障害事件 | 金子光希オフィシャルブログ「そらとぶおにいちゃん」Powered by Ameba

障害事件

皆様、こんにちは。
今日は先週の結果と合わせ、障害レースについてお話させて頂きたいと思います。

いつも通り、微妙に長くなってしまいそうで申し訳ないのですが、しばしお付き合いくださいませ♪


さて、先週の障害未勝利はグレートバルサー号に騎乗させていただいた訳ですが、
5番人気11着と悔しい結果になってしまいました。

内容としては、先生に受け賜った指示通り、先行好位の3番手に位置をとることが出来たのですが、初めて走るコースだったからでしょうか・・・

バルサー君、正面一つ目の障害で右へ、「てぇ~い!!」

後方の馬には支障なかったのですが、2~3頭分ヨレて飛んでしまいました。

他馬の妨害をしてはマズイということで、走るリズムを崩さないよう心がけつつ真っ直ぐ飛越出来る様、
馬を誘導するのに集中することにしたのですが・・・


そんなに器用ではない自分。
やはり何か一つに集中してしまうと、ペース判断や周囲の状況(後続馬の気配など)
の察知が完全では無くなってしまうんですよね。


でもしかし兎にも角にも、無事に完走しなければならない。


完走出来なければ、馬券を買っているファンの皆様に申し訳がたたない。
乗せてくださった馬主さん、調教師の先生をはじめとする厩舎の皆さんに顔向けできない。
そして、この馬のこれから先の競走人生(馬生?)にも影響を及ぼすかもしれない。


考えすぎかもしれませんが、無事に完走することはそれだけ重要なことだと僕は考えています。


正面3つの障害、その後コース右手にあるコーナーの障害を無事にきれいな飛越で走り抜けた僕とバルサー号に、勝負心に火が灯り出す向こう正面の二つ目の障害で事件は起こりました。


焦りからか、それとも恐怖心を抱いたのか・・・
彼は迷いを持ち上手く身体を使えず、闇雲に障害に突っ込みました。


(皆さん、小学校で跳び箱を学んだのを覚えていますか?)

縦に置いた跳び箱を、上手く飛び越えるには踏み切り板を上手く使い綺麗な弧を描いて飛ぶ事が理想ですよね。

では、焦って勢い良く飛び越えようとしたら、どうでしょう・・・

踏み切り板を上手く使えずに、そのまま跳び箱に突っ込む・もしくは無事に着地することが出来なくなる事となるのは安易に想像がつくと思います。


馬は400~500キロ以上も体重のある生き物です。
そして、その先端に重い頭がついている。


跳び箱と違い板は無いですが、障害を飛越する際の踏み切る位置はそれほど重要なんです。

上手く綺麗な飛越をすることが出来なかった、バルサー号と僕。
ひっくり返ることは無かったのですが、バランスを崩し危うく落馬しかけました。

VTRでは分かり難かったのですが、パトロールビデオ(レースの流れを前後側面から写しているカメラ)で確認しますと、人間が馬の背からずれて半分落馬していました。

我ながら良く落ちなかったと感心ものなのですが、何処から見てもピエロの曲芸にしか見えないくらい滑稽でした・・・;w


それから先は上手く飛越していたのですが、彼の気持ちにどう影響したのでしょうか・・・

余力がないというよりは、気力を無くしてしまったように感じました。


一つのミスが、命取り。
これは障害だけでなく、フラットな平場のレースにも言えることですが難しいものです。


「障害って怖くないですか?」


この仕事をしていて、よく聞かれる質問です。

そのとき僕は飾りもせず「怖いっすよ~!!」とおちゃらけながら答えています。

だってホントに怖いんだもん!!

なんて言いつつ、実際レースが始まったら怖いなんて言ってられないんですけどねw


怖いと思ったら身体が強張る。
強張っていたら、いざという時に対処が出来ない。
考えるよりも早く、一瞬で身体が反応するくらいじゃないと間に合わない。

そんなこともあるんです。

昔、障害レースに騎乗していて今は調教助手をされている先輩がこんなことを言ってました。

「年をとって身体が利かなくなるのも辞めた理由の一つだが、それ以上に心が折れてしまうんだ・・・いくら気持ちを鼓舞しても身体が恐れを覚えたらこの仕事はもう出来ない。」

重い言葉です。


でも、だからこそ感じれる障害レースの良い部分もたくさんあります。



障害を飛越する際の「人馬の一体感」
見ていても・・・
そして、乗っているとそれ以上に爽快で気持ちの良いものです。

たとえ今回がダメでも、月日をかけ再び成長していく人馬たち。


そこで求められる肉体・精神面でのタフさ。

山を登り、谷を下り、迫り来る恐怖を乗り越えるレース。



そして、その先に待っている栄光のゴール。


例えるなら、
まるで人生の縮図を見ているかのような・・・

だから僕は障害レースが好きなんです。