1 求められている能力

「暗記」に基づく抽象的,観念的,定型的記述ではなく,問題に即した憲法上の理論的考察力,そして事案に即した個別的・具体的考察力を見ることを主眼としている。
(平成23年出題の趣旨)

事案は仮想のものであっても,全く新しい議論をさせようとするものではなく,法科大学院の授業,基本判例や基本書の理解から身に付けることが可能な基本的事項を正確に理解し,これを基に,具体的問題に即して思考する能力,応用力を試すものである。
(平成22年採点実感)

2 出題者の怒りにふれないこと
憲法の出題の趣旨,採点実感では出題者が怒っています。したがって,まず採点者の怒りに触れた答案から低い評価になっていきます。憲法の場合,周りが沈むのを待っていればボーダーの点数は守れます。憲法は難しいです。既修者であっても多くの方が壁にぶつかるでしょうし,ロースクールの単位を落とした方もたくさんいるでしょう。自分の思ったことが正しいと突っ込んで書いたら評価される場合もあれば,そうでない場合もあります。旧司の時代から水物といわれる科目です。無理をせず,基本的知識をもとに怒りに触れない答案を書けば低い評価にはなりません。

3 事案を丁寧に読むことから始まる

まず何よりも,答案作成は,問題文をよく読むことから始まる。問題文を素直に読まない答案,問題文にあるヒントに気付かない答案,問題と関係のないことを長々と論じる答案が多い。
(平成23年採点実感)

問題文はよく読むこと。問題文の通りに主張,反論というように色分けすれば,意外に答案構成そのものになることが多いです(平成23年の問題を分析してみて下さい)。

4 法令違憲と適用違憲を区別すること

法令違憲を論じているはずなのに,その理由として,Aの目的や注意書き添付といった個別的行為を理由に違憲の判断を導くものが圧倒的に多く,実際には適用違憲(処分違憲)の論述をしていた。
(平成20年採点実感)

昨年と比べて・・・・内容面でも,例えば,まず法令違憲の主張を行い,それが認められない場合でも適用違憲(処分違憲)を論じるというように,両者の関係の理解が適切と思われるものが増えるなど,違憲判断の方法に関する理解ができてきているように思われた。
(平成21年採点実感)

法令違憲と適用違憲(処分違憲)の区別は,新司が始まった初期のころはそれができるだけで評価される答案になりましたが,今日では当然の前提となっていますので,ここで躓くと大減点のおそれがあります。
ここでまず注意をしなければならないのは法令違憲の中で個別具体的な事情を出すのは間違いということです(平成20年採点実感引用部分)。憲法演習(旧カリキュラムの公法総合演習Ⅰ)では立法事実と司法事実の区別を演習の中で問われることがあると思います。
立法事実とは,その法令が作られた基盤となっている事実です。
法令違憲では法律自体の合憲性を判断するわけですから,その判断材料も当該法律が根拠としている事実ということになります。「Xさんが生活保護を支給されなかった」というような個別具体的な事実に基づいて法律が作られているわけではないですよね。ですから,こういう具体的事情を法令違憲で論じることは間違いなのです。
先ほど具体例に出したような事実は司法事実といって当該具体的事件に関する事実のことです。司法試験の問題には司法事実がたくさん散りばめられていることが多いです。
このような事実は適用違憲で論じます。
適用違憲は法令を当該具体的事件に適用したことの合憲違憲を判断するのですから,司法事実を取り上げて論じることになるのです。まずは法令違憲・適用違憲,立法事実・司法事実の区別をしっかりとつけることが出来るようにしましょう。
勉強の格好の材料は判例です。判例を学習する際には原告は法令違憲・適用違憲をどのように区別して主張しているのか,裁判所はどのような立法事実・司法事実に着目して判断を下しているのかを明確に意識することをオススメします。
憲法の思考方法は一朝一夕では身に付きません。判例をこのような視点で学習することを繰り返すことにより憲法の思考方法がわかってくると思います。

法令違憲と適用(処分)違憲の区別を意識した答案が,ここ3年間で着実に増加してきたことは,評価できる。しかし,当該問題において,必ず法令違憲と適用(処分)違憲の問題が両方存在するとは限らない。今年の問題の場合,生活保護法の法令違憲性を検討したものなど,不適切な答案が目立った。当該事案において,いかなる点の憲法違反を検討すべきかをよく考えることが重要である。
(平成22年採点実感)

皆さんの中には常に法令違憲と適用違憲の両方を論じなければならないと思っている人もいるかもしれません。
しかし,司法試験の問題には個別具体的な事情がたくさん散りばめられています。法令違憲を論じる場合にはこのような事情は用いることができないのですから,どうしても書きにくくなるでしょう。また,当事者の立場に立って考えてみてください。あなたがもし生活保護を打ち切られた場合,憲法25条を持ち出して生活保護法の違憲性を主張しますか。
生活保護法が違憲となれば,再度支給されるための根拠となる法律がなくなってしまい当事者の救済にはつながりません。それよりも自分に対してなされた打ち切りという処分が憲法25条に反していると主張する方が直接的な当事者の救済となります。
法令違憲と適用違憲のどちらをメインで論じるべきかは問題によります。
あくまで一つの例を挙げると,仮想法令が資料として添付されており,その仮想法令が制定されるにいたった過程の事情が詳細に書かれている場合には法令違憲をしっかりと検討してくれというメッセージです。これに対して,個別具体的な事情が多数散りばめられている場合には適用違憲をしっかり検討するようにとのメッセージです。

処分違憲の審査で,法律適用の合法性,妥当性のみを論じる答案が今年も多かった。憲法との関係を論じないと,合憲性審査を行ったことにならない。
(平成23年採点実感)

答案を作成する際に気を付けなければならないのは,あくまでも「憲法論」を織り込まなければならないということです。例えば,行政機関が何らかの処分を行ったことに不満を持つ者がその処分を取り消すために「憲法○○条に反し違憲であり,取消事由となる」と主張するとしましょう。これはどこかで見覚えがありませんか。そう,行政法の主張と同じなのです。憲法も行政法も「公法」ですから同様の主張をすることは何ら問題ありません。しかし,憲法論を織り込まなければ行政法の答案になってしまいます。憲法の試験であるということを忘れないようにしましょう。

5 法令違憲の論じ方
(1) 近年,司法試験受験生の間では「『憲法上の権利』の作法」が大ヒットしています。ここでは,この本を参考に「三段階審査」という論じ方について簡単に説明したいと思います。三段階審査とは,法令審査を,
①国家行為が基本権の保障する領域に関わるか(保護領域の画定)
②その国家行為が基本権の制限となっているか(制限)
③その基本権の制限が憲法上正当化できるか(制限の正当化)
という順序で思考することです。
(2)ア 保護領域の画定について
そもそも憲法の保障する領域に含まれていない権利が制限されたのならば,憲法違反していることにはなりません。「憲法の保障があるにもかかわらず,これが制約されているんだ」と主張したいのですから,保護領域を丁寧に検討する必要があります。もちろん争いなく保護領域に含まれるであろうものについては,簡単に認定しても構いません。

問題となる権利について十分な検討がなく,観念的・パターン的な論述に終始しているため,違憲性判断の論述の説得力も弱く,論証が不十分になっているとの印象を受けた。受験者には,問題文を読み込み,想像力を働かせて,少し条件を変えてみた場合はどうかなど思考上の工夫をしながら,事案の特殊性をつかみ,何を重点に論じるかを考えてもらいたいと感じた。
(平成23年採点実感)

ここで注意をしなければならないのが個別具体的な権利に着目する必要があるということです。平成23年の問題では原告が制約されているのは表現の自由一般なのでしょうか。違いますよね。制約されているのは「会社がインターネットで地図画像を提供するという利益」です。この利益がどのような性質のものかを論じて21条1項に含まれるということをしっかり認定しましょう。

イ 制限について

法令や処分の合憲性を検討するに当たっては,まず,問題になっている法令や処分が,どのような権利を,どのように制約しているのかを確定することが必要である。次に,制約されている権利は憲法上保障されているのか否かを,確定する必要がある。この二つが確定されて初めて,人権(憲法)問題が存在することになるのであり,ここから,当該制約の合憲性の検討が始まる。
(平成22年採点実感)

ここで問題とするのは,当該法令が第1段階で認めた憲法上の権利に対する規制となっているかということです。この第2段階で否定される問題はそう多くはありません。なぜならば,引用した採点実感にもあるように,制限されている権利に着目して第1段階の時点で保護領域を画定しているわけですから,第2段階ではその権利が制限されていると認定できる場合が多いからです。

ウ 制限の正当化について
判例を勉強していると,憲法上の権利は絶対無制約に保障されるわけではないことに気が付くと思います。第1段階で認めた憲法上の権利に対して第2段階の制限があるとしても,それが正当化されるならば,その法令は合憲となるのです。

答案構成としては,「自由ないし権利は憲法上保障されている,しかしそれも絶対無制限のものではなく,公共の福祉による制限がある,そこで問題はその制約の違憲審査基準だ。」式のステレオタイプ的なものが,依然として目に付く。このような観念的でパターン化した答案は,考えることを放棄しているに等しく,「有害」である。
(平成23年採点実感)

ここでまず注意をしておきたいのは「公共の福祉」の使い方です。百選に掲載されている古い判例を見ると,権利の制限は「公共の福祉」さえあれば何でも出来てしまうかのような書きぶりです。条文上も「公共の福祉」という文言が出てきます。「公共の福祉」とは,「人権相互の調整の原理」(内在制約説)と理解している人が多いと思います。しかし,これだけでは人権が対立しているときのみ「公共の福祉」による制約がなされることになってしまいます。平成21年の問題のように研究のもたらす社会への危険性というのが正当化要素として認められる場合もあるでしょう。
このように「公共の福祉」という一言で制約を正当化することはできないのです。試験委員が個別具体的な事情を使ってほしいと思っているのは,第1段階の保護領域画定の部分や違憲審査基準のあてはめ部分だけではありません。一体どういう対立利益があって憲法上の権利が制限されているのか,ということを事案に沿って具体的に摘示する必要があるのです。
正当性を検討する際に着目すべきは「権利の重要性」と「制約の重大性」の2点です。これらは当該事案に即して検討しなければなりません。当該事案で表現の自由一般が規制されているわけではない以上,「表現の自由には,自己実現の価値・自己統治の価値があるので……」と論じても意味がないです。どのような権利が問題となり,その権利が保障されるものにとってその権利がどれほど重要なものかを丁寧に論じるのです。また,「届出制は許可制よりも規制態様は弱く……」と一般論を述べても説得的ではありません。設問に添付されている仮想法令の中ではもしかしたら届出制という名であっても,実質的には許可制と何ら変わらないくらいの強度を持った規制態様かもしれません。そのため仮想法令の仕組みをしっかりと把握・引用しながら制約の重大性を認定していくのです。

原告の主張,被告の反論とも,およそあり得ないような極端な見解を述べ,「あなた自身の見解」では中間の立場を採るといった,技巧に走る答案は求められていない。
(平成24年出題の趣旨)

「原告側の主張」と「被告側の反論」において極論を論じ,「あなた自身の見解」で真ん中を論じるという「パターン」に当てはめた答案構成によるものが多かった。そのため,論述の大部分が,後に否定されることを前提とした,言わば「ためにする議論」の記載となっていた。このような答案は,全く求められていない。
(平成23年採点実感)

原告は厳格審査基準,被告は合理性の基準,私見は中間基準というのは確かに書きやすいですが,問題となっている事例でそれが想定されているのかは慎重に判断しないと怒りにふれることになります。

求められているのは,「事案の内容に即した個別的・具体的検討」である。あしき答案の象徴となってしまっている「当てはめ」という言葉を使うこと自体をやめて,平素から,事案の特性に配慮して権利自由の制約の程度や根拠を綿密に検討することを心掛けてほしい。
(平成23年採点実感)

ここから先は皆さんもよく知っている違憲審査基準の定立です。あてはめの部分で間違っても司法事実を挙げないように気を付けましょう。ここで一言付け加えるならば,再現答案を見ていると目的はとりあえず簡単に認めて,手段審査の方で頑張るというものが多い気がします。しかし,原告の立場から考えると目的さえも認められないものもあるはずであり,手段審査は「仮に目的が必要不可欠だとしても……」というようにして書いていけば問題はありません。もしも目的は争わないものと勘違いしている人がいると困るので,注意を促しておきます。

エ あてはめの注意点

観念的・抽象的・パターン的「当てはめ」という解答姿勢を取る受験者の心理は,一種守りの姿勢で,受験生心理としては分からなくはないものの,「事例に迫る」意気込みを感じないものであって,司法試験で事例を基に憲法問題を問うという出題の根本理念を失わせるものであり,極めて不適切であり,「有害」である。
(平成23年採点実感)

事案の分析をほとんどせずに,直ちに違憲審査基準の議論に移行し,一般論から導いた審査基準に「当てはめ」て,そのまま結論に至るという答案が相当数見られた。このように,審査基準を具体的事案に即して検討せずに,審査基準の一般論だけで規則の合憲性を判断するのでは,事実に即した法的分析や法的議論として不十分である。
(平成21年採点実感)

憲法もあてはめが勝負と思って,違憲審査基準は三者間で変えずに,あてはめで挙げる事情と評価を変えて書き分けたつもりになっていることはありませんか。そのような答案はたいてい評価が恣意的になってしまい,自分ではうまく書き分けたつもりでも,読み手には説得力のある論述にはなっていないことがあります。

6 適用違憲の論じ方
憲法演習や公法総合演習Ⅱでは,重要な判例の下級審判決から読むことが求められています。下級審では,原告が様々な主張(およそ認められないだろう主張も含めて)をしていると思いますから,法令違憲と適用違憲それぞれの主張を区別しながら読むようにしましょう。
原告の主張を見てみると,ほとんどがこの適用違憲です。日本の裁判所は法令違憲を
ほとんど出さないことは周知の事実ですよね。実務家であれば,勝訴の可能性のより高い主張をするのは当然であって,これは司法試験の問題を解く際も同じだと思います。
適用違憲においても検討する思考過程は法令違憲と同じです。第1段階,第2段階を丁寧に認定するところから始まります。しかし,第3段階で法令審査と異なるのが違憲審査基準を用いることはないということです。違憲審査基準はあくまで立法目的や立法目的達成手段を裁判所が審査する基準に過ぎません。司法事実が問題となる適用審査では立法目的も立法目的手段も出てきませんよね。このことは,憲法演習(公法総合演習)で徹底的に学習することと思います。
適用違憲の第3段階の論じ方の一例を示すと,まず憲法上の権利の重要性や制約の重大性から法令の文言を解釈します(合憲限定解釈など)。制限される憲法上の権利が重要だったり,制限の程度が重大であれば,原告としては文言を厳格に解釈した上で,「その要件に私は含まれません。だから処分をするのは憲法○○条に違反しますよ」と主張していくのです。少し刑法各論や行政法の思考に似ていますね。ただ,先ほども注意をしたようにあくまでも「憲法」の答案であることを忘れずに憲法に根差して要件を解釈するようにしてください。

7 出題の趣旨・採点実感等に基づく答案の具体的イメージ
具体的な答案の書き方について悩んでいる方もいると思いますので具体的なイメージを摘示します。合格者の再現答案を分析すると主に2つの論述方法があります。
1つは,原告の主張を見出しの紹介程度にとどめ,私見ですべてを論じるというものです(少数派)。原告の部分を労力なく論じることができ,書きたいことの詳細は私見で大展開すればよいのですから一見簡単に思います。しかし,試験委員が求めている答案はこういうものなのでしょうか。被告側の反論とは異なりわざわざ設問の1つを使って原告の主張を構成せよと問うているのですから,充実した論述を求めています。

設問1では,原告側は一定の筋の通った主張を,十分に行う必要がある。
(平成22年出題の趣旨)

設問2では,「被告側の反論を想定しつつ」検討することが求められている。想定される被告側の反論を書く部分では,結論として憲法上のポイントだけを記せばよい。……被告側の反論の詳細な内容や論拠は,「あなた自身の見解」で書くことが求められている。
(平成23年出題の趣旨)

原告側が一定の筋の通った主張をしようとすると前述のような書き方は求められていないということが分かります。後述のように被告の反論はコンパクトで良いとされていること,私見における理由の説得力を問われていることを含めて考えると,三者の分量は原告・被告・私見をだいたい4:2:4くらいにするといいでしょう。

原告側の主張,被告側の反論,あなた自身の見解がかみ合っていない答案,現実離れした答案が多いと感じた。問題点を的確に把握し,それを主張・反論,検討という訴訟的な形式で整理する実力が求められるので簡単ではないが,議論がかみ合っているかどうか,例えば,主張に対して反論が有効か,自身の見解がその対立点を押さえた論述になっているかなどは,答案構成の時点できちんと意識的に検討してほしいと感じた。
(平成23年採点実感)

被告の反論を長々と書いてはいけないし,被告だけが独立した意味のない主張になってはいけません。法律の答案は,主張,反論が意識されている必要がありますが,憲法だけあえてそれが明示されている趣旨は,そのことを十分に留意して各主張が噛み合うような答案を書きなさいということだと思われます。
「あなた自身」の結論や理由を「原告と同じ」あるいは「被告と同じ」と書くだけでは,全く不十分である。X社側あるいは被告側のいずれかと同じ立場に立つにしても,それらとは別の見解を採るにしても,求められているのは,X社側及び被告側それぞれの見解を検討した上で「あなた自身」の結論及びその理由を述べることである。問われるのは,理由の説得力である。
(平成23年出題の趣旨)

私見においては,その被告の反論に応える形で,指摘した憲法的問題点に対する見解を示します。出題の趣旨からもわかるように,求められているのは説得力のある理由づけであって,違憲審査基準を無理矢理に三者間で書き分けることは要求していません。

8 論述力不足を嘆いている

そもそも,問題点に即応した法律の小論文を書くことの訓練が不足しているのではないであろうか。
法科大学院としても,ドグマから脱却し,法律実務家として必須である「ペーパーを書くこと」にも力を注ぐ必要があるように思われる。
(平成23年採点実感)

憲法は出題の傾向が最も安定しています。そのため対策は立てやすいはずですが,憲法を苦手とする方が多いように思います。そのような方は基本書の抽象的な憲法の勉強に陥っていませんか。憲法は実際の判例に触れて,原告・被告・裁判所がそれぞれの立場からどのような主張・判断を行っているかを勉強しなければ,答案の具体的イメージを持つことが出来ません。さまざまな事例にあたって自分なりに三者の立場を整理したり,あてはめでどの事情を合憲・違憲の判断要素としているのか,合憲・違憲を分けた決め手となる事実は何かなどを考えたりすると憲法の勉強が楽しくなると思います。これを答案の形で書くことが出来れば理想ですが,答案構成や図表の形で整理・検討するだけでも論述の勉強にはなりますので,ぜひ試してみてください。

9 点を稼ぐというより,点をいただくという姿勢で
以上のことに注意しながら答案を書くだけで印象が良くなります。おそらくその段階で3000番以降になることはないと思われます。
誤解をおそれずに言うのならば,憲法の基本書に書いてあることを使わずに,憲法的な発想や思考で具体的な事実に着目して紛争を解決している答案が良い答案であると思います。基本書に書いていることを振り回しても理解しているとは評価されないし,逆に,憲法を理解している人の答案は難しいことを書いていなくても評価されるのです。
そして,究極的には,問題となる人権を制約することが違憲か否かが聞かれているのですから,その人権制約を正当化するほどの対立利益が何かを意識した上で,両者のバランスをいかにしてとるのかという悩みが見えるように三者の主張を展開するようにすると良い答案になると思います。

<ポイント整理>
①法令違憲と適用違憲,立法事実と司法事実をしっかりと分けよう
(形式面での注意)
②三者の主張がかみ合うように,争点や主張を整理しよう
③憲法の抽象論を振り回すのではなく,当該事案の具体的事情から憲法論を展開しよう 42