先日、立て続けに、2人のミュージシャンの訃報に触れました。
もんたよしのり、そして谷村新司。
二人とも、自分が子供時代に、テレビでよく観ていたミュージシャンでした。
もんたよしのりといえば、大多数の方が「ダンシング・オールナイト」の人、と思うでしょうし、自分ももんたよしのりを知ったきっかけは、この曲でした。
しかし、自分がもんたよしのりで一番好きな曲は、この「ダンシング・オールナイト」に続けてリリースされた、「赤いアンブレラ」です。
スローバラードのこの曲、派手さはありませんでしたし、「ダンシング・オールナイト」のような大ヒットにはなりませんでしたが、ハスキーボイスのもんたよしのりがこの曲を歌うと「男の色気」が漂う感じがして、子供時代の自分はこの曲のもんたよしのりに(同性ながら)キュンキュンしていました。
この曲を、今回改めて久しぶりに聴きました。
この曲の題名は「赤いアンブレラ」ですが、歌詞の中には全く赤いアンブレラは登場しませんし、具体的なシチュエーションはほとんど語られません。
それでいて、曲全体に哀愁と寂寥感が漂い、聴くものの情緒を揺さぶられます。
今久しぶりに聴いても、むしろ子供時代に聴いた時より一層心に響き、もんたよしのりのカッコよさを再認識させられる、そんな曲です。
そして、谷村新司。
自分は子供の頃から、テレビやラジオ番組を通じて、アリスとして、そしてソロとしての谷村新司の楽曲に触れてきました。
そのそれぞれの曲は、特にメロディーなどは自分の子供心にも響いていましたが、正直それらの曲の歌詞に関しては、あまり関心を持ちませんでした。
しかし、自分が成人して改めてアリスや谷村新司の曲を聴くと、子供の頃には分からなかった曲の歌詞が、自分の心に響くようになりました。
特に、谷村新司作詞のアリスの曲には、女性の視点で語られる失恋の曲がいくつかあり、「冬の稲妻」「涙の誓い」などは、恋愛で傷ついた女性の心情が、情念を込めて綴られています。
その、谷村失恋ソングの究極ともいえる曲が、今回紹介する「帰らざる日々」です。
♪ 最後の電話 握りしめて
何も話せず ただじっと
あなたの声を聞けば 何もいらない
命を飲みほして 目を閉じる
失恋した相手に電話をかけ、相手と通話しながら服毒を図る女性の心境を歌った、壮絶な曲です。
(今の世の中で、少なくともメジャーにおいてこのような曲がリリースされる事は、まずないでしょう。)
この曲を聴くと、まさに真の恋愛とは、決して戯れごとではなく、自分の生命さえも賭けた業の深い営みなのだと改めて思います。
もんたよしのり、谷村新司。
子供の頃から見ていて、それでいて今、歳を重ねた自分に、さらに刺さってくる作品を作り上げてくれたお二人。
このお二人のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。