あたしの心の中で、何かが壊れた。壊れたのはほんの一片。その小さな穴から感情が溢れ出て、壁が崩れた。高波になって、やがて津波になって、あたしの心の底に襲って来た。
抑え切れなくなった感情が、過呼吸になってあらわれる。

苦しい…涙が出る。息、吸えるけど吐き出せへん。苦しい。声が出ぇへん。
和也が気付いて起きてきた。和也が気付くのはいつも遅い。こうなってから。かいがいしくするのも、構うのも、こうなってから…。
考えてたら余計にひどくなってきた。涙とよだれと鼻水で顔はぐちゃぐちゃ。声が出ない。でもあまりの苦しさで鳴咽が勝手にもれる。
目がチカチカする。頭がクラクラする。体、熱くて汗が出てる。でも手先は痺れるほど冷たい。苦しくて吐いた。何回も吐いた。
辛いつらい辛い。手が、足が、全身が震える。
痛いいたい痛い。お腹、痛い…。
そういえば、病院で過呼吸になると赤ちゃんに酸素がいかなくなるから気をつけてねって言われてたんやった。

赤ちゃんがおらんかったらこんな事にはならんかったかも…うちらにはまだまだ早かったんかな…
ってグルグル考えてた。

和也あたしの背中さすってるだけ…

放っといてほしかった。こうなるまてどうせ放置するんなら。
そう言ったら和也は「おれはさっきしんどかってん。今は大丈夫やから。」って言った。

それって体調によって変わるもんなん?そんなもんなん?うちら結婚する時「健やかなる時も病める時も相手を思いやり…」って誓ったんじゃなかったっけ……?
悲しかった。あたし、惨めやった…。


どれ位たったのか、だいぶたって過呼吸がおさまった。
和也はあたしの頭を撫でながら「寝ーや」って言ってくれてる。しんどくて、体中がまだピリピリしてて寝れるわけない。
しばらくして和也も寝た。すぐに寝息が聞こえてくる。
結局肝心な事は何一つ話してないし解決してない。きっと和也は、明日あたしが普段通りのフリをしてればこのまま、いつもと同じ様に見て見ぬフリをする。「何か良くわからんかったけど、賀奈子がいつも通りに戻ってるからもぅ大丈夫なんやろー」って。
でもそれはやっぱりフリであって、あたしの心の中には大きな不信感と刺がささったまんま。