芸能王国渡辺プロの真実。

━ 渡辺晋との軌跡 ━

 

元渡辺プロダクション取締役・松下治夫

発行日: 2007年 7月12日。

 

 その渡辺社長とタッグを組み、クレージーキャッツ・ハナ肇・植木等、ザ・ドリフターズ、ザ・ピーナッツ、森進一、布施明、沢田研二、ザ・タイガース、小柳ルミ子、テレサ・テン、キャンディーズを擁して芸能界を席巻させ、ナベプロ王国を築き上げた著者の、渾身の芸能ノンフィクション。

 

渡辺プロ制作部長・松下治夫の著書について。この本は、以前に天地真理さんの記事を集めていた時に、ヤフオクやメルカリなどで目にしたことがあったが、何かおかしくないか。布施明、沢田研二、ザ・タイガース、小柳ルミ子、テレサ・テン、キャンディーズを擁して

 

誰かを忘れているようだが、

 

新潮45 2006年1月3日の記事から引用、

タレントのイメージをつくり込み、保全を徹底する渡辺プロの先駆的戦略は、当時、その世界で抜きんでていた。「天地真理」の誕生とヒットは、その最たる成功例ともいえた。彼女の快進撃とプロダクションの全盛期は見事に一致する

 

昭和40年男 2016年8月

彼女も一生懸命がんばった。渡辺グループのなかであの時代、一番稼いでましたから貢献度は大変なもんです

 

昭和40年男という雑誌のコメントは、渡辺音楽出版の社長を退任したばかりの中島二千六氏のコメントなので確かな話である。これを無視するとは、松下は何かやましいことがあるのか。本当に天地真理さんについて何も触れていないのか、全部読んでみないとわからないが、雑誌や本を集めるにしても優先順位というものがある。何も書いてないことを確認するために購入などしてられないので、長い間手に取ることはなかったが、少し前に手に入れたので全部に目を通してみると、本当に「天地真理」の名は全く出てこない。これはタレント本ではなく、芸能ビジネスとタレントのマネジメントについて書いた本ではあるが、主なタレントのエピソードと名前くらいは出てくる。無いのは「天地真理」だけである。

 

不自然ではあるが、せっかく手に入れたので、興味深い箇所を切り取り引用していきます。いくらなんでも前置きが長すぎる?

 

p3,4 渡辺プロダクションは05年に創設五十周年を迎えた。ぼくは五十周年を祝うパーティーに招待され、なつかしい面々と再会した。(中略)パーティーに集まった人々は、知っている人たちよりも、知らない人のほうが多かった。どこかの代理店の若手社員や、若手のお笑いタレントたちなど、ぼくたちが作り上げた時代を知らない人々がひしめき合っていた。時代の変遷を痛感させられた。

おそらく彼らは、社長以下ぼくたち社員がどれだけ知恵を絞り、体力を使い、苦心惨憺して、芸能ビジネスの世界を築きあげてきたのか、そうした経緯は知らないだろう。

 

社長夫妻に次ぐ、組織のNo.3として業務を取り仕切っていた松下といえども、遠い過去の人になってしまっているということですが、渡辺美佐名誉会長は、2024年現在でも健在のようですね。

 

 

p116 当時、レコードのシングルではなくてアルバムでセールスをのばしていたのは、フォークの連中だけだった。だから、彼らは力を持っていた。

 

1972年にアルバムのセールスをのばしていたのは、吉田拓郎であるが、この年に、吉田拓郎よりもアルバムをダントツに売りまくったのは、天地真理さんなんですね。いなかったことにされているようです。

 

p117 渡辺プロダクションはそもそもジャズからはじまって、ザ・ピーナッツに代表されるように本格的に歌えるシンガーを育成してきたプロダクションなのだ。(中略)やがてアイドル路線もやりはじめたのだが、それはNHKの依頼でキャンディーズを生み出したことから始まる。

 

天地真理のあれはアイドル路線ではなく何だったのか。徹底的に無視である。アイドルなんぞ渡辺プロの歌手として認めないということかもしれないが、この本で一番多く触れているのはキャンディーズのことなのである。

 

天地真理さんは、松下制作部長の預かり知らないところで入社してレッスンをしていた、その他多くのタレント候補の一人にすぎず、デビューさせるつもりも予算を割くつもりも全くなかったが、それがテレビに顔を出したら即人気者になって、勝手に売れてしまったということかもしれない。その後も、制作部長の思惑と違った進化を遂げていったので、松下からすると、邪道、論外ということなのかもしれない。

 

他所のサイトの、天地真理さんのマネージャー菊池哲栄さんのインタビューを勝手に引用

 

(園まりさんのマネージャーをしていた時の話)制作部長に何故か電話で捕まっちゃって「すぐ帰ってこい! お前なんかクビだ!」と言うわけです。でも、「そこまでにはならないだろう」と高をくくっていて、会社へ行ったら制作部長から「お前、クビだから。総務部長に言ってあるから」って言うんですよ。

 

いや、私は変人扱いされていたので。普通は上司が「この仕事をやれ」と言ったらやらなきゃいけないじゃないですか。でも、私はアーティストのためにならないと思ったら、全て拒否していました。

 

会社組織には合わないですよ。

 

制作部長の意に反して菊池マネージャーが勝手なことをやっているが、売り上げは一番であり、それでまた渡辺美佐副社長が甘やかすから、わがままで使い勝手の悪いタレントができ上ってしまったと思っていたのかもしれない。そんなタレントの売り上げが落ちてきたらどうなるのか、恐ろしい話である。

 

菊池マネージャーは、同じ大学出身の社長や他の幹部社員とは問題なかったのかもしれないが、松下制作部長と合わなかったのかもしれないですね。

 

この本はタレントマネジメントについて書いた本なので、マネージャーのエピソードがいくつも出てくるが、和久井保と菊池哲栄の名は全く出てこないですね。天地真理、和久井、菊池などについては、マネージャーとタレントの関係、駄目になっていくタレントの話として何度も触れているが、そんなところに実名を出せないということかもしれない。

 

文句ばかり書いているが、この本は大変読み応えのある本であり、興味深い箇所がいくつもあるので、次回も

 

続く。