今日のテーマは、村上春樹です。
自分はこれまで、村上春樹の作品は、長編、短編含め、ほぼ全作品を読んでいます。
最初に読んだのは、まだ10代の時。「風の歌を聴け」だったか、「ノルウェイの森」だったと思います。
それから現在に至るまで、断続的に村上春樹の作品を読んできました。
かと言って、これが世に言う「ハルキスト」、つまり村上春樹の熱心なファンかというと、これは全然違う気がします。
村上春樹の作品は、自分にとって一番近い感覚でいうと、「何となく読んでしまう」といったところです。
読んで面白かったか、感銘を受けたか、と聞かれると、「う~ん」と言った感想になります。
それでも、自分の中で思っていること。
それは、自分にとっては、村上春樹の作品は、長編より短編の方が、はるかに面白いということです。
長編は、正直にいうと、あまり自分の好みには合いません。
唯一、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』は好きな作品です。
おそらく、自分の中に、村上春樹の長編を読み解くだけの読書力が欠けているのかもしれません。
しかし、村上春樹の短編は、結構自分にとっては波長が合うのです。
これは自分でも不思議に感じます。
その村上春樹の短編の中でも、自分がこれまで読んで印象深かったもの。
それが、短編集『回転木馬のデッド・ヒート』に収録されている、「レーダーホーゼン」です。
この短編、文庫のページ数にして20ページほどの、短めの作品です。
主人公(村上春樹当人か)の妻の友人が語る話を書いた、やや私小説風の短編となっています。
妻の友人が、自分の両親が唐突に離婚をした、という話から、何故両親が離婚をしたのか・・・というエピソードになっていくのですが、このエピソードに、レーダーホーゼンが関わってきます。
レーダーホーゼンといっても、ピンと来る人は少ないかもしれません。
これは、ドイツの民族衣装である半ズボンです。
では、なぜこのレーダーホーゼンと、両親の離婚が関係するのか。
この小説では、人間の日常生活における、感情の「揺らぎ」がテーマになっています。
村上春樹は、この短編で、そのわずかな揺らぎのようなものを、レーダーホーゼンに託して見事に描写しています。
ただ、この短編は、その辺の描写が微妙に過ぎるので、読む人によっては、「ちょっと訳が分からない」という感想を持つかもしれません。
でも、その微妙なバランスの上に成り立っているこの短編、自分は感心しました。
その他にも、自分にとって、村上春樹の短編にはいくつか好きな作品があるのですが、それはまた機会があれば書くこととします。