見てはいけないものを見てしまいました。 | 金子光希オフィシャルブログ「そらとぶおにいちゃん」Powered by Ameba

見てはいけないものを見てしまいました。

競馬に騎乗する前日の18:00から入室する調整ルーム。

こちらでは、外部との連絡を断ち、公正確保や心身の調整をするために入室するものと定められている施設です。

では、その一コマをどうぞ。

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茨城から新潟競馬場まで約四百キロの長旅。

到着し、とりあえずサウナに入る。


サウナから出て食事をし、部屋でゆっくりする事にした。


毎週の事ではあるが、いささか疲れがたまっていたのか、
気付いたら寝てしまった。



PM9:00


目が覚めた。

「う~ん…もう無理だよぅ…むにゃむにゃ」

何が無理なのか、自分でも良く分からないが、二度寝開始。




AM2:00過ぎ


再び目が覚めた。

それと共に、喉の奥に渇きを覚える。


「何か飲もう…」


部屋から廊下に出ると、そこは夏の夜

蒸し返し、こもる生暖かい空気が気持ち悪い。
そして、やけに重く感じた。



「調整ルームって、たまに変な話しを聞くよな…」


そう…

全国各地にある競馬場で、自分達が宿泊する調整ルームには、何処のルームでも何か不穏な話しが付き物なのだ。

あるルームで、真夜中に自分の部屋で寝ていて、人の気配を感じた者


あるルームでは、寝ていて耳もとで何人かの念仏らしき声を聞いた者


今は騎手を引退した先輩は、口が裂けても言いたくないモノを見てしまったらしい。
凄い男気のある方なのだが、そんな方が口が裂けても言いたくないほど怖いモノって…
想像つかない。



速く高鳴っていく鼓動

それにつれて、自然と足取りも速くなった。


食堂に着き、自販機で飲み物を買う



チャリンチャリンチャリン…
ゴトンッ!ジー…



誰もいない食堂の静寂の中、響く機械音が俺を現実へといざない、余計に不安をかき立てる。



ソファーに座り、冷たい飲み物で喉を潤す。


ふぅ…
落ち着きを取り戻し、目の前にあった新聞を手に取った。


ガサガサ・・・
ペリ、ペリリ・・・


新聞を広げ、一枚、また一枚とゆっくりめくる。


聞こえるのは、喉を通る水分と紙のめくれる乾いた音だけ。



その時だ…



ふと感じる背後からの気配


静寂の中、俺の胸だけが速く高く鼓動する。



手に汗を握り、後ろをゆっくり振り向くと…









特に何もなかった。




だが俺のハートは、とうに限界を越え、救心を求めていた。




一刻も早く、ここから立ち去りたい。

足早に食堂から出る。


ふと立ち止まり、一階まで降りてきたついでに、風呂場にある体重計に乗っておく事を思いつく。



余計な事はしないものだ。

ここから本当の恐怖が待ち構えていた…





風呂場に着き、一糸纏わぬ産まれたままの姿になる。

そして体重計に乗った。





ピッ…

体重計が数値を指し示す。


んん!?





ピッ…





もう一度乗り直した。







見間違えかと、目を擦りもう一度





ピッ…





体勢の所為かと後ろ向きでもう一度





ピッ…





とりあえず四つんばいになってもう一度





ピッ…





・・・。

ゾッとした。

体重がサウナ入る前と変わらない。





そこには、変な格好で体重計と格闘する男がいた。
(※たぶん続かないです。)