読書を始めた。

 

大学生になって、

人間関係や自分の将来に

夢や希望が持てない時期を経験し、

自分を変えるために読書をすることにした。

 

大学1年生の頃だ。

 

これ以来、私は、

本の虫になった。

 

私は誰よりも早く講義教室に行き、

一番後ろの席を陣どって、

ひたすら読書をした。

 

どの授業にも文庫本を持参し、

授業の無い時は寮の部屋で読書した。

夜は寝るまで必ず読書をした。

 

授業に出る目的は、

出席カードを出すためだけだった。

はっきり言って勉強はしていない。

 

本を読むといっても、

最初は何を読んだらいいのかわからなかった。

 

そこで、書店で目に留まった、

新潮文庫の100冊から始めた。

 

この新潮文庫の特選図書100には、

国内外を問わず、あらゆる文学作品が網羅されていた。

 

この100冊をすべてを読んだ後、

2年くらいで300冊以上を読んだ。

 

これにより、

自分に起こった変化を私は実感したのだった。

 

それは、

①明らか頭がよくなった。

②情緒的に安定し、他人が許容できた。

③語彙が増え、レポート作成に生かされた。

④自分に自信ができた。

⑤たまった本はミカン箱に詰めて

実家に送っていたため、親からの小遣いが増えた。

等である。

 

本は、

芥川、漱石、志賀直哉、太宰、川端、

ドストエフスキー、ユゴーなどの有名どころはすべて読んだ。

また、筒井康隆、星新一、三浦綾子、松本清張などが好きで、

これらは全作を読んだ。

 

大学2回生の後期の授業中、

こんな事件があった。

 

私は、いつものように一番後ろの席を陣取って、

本を読んでいたが、

それが教授にバレていて、

ある時、指摘されたのだった。

 

100人以上聴講していたのに、

教授が、私に、

「一番後ろの青いシャツの君」

と言ったのだった。

 

私は読書に没頭していたから

初めは耳に入らなかったが、

「お前、呼んでるよ」と、

友達が教えてくれて気づいた。

 

私は、「ヤバい、

この授業の単位落とした」

と思った。

 

私は立ち上がると、

教授に「読んでいる本を持って前に来なさい」と言われた。

 

他の学生は、笑っていた。

また、親指を下にして「終わったな。」

という学生もいた。

 

授業名は「宗教学総論」だったと記憶している。

 

私は前に出て行き、

「すみません」と謝った後、

文庫本を手渡した。

 

教授が本を見て、さらにペラペラとめくり、

こう言った。

 

「君はトーマス・マンを読んでいるのか。

トーマス・マンだったら許そう。

だけど授業も聞かないとダメだよ」と。

 

私は席に帰り、

文庫をしまってノートを開けた。

 

なぜか私はすごく気分がよかった。

逆に褒められた気がしたのだった。

 

それ以来、この先生の講義は

真面目に受けた。

 

今となっては懐かしい、

そして誇らしい思い出だ。

 

その「トーマス・マンだったら許そう」

と言ってくれたことが嬉しかった。

私は教授に感謝している。

 

 

私は就職してからも、

ずっと読書をしてきた。

実益も兼ねた、

大変生産的な趣味となっていた。

 

30歳を越えてからは、

社会科学関係や、ハウトゥー本に

シフトを変えた。

 

仕事に生かす本を選んだためだ。

 

読書で知識を増やすと、

仕事上のアイデアの創造につながった。

 

また、プレゼンする時は、

蓄積した知識が「つかみ」をカバーした。

 

読書の効果は計り知れない。

趣味であり自己投資であり、

自分という人間の核にもなっている。

 

最後に、これまで私が大変影響を受けた本を

列挙する。

 

①「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(宗教のエートスが産業革命勃興のきっかけになった。)

②システム改革の政治経済学(新自由主義への批判。著者は民主党が政権奪取時のブレーンで東大名誉教授)

③サピエンス全史(ホモサピエンスだけが生き残った理由は、虚構を信じる能力があったから。)

④「金持ち父さん貧乏父さん」(会社で一生懸命働くことの成果は、何もしない役員の老後の安泰のためであって君のためにはなっていない、という示唆。)

⑤「現存在と時間」(人間の宿命は変えられない、だから作者のハイデッガーはナチスに加担していった。)

⑥「暇と退屈の倫理学」(最近読んだ。人間は暇と退屈には耐えられない生き物。)

⑦「監獄の誕生」(学校も支配者が支配しやすくするために檻に入れて洗脳するところ。)

⑧「氷点」(三浦綾子作、汝の敵を愛せ、というキリストの教えで貫かれた若い頃に読んだ本)

 

前編終了