図書館で予約していた青山美智子さんの小説が届きました。
新年度最初の投稿で紹介できて嬉しいです💕
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青山美智子『月の立つ林で』(ポプラ社)
「私がいるよっていうのは、あなたがいるよって伝えるのと同じことだと思うの。彼女を想ってる私の存在が、彼女の存在の証しになるんじゃないかなって」
―「一章 誰かの朔」より
看護師を辞め、職探し中の女性。
お笑い芸人を目指す青年。
娘の結婚報告に戸惑う父親。
居場所を見つけられない女子高生。
もっと作品を作りたいと願うアクセサリー作家。
それぞれに悩みを抱える5人を主人公にした短編集です。
彼らに共通するのは「ツキない話」というポッドキャストを聴いていること。
タケトリ・オキナを名乗る青年が月の豆知識を語る番組で、これがなかなかおもしろそう。
1ヶ月の始まりを何故「ついたち」と呼ぶのか。
月は球体なのに、どうして平べったく見えるのか。
何気ない豆知識が背中を押してくれたり、ハッと何かに気付かせてくれたりします。
一章に出てきた「地球と月の距離」の話が印象的でした。
地球から月までは約38万km。
アポロ11号が4日と6時間かけて辿り着いた長さ。
確かに遠いけれど、月が地球の地軸を調整し、気候を安定させるにはちょうど良い距離でもある。
一方で物事が上手く行かず落ち込んだり、他人を拒絶したりする主人公たち。
人や物事との距離感も、地球と月のようにうまく掴めたなら。
タケトリ・オキナはそう願っているように思います。
彼の正体は結構意外。
三章辺りで「この人じゃないかな~」と予想したんですが、全然違いました(笑)。
「ただ誰かの力になりたいって、ひとりひとりのそういう気持ちが世の中を動かしているんだと思う」
―「四章 ウミガメ」より
『木曜日にはココアを』と同じく、それぞれの物語は1つに繋がっています。
知らないうちに誰かを助けたり、逆に助けられたりしているのがすごく良い。
一章と五章の繋がりに気付いた時は思わずジーンときました。
ほんの僅かな関わりでも、相手の言葉や気遣いに救われることってありますよね。
真っ暗な新月でも月は確かに存在しているように、信頼できる人や助けになってくれる人は必ずどこかにいる。
そう感じさせられる温かい物語でした。
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近くの公園に咲いていた桜🌸 だんだん色付き出しています。
今日も読んでいただきありがとうございました。
新年度もよろしくお願いします(^^)/