本当であれば、あの事故で洋子が死んでしまうはずだった事。
洋子が死んだ未来から来た俺と洋子の婚約者が、
陽太に事故の場所、事故を起こす車を教えた事。
すぐに現場に向かったが、間に合わずに仁美の名前を呼ぶので精一杯だった事。
そして未来の俺と洋子の婚約者を呼んだのはあの桜の木だという事。
その話の中で陽太は洋子の婚約者の名前が村山だという事を当て、
頬に少し残っている痣は村山がつけたものだから、
この痣に指が一致するはずだと証拠を主張した。
桜の木は俺たちには計り知れない力を持っていた。
もともとここにあったのはこの公園であり、
桜の木が俺たちだけに自分の居る場所へ行けるようにしてくれていた。
しかし、陽太に洋子の危険を知らせるために力を使ってしまった為に
自分の場所と、俺たちを繋げなくなってしまった。
だから、丘の上公園と桜の木は無くなったのではなく、
きっとどこかにあるのだ。
俺たちがあいつの事を忘れないでいれば、
きっとまたあいつの方から逢いに来てくれるはずだ。
という自分の仮説を、話しの最後に付け加えるように言った。
俺は信じようと思った。
そして陽太の言うとおり桜の木にはいつか再び逢えるのだと信じる。
洋子も話の途中からハンカチで目頭を押さえながら聞いていたので
信じていることだろう。
桜の木と俺たちは確かに繋がっていたのだ。
それは、単に物理的な事だけではない。
俺たちがあいつを大事だと想うように、
あいつも俺たちの事を大事に想っていてくれていたのだ。
もう逢えないはずがない。 俺たち四人の中にはあいつがいる。
いつだって繋がっているのだから。
今日、ようやく仁美が退院する。
俺も陽太もこの日は仕事を休めるようにしていた。
これから四人であの公園へ向かうつもりだ。
またあいつに逢えることを信じて。