「描き彫り」ですから、彫りながら描いているのですが、平面から立体へ投影させる時の情報が少なすぎるという課題があります。
その逆と違いそこに描かれているものが全てであり、それ以外の情報を得ようとすると調べる必要があります。
描かれている風景は画家の生きた時代ですからそれを反映したものであり、想像の域を超えていることがままあります。
時代もそうですが日本では馴染みのない物や景物を調べるという作業が加わったりします。
例えば馬車や馬の形状、御者の服装などもそうでした。
やはり、そこにリアリティを持たせようとすると押さえておきたいところです。何より出来上がりのクオリティが違います。
形状を把握したうえで彫ると、ここは省いてもフォルムに影響はないなどの柔軟な対応ができます。要は手抜きができるのです。
おそらく見る側は全体から受ける印象が大事で、細部まで見ないかもしれませんが…こだわっています。
仏様を彫り始めた頃のことですが、師匠が唇から削り取った1ミリにも満たない木屑を刃先に乗せ「これだけで変わる」と、魔法のように表情が一変したお顔を見せて言われたその感動が今も脳裏にあります。
そこはずっと大切にしていきたいと思っています。
また原画は油彩なので、そのテクスチャーに少しでも近づけるように工夫をしたりしています。
彫刻は絵筆で絵を描くのと違い柔軟性に欠けますし、引き算ですのでやり直しが難しかったりします。
ですからひたすら保険をかけての作業になり時間もかかるのですが、でも楽しんでいます。
大好きな画家の絵を観察し、いかに多くの情報をそこから読み取って作品に生かすことができるかは、実務レベルの作業とは別に小さな発見があったりもしてワクワクするのです。
