高市先生。ありがとうございました。
皆さんこんばんは。
何度も書き直し、気が付いたらいつの間にかこんなに時間が・・・
ごめんなさい。
先生は、いつも調教も競馬も、内容にこだわる方でした。
普通キャンターでもそうですし、早いところをやる際にも、出た時計よりも馬の動きを良く見て検討していくスタイルでした。
これは昨今の、調教の時計や着順の数字を重視するスタイルとは違った、職人気質なスタンスでした。
「馬を育てる」
そこに重きを置く方針だったのです。
一番初めに障害を仕込ませていただいた牝馬の記憶が残っています。
僕が「一生懸命走ってるんですよ。でも弱さが残っていて・・・一生懸命頑張ってるのですが」
というと、
先生が「そうなんだよな。この馬なりに頑張っているんだよなぁ・・・」
と、苦笑いなのか微笑んでいたのか、は判断しかねましたが、温かい目をされていたことを覚えています。
オフビートもそうですし、マイケルもそうです。
こういう風にやろうという指示はあったものの、最初の1F何秒で入って上がり3Fは何秒な。
なんて指示を先生から受けたことが僕にはありません。
それ以上に、馬の動きとテンション、上がってきた際の歩様や息遣いに注視されていた方でした。
競馬でもそうです。
装鞍所で無事に鞍をつけ終え「よろしくおねがいします」と申し上げると
大体が「頼むな。」の一言のみ。
鞍は曲がっていないか。
馬体が奇麗に磨けているか。
不備はないか?
人に内容を求めるよりも、自分の仕事を完璧にこなそう。
そして送り出そう。という方でした。
強いて言うなら、この馬の後ろには気をつけろ等の忠告はありましたが、ゲート出てからとか、どこでどうこう、あーしろこーしろは皆無。
二人して「競馬って最後に先頭に立ってればいいんだよな?」
なんてよく笑ったものです。
この姿勢が勝負へと向かう僕のプレッシャーと恐怖心をどれほど解してくれたことか。
スタッフの皆さんもそうです。
先生は馬だけでなく、人を育ててきたのだと思います。
マイケルの担当である佐藤君は、僕よりマイケルを良く知っています。
僕も以前は毎日マイケルに乗っていましたが、今では誰よりも。
むしろ、僕が乗る以上に安心して任せられる有能な人材です。
それは他でもない。
先生が育てたのです。
思い返せば、マイケルや他の管理されている馬たちが歩んでいる一つ一つの競馬が先生を鼓舞し、支えていたのかと思います。
でもその分、辛く、しんどい場面もあったのでしょう。
先生、どうぞ心配しないでください。
先生が育ててきた馬と人は、先生の遺志を継いでいますから。
先日、通夜と葬儀より一足先に先生へ感謝とお別れを言いに、ご遺体を安置されている処へと行きました。
安らかに眠る先生。
訪問に気づき、すぐ挨拶にきてくださった奥様と大江原先生。
瞬時に大粒の涙を流し始めた奥様に
「なんだよ~今までずっと涙は我慢してたのにな」
と瞳を潤ませる大江原先生。
「金子君の顔を見たらね。主人が何度も何度もレースを見て、嬉しそうにしていた姿が思い起こされちゃって・・・ごめんね。本当にありがとう」
そう伝えてくださる奥様の姿に、僕も涙が止められませんでした。
そしてこれを書きながら、また涙があふれて仕方ない。
先生、ありがとうございました。
先生が育ててきた馬と人を、どうぞこれからも温かく見守ってください。光希
追記
何度も何度も読み返し、いろいろ伝えたいことが皆さんに伝わっているか心配だ・・・。
僕は先生と一緒に夢を見ていた。
見続けて、それを叶え続けたかった。