この本のメッセージは、成功している企業の多くが、一見して非常識(=バカな)だが、よくよく見ると合理的(=なるほど)な戦略を実行しているというものです。

 

一見「バカな」戦略なので競合他社もすぐには真似せず、ある程度時間が経って「なるほど」と思い参入を決める頃には既に先行者利益を得ており、結果的に「バカな」が参入障壁となっているというのが著者の理論です。

 

参入障壁と言えば、有名なマイケル・ポーターの5 Forcesがありますが、それとは異なる視点で非常に面白い参入障壁の分析をされています。

1988年に出版された本の復刻版なので、事例は古いものが多いですが、全然古臭く感じません。

 

「べき論より予測論を」、「戦略メッセージの一貫性」、「組織慣性との闘い」、「女がわからないで経営できるか」等今の時代にも通じるテーマや論点が多々あり、経営・戦略の原理原則は不変なものなんだなと感じます。

著者がまえがきで、ハーバード大学のクリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」は、じつは「バカな」と「なるほど」である、と書かれていますが、まさにその通りだと思います。

 

”「ばかな」と「なるほど」”という一見アカデミック的でないふさげたように見える表現だったので、軽く見られてしまったのかもしれませんが、表現を変えてアカデミックな論文で発表していれば、「イノベーションのジレンマ」にも負けない日本発の世界に影響を与える概念になっていた可能性もあったのではないかと思います。

尚、この本は1991年に絶版になっていましたが、「ストーリーとしての競争戦略」で有名な一橋大学大学院の楠木建教授はじめ多くの方からの高い評価を受けて、2014年に復刊されたものです。復刊してもらえて、名著を読むことができてラッキーです。

 

おわり