アニメーションの祖国・フランス。 

近年、フランスのオタクたちは 

「ジャパンエキスポ」 

なるイベントを毎年開催するほどまでに 
日本アニメ・日本漫画を支持し、 
フランスのアニメ・漫画業界も、日本から 
多くのノウハウを吸収してきた。 

そんなフランスのアニメ会社・Zagtoonが 
日本の東映アニメーションと組んで 
てんとう虫をモチーフとした変身魔法少女を 
主人公とする新作TVアニメ 

「ミラキュラス・レディーバグ」 

Miraculous, les aventures de Ladybug et Chat Noir

を制作し、世界120か国で 
放映するとブチ上げたのは、 
4年前の2012年のことだった。 

同年発表された、 東映アニメーション制作の
「ミラキュラス・レディーバグ」のPV。 
非常に高品質なデモ映像だ。 

「東映の本気」がここに見える。 


https://www.youtube.com/watch?v=FlwV3scCgAM 

ところがZagtoonは、 
この2Dアニメ版「レディーバグ」の 
制作を凍結してしまった。 

その代わりに、韓国のSAMG Animationに 
発注して、3Dアニメーション版の 
「ミラキュラス・レディーバグ」が作られ、 
昨年から韓国、フランス、 
そしてディズニーチャンネルで 
この3D版の放映が始まっている。

 

 

 


2Dと3D、みなさんはどっちの 
「レディーバグ」がお好みだろうか? 

私は正直言うと、そもそも 
この「レディーバグ」なる変身ヒロインは 
斑点がキモい、という印象が 
第一に来てしまうので、 
キャラクターとしてはあまり 
個人的に好きなほうではない。 

にも関わらず、3D版は 
とにかく映像が美しく、テンポも良いので 
ついつい引き込まれて観てしまう。 

一方、2D版は、良くも悪くも 
「いつもおなじみの日本アニメ」だと感じる。 

たしかに高品質ではあるが、 
わざわざ国際分業コラボで作るアニメとしては、
いささか新味に欠ける面があったことも否めない。 

東映アニメーションのブランド名は引き続き 
本作の「共同制作者」としてクレジットされているが、 
実際にいま、東映が主に担当している分野は 
「キャラクター事業の展開」である。 

韓国の3Dが、日本の東映アニメを蹴落とした。 

この「レディーバグ・ショック」という珍事に 
日本のアニメ関連メディアの多くは、 
いまだにダンマリを続けている。 

そんな東映アニメーションが 
アニメ制作の作画委託で近年、 
韓国に代わる下請け発注先として

多くを依存しているのは、「フィリピン」である。

 

しかしフィリピンのアニメ会社とて、いつまでも

「人件費メリットだけがウリ」 
「人海戦術だけが取り得」

の下請だけで甘んずるつもりは、毛頭ない。 
 

日本経済新聞 2016年6月14日朝刊 より、
以下引用。 
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日本では今でも紙とペンで作画するが、トゥーンシティは2012年に一連の全工程をデジタル化。アニメーターの数を3分の1の400人まで減らして「生産性を飛躍的に高めた」(デルロサリオCEO) 
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引用終わり。 

トゥーンシティは、ディズニーやユニバーサル等の 
下請をやっているフィリピンの企業である。 

アニメ制作の現状は、労働集約型産業である。 
人海戦術で作り上げて、ようやく採算が取れる。

日本アニメは、この2Dアニメ産業に

伝統的な職人の徒弟制度の要素を

適度に加味しながら、発展を遂げてきた。

 

「人間国宝」めいた職人たちを

綺羅星のごとく育て上げるシステムとして、

日本は確かに優れている。

だが、職人芸だけに頼っていては

生産性は上がらず、結局のところ、

アニメに携わる人たちの中でも、

ごく一部のエリートしか

まともに食べていくことはできなくなる。

 

そこで日本のアニメ業界は、

かつては韓国に、そして最近はフィリピンにと、
ただ「安いから」と考えて、

安易に仕事を投げることで採算を取ってきた。


その間に韓国は、日本の下請をこなす片手間で 
ディズニーに学んで3Dにも力を入れ、 
3Dの分野で易々と日本を追い越してしまった。 

そして今、フィリピンのアニメ産業も 
得意の英語力を活かして 
ハリウッドから意欲的に仕事を受注し、 
IT技術を積極的に活用して、 
日本にもアメリカにも出来なかった 
アニメ制作工程効率化の一大イノベーションを 
巻き起こしつつあるわけである。 

近い将来、フィリピンまで 
アニメを国産化するようになったとき、 
日本にはいったい、何が残るだろうか?