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父が知らない土地で孤独死していた。


警察から遺体の引き取りの連絡があったが、私はそれを拒否した。


今でもそれに100%納得している訳ではない。


最期くらい情けをかけてやっても良かったかな、などと思う気持ちも多少ある。


しかし、考えても今更どうする事も出来ない。


私の中の父親は、今でも古いアルバムの中の若かりし姿のままである。



そんな父の死から3ヶ月が経ったある日、私と妹の所に身に覚えのない弁護士事務所から封書が届いた。


父が住んでいたアパートの大家さんの依頼を受けた弁護士からだった。


この時ほど日本の法律を恨んだ事はない。


35年前に勝手に嫁と娘を捨てて姿を消した人間でも、法律上親子関係は継続していた。


そして、私と妹には父が残した負の遺産(滞納した家賃)を相続する義務があった。


しかもその3ヶ月という期間が私と妹を父の呪縛から逃げられないようにしていた。


法律では人が死ぬと、その人の財産は正、負問わず妻や子に引き継がれる。


そして、それを放棄するには3ヶ月以内に【相続放棄】の手続きをしなければいけない。


絶対に。


法律の専門家はその3ヶ月を待って、私達姉妹に連絡をしてきたのである。


私は愕然とした。



もちろんその弁護士、大家さんを責めるのは間違っている。


悪いのは全て私の父親である。



かと言って、私と妹が父のために普通車一台分のお金をドブに捨てるのはどうしても納得がいかなかった。



狼狽える妹と、離婚が成立しており父との関係が切れ、自分には関係のない呑気な母を尻目に、私はネットと図書館で徹底的に情報を集め勉強した。


法律の専門家に頼めばどうにかしてくれたかもしれないが、こんな人間のためにびた一文払いたくなかった。



しかし、最初は3ヶ月を過ぎてしまっては法律上厳しいとの情報ばかり。

正直心が折れそうになった。


そんな中、ある方が同じような経験をしたという内容の情報を見つけた。


【裁判所に嘆願書を出す】


私はこの最後の手段に一縷の望みをかけた。


ネットで相続放棄の書類を用意した。


そして、嘆願書を書いた。


いかに父親不在のあと我々母娘が苦労し、今の幸せを築いたか、


今回の事は全くの寝耳に水で、父とは35年間音信不通であったこと、


妹も私も家庭があり、お互いに子育てにお金が必要な時期でとても払える状況に無いこと


など

思いを込めて事実を書き連ねた。


そして、相続放棄の申請書と共に某裁判所に送った。



正しく【人事を尽くして天命を待つ】といった境地であった。



それからどれくらい経っただろうか。



ついに裁判所から相続放棄を認める文章が送られて来た。



やった。



今までの人生において、これ以上の成功体験は未だない。



私はその有り難い文章をコピーし、早速弁護士事務所に送った。



今度こそ本当に父と親子の縁を切る事が出来た。