こんばんは。

 

 夜、久しぶりに大学時代の友人たちとLINEしました。

 何でも友人の一人がTwitterを始めたんだそうで「ぜひフォローしてくれ~」とのこと。どうやら私の知らないうちにみんなTwitterを始めていたようです。何となく使いにくそうで敬遠していたTwitterですが、この機会に始めてみようかな(´▽`)

 

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 昨日読了したのがこの本。「注文の多い注文書」を読んでから、小川洋子さんの本に興味が出てきたので、図書館で借りました。

 

 小川洋子「猫を抱いて象と泳ぐ」(文藝春秋)

 

 「大きくなること、それは悲劇である」。この箴言を胸に十一歳の身体のまま成長を止めた少年は、からくり人形を操りチェスを指すリトル・アリョーヒンとなる。盤面の海に無限の可能性を見出す彼は、いつしか「盤下の詩人」として奇跡のような棋譜を生み出す。静謐にして美しい、小川ワールドの到達点を示す傑作。

                 ―Amazonの内容紹介より

 

 チェスは勝負であると同時に、静かな会話でもあるのかもしれません。寂しくも感動的な物語でした。

 

 

 チェスプレイヤーとなった少年の、一代記のような小説です。劇的な展開はあまりなく、淡々と進むのですが、続きが気になって一気読みしてしまいました。

 

 主人公の少年は、上下の唇がくっついて生まれたせいなのか、とても寡黙でしたが、廃バスに猫と住む大男「マスター」からチェスを習い、才能を開花させます。このチェスが彼の人生となり、言葉に代わる会話の手段となるのです。

 

あの子には言葉なんかいらないんだよ。だってそうだろう? 駒で語れるんだ。こんなふうに、素晴らしく…

                        ―第12章より

果して自分は、棋譜よりも雄弁な言葉など持っているだろうか。e2のポーンをe4へ動かすよりももっと豊かな言葉が、一体どこにあるというのか

                        ―第18章より

 (ちなみに、e2のポーンをe4へ動かすというのは「キングス・ポーン・ゲーム」といって、チェスの定跡の1つなんだそうです)

 

 

 ある時、テーブルチェス盤の下に潜ることで力を発揮できることに気付き、重要な局面になるとチェス盤の下に潜って手を考えるようになりました。少年はこれを海に潜ることにたとえます。

 

そう、チェスだ。木製の王様を倒すゲーム。八×八の升目の海、ボウフラが水を飲み象が水浴びをする海に、潜ってゆく冒険だ

                          ―第2章より

 

 この暗示的なセリフからすると、マスターは最初に会った時から、少年の未来がある程度見えていたのかもしれません。

 

 やがて彼はからくり人形「リトル・アリョーヒン」に入り込んで、海底チェス倶楽部や「エチュード」という老人ホームでチェスを指すようになります。私が好きなのは、海底チェス倶楽部篇とエチュード篇の両方に登場する「老婆令嬢」とのエピソード。時に優しく、時に力強く少年を導く様子が素敵でした。それだけに、エチュードでの再会シーンは泣けます。

 主な舞台は4箇所ぐらいで、あまり動きません。もっといろいろな所を旅してチェスを指すという、ロードムービー的な展開を期待していたので、そこは少し残念でしたが、その分1つの場所での物語が濃いので、これはこれでおもしろかったです。

 

 

 「リトル・アリョーヒン」の名前の由来になっている実在のチェスプレイヤー、アレクサンドル・アリョーヒンの写真(左側)。4章で少年が見たのは多分これです。猫を抱いている姿がエレガントですね。棋譜も美しく「盤上の詩人」と呼ばれていたのだとか。

 

チェス盤は偉大よ。ただの平たい木の板に縦横線を引いただけなのに、私たちがどんな乗り物を使ってもたどり着けない宇宙を隠しているの

                        ―第13章より

 

 ちなみに私はチェスが指せません(一応小学生の頃はボードゲームクラブに入ってたんですけどね(^^;)。 だからといってチェスのシーンが楽しめないということは全然なく、深海や湖、日光などにたとえられた表現で、場の雰囲気は凄く伝わってきました。

 

 淡々とした物語なだけに、最後はあまりに呆気なく、そして寂しく終わってしまいます。彼はもっと称えられてもいいじゃないか!と思うのですが、少年は多分目立つことを望んでいないし、そうでないからこそ「伝説のチェスプレイヤー」になったのだと考えると…これが最高のエンディングと言えるのでしょうか。

 

 

 何も知らずに借りた本ですが、年末に良い物語が読めました。

 

 

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 今日もお読みいただきありがとうございます。

 

 今日で仕事納めなので、しばらくのんびりできます(その間に今年のまとめ記事とか書けたらいいなあ)。図書館もしばらく閉まっちゃうし、今の内にたくさん借りてこよう!

 

 それではまた。