実家に行ったときのお話、続編です。
ここんとこ、ゆうすけを預けるだけで、私は実家で泊まることはなかったのですが、今回久々にのんびり過ごすことにしました。
親もだいぶ歳をとってきたので、たまにはゆっくり会話をするというのも、大切にしていかないとなぁ、とか思います。
先日父が、同級生たちと伊勢まで旅行に行くと言っていたので、その話を聞いてみました。
「で、どうやったん?伊勢の旅行」
「はぁ、もうわしゃあ、あんな疲れた旅行は初めてじゃったけんの。」
旅の感想の第一声がそれだった父。
いったいなにがあったのか。
父が還暦のとき、生まれた広島の地で祝い式がありました。
そのときに小学校から親しくしていた同級生数人が関西に住んでいることがわかり、それ以来1年に1回くらいの割合でその人たちと旅行を楽しんでいます。
マコと呼ばれていた父。
「マコは学級長じゃったけん、旅行の世話は頼むのぅ」
そう言われたのがきっかけで、ずーっと幹事は父がしている。
もともと世話好きな父なので、それは別に苦にならないらしい。
そのマコが今回ほど疲れた旅行はなかったと。
それは、行きの集合場所から始まった。
一人だけ、約束の時間を過ぎてもあらわれない。
いったいどうしたのだろう・・・ちょっと心配になった。
その彼とは、しばらくのあいだ奥様の看病のため、恒例の旅行には何回も不参加になっていた人。
だから何年も会っていない。
その看病していた奥様が他界され、今年は久々にみんなと旅行にいけると一番喜んでいた人物らしい。
のち、15分の遅刻で、彼はタクシーに乗ってあらわれた。
その一番喜んでいた彼が、堂々と遅刻&豪勢にタクシーとは・・・。
学級長のマコは、少々腹立ちを覚えた。
まぁ、これから楽しい旅がはじまるのだ、ここは冷静に対応しよう。
「いやぁ、久しぶりじゃのう、タケ(彼の愛称)!タクシーで来るとは豪勢じゃのう!はようこっちこいや!」
しかし、タケはタクシーからおりて、こちらに向かって立ってるだけで、いっこうにこっちに近づいてこない。
「???なにをしとんじゃ、はようこんか!」
よく見ると、彼は立ってるだけではなかったのだ。
10cm刻みでちゃんと歩いているのだ。
杖をプルプルさせながら10㎝ずつしか進んでないのだから、こちらから見たら動いてないように見えたらしい。
こんなタケの現状を見て慌てた。
だってみんな、知らなかったのだ。
このタケが数年のあいだに、こんなに体が不自由になっていたことなんて。
こりゃあ・・・波乱の旅になりそうじゃのぉ。
マコはそう実感した。
とりあえず話はあとにして、今は電車に乗り込まないといけない。
いそいで駅に向かう途中の信号。
10㎝刻みで歩くタケが3分の1くらい歩いたところで、どうしても赤にかわってしまう。
みんながそれでまた、振り出しに戻らなければならなかった。
これでは電車の時刻に遅れてしまうので、とりあえず77歳のおじい達は、交代でタケの両脇をかつぎ、必死で歩いた。
なんとか駅に着き、あとは駅員さんに協力を頼み、車椅子での行動になったらしい。
やっとゆっくり話すことができた車中。
タケは自分のこの状態のことを話すと、きっと旅には参加させてもらえないような気がしたらしい。
マコもたぶん事前に聞けば辞退してもらうように言ったかもしれないだろうと思った。
でもそのとき、どうしても来たかった理由が本当はあったんじゃないだろうかとも思った。
きっとタケは、これが最後だと自分で思っているに違いない。
だからみんなに会いたかった。
「何を言っとんじゃい!わしらはハナタレ小僧のときからの付き合いじゃけん、なんも遠慮することはないんでぇっ!」
そういうと、タケは鼻水を出して泣いてしまったらしい。
その顔は小学生の頃とちっとも変わっていなかったとマコは言った。
少し涙をこらえながら、こんな父の話を聞きました。
旅行はほとんどタケの介護になってしまったらしいです。
彼にとっては良い思い出になったのなら、それはそれで良かったのではないでしょうか。