第10回グズグズ寺の反省。 | 神田松之丞ブログ

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毎月のスケジュールと、演目などを更新していきます。

また、自主興行のテーマなども書いていきます。

先日は、第10回グズグズ寺お越し頂きましてありがとうございました。

その際にアンケートまで書いて頂きまして、恐縮です。必ず参考にさせて頂きます。
こういう結果をネットにのせていいものか迷いましたが、名前も完全に分かりませんので、あえて部分的にピックアップさせて頂きます。

個人情報ではなく、個人願望ですから。

小笑兄さんにやらせたいネタリスト
「孝行糖」「猫と金魚」「ちりとてちん」「化け物使い」「お菊の皿」「ろくろ首」「のっぺらぼう」「蛇含草」「五人男」「貧乏神」「夢八」「野ざらし」「棒鱈」「仕草の多い噺」「アメリカンジョーク」「船徳」「人情八百屋」「花筏」「大安売り」「松曳き」「天狗裁き」「やかんなめ」「粗忽の使者」「将棋の殿様」「つるつる」「山号寺号」

松之丞
「殺人系のネタ」2票「お札はり」「あの頃の夢」「琴星版沖田総司」「翠月版佐賀の夜桜」「間垣と度々平」「色恋の噺」「清水次郎長伝」「髪結新三」「五貫裁き」「徂徠豆腐」「怪談」

柳若
「茶の湯」「猫と金魚」「ちりとてちん」「不動坊」「蒟蒻問答」「もう半分」「粗忽の使者」「お化け長屋」「禁酒番屋」「七度狐」「よかちょろ」「佐々木政談」「柳田格之進」
「徂徠豆腐2」「千人坊主」「抜け雀」「祇園会」「野ざらし」「宗論」「金明竹」
「もぐら泥」「千両みかん」

昇也「青菜」2票 「明烏」「猫と金魚」「小言幸兵衛」「ちりとてちん」「化け物使い」
「若旦那出てくる噺」「愛犬チャッピー」「心眼」「野ざらし」「大師の杵」「一眼国」
「蒟蒻問答」「狸札」「四段目」「風呂敷」「阿武松」「たがや」「花筏」「堀の内」


こんな感じですかね。ゲストの方は、差し障りがあるのでネットにアップ出来なかったのですが。

皆様、アンケートに書いて頂くくらいですから、マニアックというか、詳しいのが良く分かります。

特に、小笑兄さんのネタは、お客様がよくキャラを把握しているなぁと思いますね。

さぁ、今回のグズグズを振り返ります。

昇也「だくだく」
最初、固いまくらから緊張感ある感じで入っていきました。いわゆる落語のまくらという。

もうね声ちっちゃいんですよ。死ぬ直前の生き物のボリュームでしたね。

終わった後「最初、やたら声ちっちゃくなかった❓」と聞いたら「自信がないと声ちっちゃくなるんです」と言われましたね。どんだけ自信なかったんだという。

ただえらいもので、序盤から中盤にかけて受け出すと、演者がのりだすという。不思議なもので。声のボリュームも少しあがり、噛まなくなるという。

結局、良い高座ってお客様と演者のコラボなんですね。「あれ、ちょっと緊張しているなぁ、ほぐすために強めに笑ってあげよう」みたいな装置が意識的か無意識か分からんのですが、お客様に働くという。まぁ、そういう会とはいえ、それに甘えていいのかは分からんのですが。

そこらへんは夢七がいた時は、お客様が演者を操縦して、オモシロ空気がずっと出続けてました。脳内モルヒネを自分で作っていくお客様と、ダメダメな演者のコラボでしたね。

もっとも昇也君は落語の地肩が強いので、最終的にはお客様を引っ張っていくのですが、そこはネタ下ろしなので、完全に引っ張れないという。

終盤とか完全に尻上がりな感じでいきたいんでしょうけど、言葉がスピードにのって出てこなという。出そうとしてるんだけど、出てこない感が伝わりました。私にも経験があるので、いたいほど分かるという。

ここがイメージ記憶の弱点という。それでも、あれだけごまかせんだから腕が凄いなぁと。ただ、終盤は一言一句が大事なんですね。身に覚えがあるので、胸に突き刺さりました。

ただ、改めて「だくだく」の空気感みたいなものを、ネタ下ろしから出来てるって凄いという。「~のつもり」って、かなり現代のセンスで突っ走れるネタなので、これはそういうセンスと空気感が出せる演者という点で、昇也君向いてるんだろうなぁと。まぁ、完全に得意ネタになるんだろうなぁと思いました。

うーん。個人的にはお客様リクエストの中だったら「風呂敷」が聴きたいです。遊雀師匠の感じで。


柳若「町内の若い衆」

ここらへんから少し冷房がきつくなり、それではと着替えだして、耳だけで聴いてたんですけど。すげぇ腹の立つ女房だったなぁという印象が。あと、声が大きいので、柳若さん向こう40年以上生きるんだろうなぁと思いましたね。生命感がすごいという。ローン組んでるような意気込みでした。

当然柳若さんですから、ネタ下ろしからクオリティー高いんですけど、聴いてて何か難しいんだなぁと。

私、講釈師で落語やってないから、こういう小ネタみたいなのの感触が分からないんですよね。

自分の皮膚感覚で同じ系統の感じの噺がないので。だから、こういう噺のどこに山を持ってきて、がぁっーといくのかの構成が難しいなぁと。

勿論まくらから受けてましたし、何と言ったらいいのか分からないんですが。

だからこの噺、難しいんだなぁと勉強になりましたね。

アンケートのやつでは、「もう半分」「粗忽の使者」がいいなぁ。柳若さん、何でも出来るでしょうけど。

鯉八「我が組織」
うーん、何でしょうね。

色々な新作派の人がいます。ベテランの真打から二つ目までいますが、もう、そのセンスという意味において、全体の三本の指に完全に入っているなぁと思いますね。

レベルが違うというか。もっと受ける新作の人はいますし、大勢の老若男女を笑わせるタイプの人はいます。いわゆる兄さんのは売れる新作ではないんですが、完全にドッカンドッカン笑わせている他の真打の新作より、はるかに面白いなぁと。笑いの角度が違うんですよね。抽象的な言い方なんですけど。これ真似出来ない角度なんですよ。

実は一部の新作派は真打も含めて分かっていると思います。プロはね。ただみんな圧倒的に鯉八兄さんが凄いというのは意識的に言わないんですけど、全然レベルの違う土俵にいます。(分かってないで、凄いと言ってる人はいますけど)

現時点で私の知る限り、新作派で真打も含めて3本の指に入ってるなぁと。異論はあるでしょうけど。私の知る限りそうだなぁと。

今回の新作がどうのではないんですけどね。

何かずっと売れないでいて欲しいですね。これだけの才能を泳がせるだけ泳がしている時間が、また面白い作品を生むでしょうから。

今回の新作に関しては、兄さん的には駄作なんでしょうけど。駄作でもこのクオリティーという。

ただ、自分の面白いと思う物を純度100パーセントで出すタイプの新作は、売れるとい事を大前提に考えるなら、何かに寄せる必要はあるんでしょうね。イメージ的には純度70パーセントくらいが売れるんでしょうね。


小笑「松山鏡」

この柳若、鯉八、小笑という、鹿児島の流れが堪らなく良いですね。西の方から来た人達だなぁという。

「田舎者が難しいんだよぉ。松之丞君」と言ってましたが、もう顔でいけますし、そういう事を求められてないんで大丈夫です。そういう思いを込めて「問題ないですよ」と言わせて頂きました。

やはり、とてつもなく面白いですね。「松山鏡」事態が重いお客様とか、おくようなネタなので、エライ武器を兄さんは手に入れた感が凄いなぁという。

アンケートの中でやって欲しいネタは「貧乏神」「のっぺらぼう」ですかね。


松之丞「中村仲蔵」

【私が思う仲蔵のイメージ】

ご見物が喜ぶ事を価値基準に生きている。絶対ブレない。唯一ブレる時は、自分が良いと思った芸がお客に受け入れられなかった時。それは稲荷町から上がってきた自分の最大のバックボーンは、ご見物からの人気であると思っているから。
ゆえに非常に孤独。毎回誰よりも真剣勝負。危機感を常に持っている。仲間内から嫌われている。

【今までの仲蔵でいらないと思う所】

女房いらない。侍との会話いらない。見るだけでいい。最後、師匠に褒められて喜ぶとか、あのくだり全部いらない。

これを基準に講談の台本から再構成しました。まだまだなんですけど、今までの仲蔵よりは好きです。

あと、本当に良いものとかは、受け入れるのに少しタイムラグがあるという事も視野に入れました。

まだまだ変化すると思います。

そんなこんなで、次回のグズグズは7月22日月曜の夜、19時から。
らくごカフェ、¥1000です。

是非是非、お越しを。
\(^o^)/