個人的に是枝作品で一番面白かった作品は「海街ダイアリー」だったのですが、この作品はそれに次ぐくらい面白かったです。
是枝監督の作品ってどれも元ネタとして誰かの実体験がベースになっているようなリアリティがありますよね。
ただ今回観賞した「海よりもまだ深く」においては主人公がある女性の浮気を揉み消す場面と高校生をゆする場面がちょっとリアリティに欠けているように感じました。
探偵である主人公が浮気をしている女性に証拠写真の揉み消しを提案するのですが、初対面の探偵からそんな提案されたら後から法外な金銭や性的関係を要求してくると警戒されるだけだと思います。
だとしたらどうすれば良かったか?
例えば最初は主人公がドジを踏んで尾行がバレてしまう。
浮気中のカップルにカメラを奪われ証拠写真のメモリカードを取られてしまう。
「それが無くなったら調査料金が貰えない」とカップルに訴える。
立ち去るカップルに「まだ証拠写真は他にもありますよ」と言う。
カップルが残りの写真データと引き換えに調査料金を補填すると提案してくる。
主人公がそのお金を着服する。
実は尾行がバレたのは主人公の計算だった。
こうすれば自然だし緊張感も出て一石二鳥。
あと高校生をゆする下りは雑な犯罪すぎて、子供を大事にしている小説家志望という設定とは合っていないように感じました。
所長が着服に気付く下りを作りたいなら、主人公の揉み消しのせいで証拠がつかめずに金だけ払わされた過去の依頼者が自力で浮気の証拠を見つけてクレームを入れてきたという流れにすれば良かったと思います。
何故なら探偵がもみ消したのは証拠写真であり、調査対象者がその後全く浮気をしなくなるワケではないですから。
でもそんな細かいマイナス点が気にならなくなるくらい設定の面白さで最後まで観客を楽しませる力があるのが是枝監督の凄いところではあります。