ジャニーズの窮地で、際立つ「新しい地図」の緻密な戦略 来年のイベントでサプライズ情報も

10/4(水) 11:02


古巣の混乱をよそに仕事は順調だ

 新社名「SMILE-UP.」と、新たにタレントのマネジメントを行うエージェント会社の設立を明らかにしたジャニーズ事務所。被害者への補償や所属タレントの動向など、新体制へ移行しても、取り巻く環境は依然として厳しいものがある。

 その一方で2017年9月にジャニーズを退所し、創設から6年を迎えた共同プロジェクト「新しい地図」の稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾はまったくの“無風状態”で順調に芸能活動をこなしている。

「3人を率いるSMAPの元チーフマネジャーだった飯島三智氏は、数少ないジャニーズの内勤スタッフでした。そのため、ジャニー氏の性加害をまったく知らないはずはないのですが、一部メディアからの質問状には“知らぬ存ぜぬ”を決め込んでいます。イベント取材で立ち会っても、マスコミを避けるように、我々の前には姿を見せない。どうやら、嵐が過ぎ去るまで静観する構えのようですね」

 と、語るのはベテラン芸能記者。

「SMAPを売り出した手腕は大いにジャニー氏に評価され、次期社長候補に名前があがった時期もありました。SMAPの全権を持っていたことで、現場の関係者たちの“飯島詣で”は恒例の風景でした」

 確かに飯島氏の手腕は並大抵ではない。3人の退所後、ジャニーズ時代同様に有料ファンクラブを設立したところ、3日で10万人の入会があり、国民的アイドルグループの元メンバーだった3人の根強い人気をうかがわせた。また、当時のジャニーズ事務所は肖像権にこだわり、各WEBメディアにおけるニュース記事での写真掲載はNGで、SNSはもってのほかだった。写真の許可など“ネット規制”が緩和されていくのは、19年7月にジャニー氏が亡くなってからのことだ。一方、「新しい地図」は真っ先にSNSにも進出。Facebook、Instagram、LINE、Twitter(現・X)、微博(ウェイボー)、YouTubeの公式アカウントを次々に開設し、PR活動のツールとしてフル活用したのである。

退所に伴い、19年3月までに続々と3人のレギュラー番組が終了したが、NHKと民放各局がジャニーズへの忖度で起用しないことを見越し、飯島氏は独自の人脈で大胆な戦略を打ち出す。しかも強力なバックを付け、大物を担ぎ出すことに成功する。

「飯島氏とインターネットテレビ局・AbemaTV(現ABEMA)を運営するサイバーエージェントの藤田晋社長とのパイプです。ジャニーズ退所から1カ月半ほどの17年11月2日から5日まで、3人が出演した72時間の生放送特番『72時間ホンネテレビ』を放送したのです。斬新すぎるアイデアで、芸能界の度肝を抜きました。その後、ABEMAで18年4月から3人の月1レギュラー番組『7.2 新しい別の窓』がスタートし、現在に至っています」(民放ディレクター)

 今や、続々とオリジナルコンテンツを世に送り出し、サッカーW杯の全試合生中継や世界最大のプロレス団体・WWEの無料中継など、潤沢な資金力を見せつけているABEMAだが、当時の芸能界は、その存在をさほど重視してはいなかった。しかし、飯島氏の戦略はここでも見事な成果をおさめる。

「同番組には爆笑問題、市川海老蔵(現・市川團十郎)、山田孝之、山﨑賢人、堺正章ら大物が続々と登場。さらに、HIKAKIN、はじめしゃちょーら人気ユーチューバーに弟子入りするなど面白い企画も満載でした。テーマ曲は3人が歌う『72』で、番組内で初生披露されました。3日間の総再生回数は、当時のAbemaTV史上最高の7400万回を記録したのです。さらに、元フジテレビ社員で日本財団の笹川陽平会長の息子がSMAPの冠番組『SMAP×SMAP』のプロデューサーだった縁で、同財団との強力なパートナーシップを締結しました。ABEMAの特番に先駆けて都内で開催された、同財団主催のアート展に香取の作品を出品。安倍晋三首相(当時)も来場し、香取がアテンド役を務めて案内しています。同財団と新しい地図が共同運営する『LOVE POCKET FUND(愛のポケット基金)』も設立しました。これまで様々な被災地に寄付活動を行っています」(同)

テレビ地上波も解禁へ

3人とも仕事の軸は俳優業で、映画・舞台などをメインにこなしていたが大きな風が吹く。19年7月、ジャニーズがテレビ局に対し、「新しい地図」の3人を出演させないよう圧力をかけた疑いがあるとして、公正取引委員会が独占禁止法違反の恐れがあったとしてジャニーズに注意処分を下したことをNHKが報じると、流れが変わることに。

 それまでは地上波のドラマ出演は厳しいとみられていたが、まず、NHKが19年下半期の朝ドラ「スカーレット」に稲垣を起用。香取は21年1月期のテレビ東京系ドラマ「アノニマス〜警視庁“指殺人”対策室〜」で5年ぶりの地上派連ドラ主演、草なぎは今年1月のフジテレビ系ドラマ「罠の戦争」で主演を務め、6年ぶりの民放キー局の連ドラ主演。そしてジャニーズ新体制発足会見と同じ10月2日からスタートした朝ドラ「ブギウギ」にも出演する。

「公取報道以後、特にNHKが3人を積極的に起用しました。すると徐々に他局も情報番組などで起用するようになったのです」(民放プロデューサー)

 こうした“流れ”だけに頼ることなく、飯島氏の手腕は多方面で発揮されていた。

「ジャニーズはじめ大手のタレント事務所や代理店は、オリンピックの仕事を取りに行きたがるものですが 、3人は国際パラリンピック委員会(IPC)特別親善大使を務めています。その関係で、ジャニーズに最も忖度していたテレ朝も、パラ五輪のPRのために21年8月の看板情報番組『大下容子ワイド!スクランブル』に、香取を出演させることになったのです」(テレビ朝日関係者)

 CMでも同様である。ジャニーズタレントをCMに起用していた各企業が続々と、契約解除や新規契約の見送りを発表している。わけても経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)は、性加害を認めたジャニーズに対して厳しい意見を述べた。だが、「新しい地図」の3人は、サントリーグループの企業CMに起用されている。さらに、ネットを最大限に活用しているとあって、フリマアプリ「メルカリ」、ネットショップ作成サービス「BASE」などのネット系、育毛剤「ミノキ 」、エリエールの大人用おむつ「アテント」など、ジャニーズタレントがあまり出演しそうにないCMに出ることで、存在感をキープすることに成功した。

新年にサプライズがある?

まさに順調そのものだが、気になる情報も。

 先ごろ3人は来年1月1日と2日、日本武道館でファンミーティング「NAKAMA to OSHOGATSU〜2024年もよろしく!」を開催することを発表したが、そのイベントでのサプライズがあるかもしれないというのだ。

「これまでも3人はファンミーティングを開催し、『新しい地図』としてリリースした楽曲を披露しています。でもSMAPの楽曲を聞けないのはファンにとっては物足りないものでした。今年、期間限定で再結成した男闘呼組も、ジャニーズを退所した少年隊の植草克秀と錦織一清も、それぞれのグループ楽曲歌唱がOKになっています。SMAPだけ退所者が歌えないとなったら、ジャニーズに対してさらなる批判が高まりそうで、歌唱を許可する太っ腹なところをみせればイメージ回復にもつながるでしょう」(音楽業界関係者)

 さらには、今年4月に香取と自身がMCを務める「まつもtoなかい」で共演した中居正広、そしてあの、木村拓哉の来場も期待されるという。実現すれば正月早々、大きなニュースになるだろう。

「ジャニーズに1人残り、SMAP解散後しばらく人気が低迷した木村ですが、その後、イメージも回復。仕事も順調かと思いきや、今度はジャニーズが存続の危機に。フジテレビ系で主演を務めた連ドラのSP版『教場』の制作が延期になるなど、このままジャニーズにいるメリットがない。ならば、独立準備をすすめるのが得策ではないでしょうか」(音楽業界関係者)

 解散からもうすぐ7年。ジャニーズと「新しい地図」を取り巻く環境が激変し、SMAPファンへの朗報がもたらされるかもしれない。

デイリー新潮編集部