伸びやか と 暢びやか

 

書道では 批評のことばに“のびやかに書けています”という褒め言葉があります。

 

辞書で 「のびやか」を引くと「伸びやか」と出てきて、「暢びやか」はありません。

”暢びの良い線で書ける”という意味で 今までずっと「暢びやか」を使ってきましたので、「伸びやか」では納得いきません。

 

手元の漢和辞典で調べてみると、そもそも音読みは異なりました。

 

 = シン、のびる、のばす

 = チョウ、のびる[申(のびる)と易(チョウ)(長い)の組み合わせ]

 

意味は 「のびる、のばす」という点で違いはありませんが、

 

手持ちの漢和辞典で調べて、もう少し深く考えてみることにしました。

 

「伸」は のびる、のばす。背伸びをする。まっすぐになる。長くなる。

     のびのびする。はればれとする。

     述べる、申す(もうす)(追伸)。

    *単純に長くのばす、まっすぐのばす

 

「暢」は 長くなる。生長する。のびのびする。

     やわらぐ。ゆきわたる。とおる。

     文章や言語などの意味が良く通じる(流暢)。

     述べる。のばす。

    *長くのびることは「伸」と同じですが、少し深い意味を含むようです。

 

というところで、書の評価に使うとして

「暢びやか」の方が、よりよい線で書かれているということになるのではないでしょうか。

 

 

書道では、「暢達の書」(ちょうたつのしょ)という言葉が使われます。

 

単に長く伸ばすのではなく、

 

線の引き始め(始筆)から引き終わり(終筆)までの間に

 

生長していく、のびのびとやわらぎを持って行き渡り、通り良くなっていくという

テクニックが存在して、「暢びの良い線」が出来てくると考えます。

 

したがって、辞書には無いけれど、「暢びやか」を 私は使いたいと思うのです。

 

しかし、「暢びやか」は辞書には無いので、差し詰め、

 

「暢達の線で書かれて大変よろしい」という評価になるわけでしょうか!

 

良いと思い込んでいた褒め言葉が、辞書に無かったことに心を痛め、疑問に思い、

それでも自認したくて、ここにあらためて調べ直した次第です。

 

参考:新字源(角川書店)、漢字源(学研)

 

 

 

 

実際に いろんな書線を書いてみました。

 

 

一番上は 手先だけで 真っ直ぐに伸ばして引いた書線

筆腹が付いたままです。

初級の頃は、こんなふうに真っ直ぐ書くのに一生懸命ですね!?

 

二番目以下は 

筆の芯を通して、体の芯(みぞおちのところ)から ぐいーんと動かして行った書線

これは 体で書くと言って、いろいろに表現できます。

なかなか難しいですが、中・上級になると要求される線です。

 

 

 

 

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