私がビジネススクールに通っていた際に、企業分析をする時に参考にしたのが有価証券報告書や決算説明資料でした。

 

経営指標の推移からビジネスモデル、事業概要、外部環境、抱える課題、財務諸表等が網羅されており、非常に有用な情報源です。

 

ビジネススクール卒業後、転職した今の会社でM&A担当になったのですが、その際も対象会社のことを分析するのに決算書は非常に有用でした。

 

ページ数が多いので、読書のように最初から最後まで読もうとすると途中で挫折すると思いますが、目的をもって該当する箇所だけ拾い読みしていけば非常に参考になる情報がたくさんあります。

 

そのため、この本のタイトルを見た時に”我が意を得たり”と思って買ってみたのですが、なかなか面白い内容でした。

 

 

著者は、元楽天の執行役員で、現在はシリコンバレーでスタートアップ企業を経営されている方です。

 

楽天の経営企画部時代、毎週月曜に実施される社員集会で、執行役員が「業界トピックス」を紹介する時間があり、そのネタ探しと台本作りを担当していたそうです。

 

その際に多忙な執行役員に「何が大事なポイントなのか?」が一読すればわかるような資料を提出する必要があり、競合他社の決算書やM&A情報をピックアップし、簡単な分析結果を添えて提出するやり方を考えつき、それを毎週やっているうちに決算書を読むことが習慣化したそうです。

 

 

例として取り上げている決算書は、ECビジネス/FinTech/SNS/携帯キャリア等、著者のバックグラウンドのIT関連企業ばかりなので、個人的には重厚長大なメーカーやファブレスメーカー、サービス業、オリエンタルランドのようなテーマパーク等の決算書もそれぞれ特徴があるので分析すると面白いのにと思いますが、万遍なく取り上げて薄っぺらい内容になるよりも、著者のバックグラウンドの強みを活かした分野に特化した方が良いとの判断で敢えてIT関連企業だけにしたのではないかと思います。

 

 

第7章に「企業買収(M&A)と決算」という章があるのですが、目からウロコだったのが会計基準によるのれんの処理の違いからくる社内決裁に関する話でした。

 

私の会社はIFRSを採用しているので、年1回減損テストを実施し、超過収益力が落ちているかどうかの減損テストを実施していますが、個人的には、のれんが永遠に残り続け毎年ビクビクしながら減損テストを実施するIFRSよりも、一定期間でのれんが償却され簿価が逓減していく日本会計基準の方がいいのではないかと思っていました。

 

しかし、本の中で、日本会計基準を採用している会社が、まだ赤字だがすさまじい成長スピードでM/Sを取っているスタートアップを買収したいと思っても、実務担当者が経営陣を説得するのは困難との説明がありました。

 

理由は、買収後にスタートアップの赤字分だけでなく、のれんの償却分の両方が担当事業のPLにヒットしてしまうからです。この視点は、自分の中になかったので読んでいてなるほどと思いました。

 

全ての物事には、良い面もあれば悪い面もあり、いろいろな立場・ケースを想像し考えないといかんなと改めて思った次第です。

 

 

決算書を読むことは株式投資にも絶対に役に立つので、決算書に抵抗がある方はぜひこの本を読んで決算書での情報収集にトライしてみて下さい。