忘れたい事、忘れちゃいけない事
皆さま、こんにちは。
一週間ぶりの更新になってしまいました。寮長です。
今週は土曜日に二戦目を迎える、おナス(ナスノオー号。普段、おたんこナスなことばっかりしているので、愛着を込めて)
昇級戦のエス(エステヴァン号。調教で引っかって辛いので。毎朝、僕はドM状態です。)
のニ頭に騎乗させて頂けることになりました。
まだ未知数の両馬。
今回も。そしてこれからも楽しみで仕方ないものです。
では、先週末を振り返って・・・
「おはようございますー!」
低い障害が設置してある馬場へと馬に跨りながら向かうと、そこには蛯名先生が仁王立ちしていた。
挨拶と共に、軽い会釈を交わす。
角馬場で小さな障害を飛ばし準備運動を終えた後、ダートコースの連続障害へと向かった。
無事に飛越を終え、止めようとしたその瞬間だった。
馬場内を一台の救急車が走り抜ける姿が目に留まる。
あとは、御存じの通りだろう。
ものの五分前に会話を交わした師は帰らぬ人となった。
(心よりご冥福申し上げます。)
複雑だった。
悲しいし残念極まりないのだが、それは家族の方にからすれば比べ物にならないものだろう。
ただ数分前に会話して、元気な姿がそこにあったのに、もう会えないという事実が僕の中に暗く重い深淵を刻みこんでいった。
競馬を終えた後も、その澱んだ感情をぬぐい去る事は出来なかった。
勿論、仕事に影響を及ぼすような感情は持ち込まないし、きっぱりスイッチを切り替える。
しかし、こういう経験は慣れるものではなかった。
強いて救われる思いだったことは、小学校の同級生が日曜の夜に花見に誘ってくれ、一時の憩いをもたらしてくれた事だ。
競馬を終えた冷め切らぬ火照った身体で酒を煽りながら、ボーっと考える。
「あぁ・・・楽しいな。生きてるんだな俺・・・」
まだ温まりきらぬ夜風が紅潮した頬を心地よく撫で、そして疲れた身体を癒してくれた。
翌朝、祖母の家に宿泊していた僕は、手料理を食べながら昨夜のことを思い返していた。
楽しかったな。
またみんなで飲みたいな。
あと何回遊べるかな。
そしてあと何回、祖母の手料理を食べられるんだろう・・・
傍らにいる80歳になった祖母は、痛む膝や腰をかばいながら愛犬を撫でていた。
自分は普段全然まっとうな事を考えていないし、しょっちゅう忘れる物事が多い。
軽くアルツハイマー的な自分が怖いが、だからこそ考えるときに考えておきたいこともある。
いつかくる別れ。
限られた時間の中で、離れて暮らす自分が会える回数はもっと限られている。
悲しみや苦しみは全て忘れ、楽しい思い出だけを残し謳歌したいものだが、そう甘いものでもない。
分かってはいるが、でも、限りのある中だからこそ何かをしてあげたい。
俺よ。今の気持ちを忘れるな。
自分の為に今日の日記を書き記しておこうと思う。