
何年か前に本屋さんで、目にとまって
買った本を読み返してみました。
著者 野地秩嘉(のじつねよし)
ノンフィクション作家
2009年夏に秋田のスナックで
イベリコ豚のメンチカツを食べたこと
から、イベリコ豚を見にスペインへ行き
豚を仕入れ、「マルディグラハム」を販売
する。
2013年12月に販売するまでの多くの人
との出会いがとても面白い。
イベリコ豚とは、イベリア半島固有の畜産
イベリカ種のことを指す。
スペインにイベリコという地区はない。
豚のことはスペイン語でCerdo(セルド)
といい、これに続けると、Oで終わる
語尾変化によってIberica(イベリカ)が
Iberico(イベリコ)となる。
Cerdo Iberico (セルドイベリコ)だ。
つまり、イベリコ豚とはイベリカ種の
豚のこと。豚の種類を指す。
イベリコ豚はヨーロッパに残る唯一の
放牧豚で、一般的には黒い皮膚の色と
毛が硬いのが特徴。
イベリコ豚が食べるどんぐりとは、
樫の木の実。
イベリコ豚は脂肪を筋肉組織内に浸透
させる能力に長けていると言われ、
肉組織の中に脂肪交雑が多く見られる
ことが、通常の生ハム(ハモンセラーノ)
よりもはるかに長い熟成期間(2~3年)
に耐えうる理由。
それがイベリコ生ハム独特のナッツの
ような風味につながっている。
またイベリコ豚は体内の肉や脂肪に高い
濃度でオレイン酸、ビタミンB群、
抗酸化物質を蓄積できることから、
脚のついたオリーブ(の実)ともいわれている。
製造行程は極端に言えば、塩漬けと熟成
のふたつであり、もっと簡単に言えば、
塩をまぶしたものを屋内に吊り下げるだけ。
日本でよく見る普通のハムの方が調味液に
漬けたり、ボイルしたり、スモークしたり
と工程が多いけれど、生ハムは天日干しを
しない干し物だと思えばいい。
高級生ハムのなかには40ヵ月以上も熟成を
かけるものがあるが、要は製造会社の
懐具合である。
スペインで、生ハムの値段を見たけれど、
イベリコ豚でも安いものなら、一本5000円
くらいからあったが、高い物だと6万円
もした。
日本に持ってきたら倍以上だろう。
生ハムの値段を決めるのはイベリコ豚の
質と熟成期間なのである。
生ハムは常温で温め、脂肪が溶けてから
食べるもの。
脂肪が溶け出さない生ハムは質がいいとは
言えないから食べてはいけません。
脂肪が溶けるかどうかを見極めるのです。
生ハムを切るときモモの裏側を上にする
のは最初に美味しいところを食べる。
ホセ・ゴメス(スペイン最大のベジョータ
だけを使う生ハム会社の社長)によれば、
ギフエロのホセリート社は生ハム作りに
適した場所であり、素晴らしい風の
通り場所であるらしい。
2年間放牧したベジョータで生ハムを
作り、最低でも5年間は熟成させる。
ホセリート社は豚の飼育から生ハム作り
まで一貫して手掛けており、「ローマ時代
からの製法」で作っているのは他にない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美味しい食品になるかどうかは最終的には
経営者の魂だ。
完璧な物を作れるかどうかは理屈じゃない。
魂だ。
スペインでは子供が生まれたら生ハムを
一本、贈る。
誕生日にも生ハムを一本。
みんなで食べる。
小学校の入学式でもたべる。
結婚した人には生ハムをプレゼントする。
会社を退職した人にも贈る。
一生、生ハムとは縁がきれないんだ。
これまで、ノンフィクション作家として、
さまざまな場所に行き、多くの人に会った。
ポール・マッカートニーと高倉健に会って、
本にしたのはわたしひとりだ。
つまり、わたしは、インタビューもできるし、
文章も書ける。
しかし、ハムが作れるとは想像したことも
なかった。
人は何の経験がなくとも、バカになって
突っ込んでいけば、誰か助ける人が出て
きてくれる。
そうすればハムを作ることはできる。
人間はやればできる。
すくなくとも、ハムを作ることはできる。
ハムができたんだから、わたしは
ソーセージも肉まんもケーキも、
ポテトチップも、食品ならば作ることが
できるのではないか。
商品を作るのは能力ではない。
情熱だ。
以上です。
本当のイベリコ豚の生ハムが高いことに
納得するとともに、人との出会いが面白い。
良かったら読んでみてください。(*^-^*)